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三菱商事の総合力が拓く「産業型都市開発」
日本の産業構造が大きな転換期を迎える中、三菱商事は、商社の総合力を活かし、これまでの不動産開発とは一線を画す「産業型都市開発」に挑んでいます。
「産業型都市開発」とは、バイオ・ライフサイエンスや半導体、AI(人工知能)・デジタルといった将来の成長産業の関連施設・企業・機関を核とした都市開発を行っていく戦略です。日本の成長を支えてきた重厚長大産業の大規模な産業跡地の魅力あるインフラに着目し、そのポテンシャルを最大限に引き出す形で、新たに成長産業の集積地に生まれ変わらせるといったアプローチも。
広範な事業ネットワークをもとに関連企業を連鎖的に誘致することに加え、地域の需要や課題解決に資する都市サービスの提供を通じて、付加価値の高いまちづくりを進めています。
商業施設などの収益不動産に加えて、データセンター、研究開発施設、高機能物流倉庫の開発運営などの豊富な実績と経験を活かし、地域に持続的な経済循環を生み出すまちづくりに取り組む三菱商事。旗振り役の曽我新吾氏(社会インフラグループ 都市開発本部 国内事業開発部 部長)に、こうした取り組みについて尋ねました。
■転換期の日本、なぜ「産業型都市開発」なのか
--大規模な「産業跡地」に着目して開発する狙いは。
日本の経済成長をさらに軌道に乗せていくためには既存インフラの再構築と新産業の創出が不可欠です。
国内外で産業構造の転換が進む中で、コンビナートなど重厚長大産業のエリアは新しい事業モデルへの転換が求められています。
こうしたエリアは、広大な土地がある上、既に発電設備や送電網などのインフラが整っていることが魅力で、これら既存インフラを活用して新たな産業集積地に変えていきたいと考えています。
特に将来的な成長を期待し、着目している分野は、バイオ・ライフサイエンスやAI・デジタル、データセンター、半導体などです。ただ単に建物を建設するだけでなく、それら成長産業に不可欠なエネルギーや計算力を提供するべく、エリア全体のインフラ再構築を行い、関連産業を周辺に集積し、付加価値の高い都市を作っていくのが当社の戦略です。
■総合力が生むまちづくりとは
--三菱商事の「総合力」は、新しい都市開発にどのように活かされていますか。
当社は不動産専業デベロッパーではありませんが、産業の集積の受け皿を作ることに加え、社内の総合力を結集して、エネルギー、交通基盤、飲食や住宅など働きやすい環境に資するインフラ、さらにそこを繋ぎ合わせるようなサービス群まで、一気通貫で都市を形成することができます。例えば、モビリティ分野なら自動運転、リテール分野なら無人コンビニといった多岐にわたるサービスをインフラの上に事業としてのせるところまで、実現することが可能です。それが三菱商事らしいまちづくりではないかと思います。
地域が求めているものや立地の特性を見定め、どのような産業がマッチするかを自治体と連携の上で検討し、核となる吸引力のある企業を呼びこみ、その周りに連携できる企業を集めていきます。都市が持続的にどのように成長していくのか、その大きな絵を描けないと、人や産業は集まってきません。それぞれの事業の中に深く入り込み、トレンドや将来性、ポテンシャルを理解した上で、どういう産業クラスターを作っていくとその土地に馴染むか。それを考えることができるのが、あらゆる産業にかかわり、専門的な知見や人材を社内に抱える総合商社ゆえの大きな強みです。
■バイオ・ライフサイエンスの先進産業クラスター
--湘南アイパークはどんな都市開発ですか。
当社の強みを活かした都市開発の象徴的な事例が神奈川県藤沢市の湘南アイパークです。もともとは武田薬品工業湘南研究所でしたが、2018年に外部に開放する形で、日本初の製薬企業発サイエンスパークとして誕生しました。当社は2023年から他パートナーの方と共に湘南アイパークの事業を承継し、施設運営に加え、コミュニティ形成、ベンチャー支援、地域との連携など、あらゆる事業の発展に注力してきました。湘南アイパークには、この7年間で約130の企業と2,600人を超える研究者が集まり、年間2,000件を超えるイノベーションが生まれています。今後、このイノベーションの波を地域に広げ、ヘルスイノベーションを核としたまちづくりに繋げていきたいと考えています。
さらに、この湘南アイパークの取り組みは神戸に広がっています。
神戸市は、ポートアイランドの南側をバイオ・ライフサイエンスの集積地にするべく1998年から「神戸医療産業都市」を掲げており、現在では企業・研究機関が350社以上、大きな病院が8つも集まっています。当社は3年ほど前からこの神戸医療産業都市に着目し、関与の仕方や連携の在り方を模索してきました。その結果、今年3月末にアイパークインスティチュート、三菱商事都市開発とも連携し、「アイパーク神戸」として研究ラボ施設の開発・進出に至りました。この施設は2027年11月に営業開始予定で、新しいイノベーションを創出する場を提供し、将来的には、この地域でのバイオ・ライフサイエンス産業を核とした規模感ある都市開発・都市運営に繋げていきたいと考えています。
現在、製薬・創薬、バイオ・ライフサイエンス分野において、基礎研究等で日本は非常に競争優位性がある一方、製品化するまでのプロセスへのお金の投じ方は欧米の方がアグレッシブです。「アイパーク」事業により、東の「湘南」と西の「神戸」が有機的に繋がって、欧米と並ぶ形になればというのが当社の期待です。
■次世代モデル:データセンターと産業跡地の親和性
--AI・デジタル、データセンターを核にしたまちづくりとは。
昨今、デジタル経済の根幹を支える新たな「社会インフラ」として、データセンターの需要が非常に拡大していますが、稼働させるためには広大な土地と十分な電力供給を必要とします。
そのような状況下、当社は高度経済成長期に建設され、今では役割を終えつつある重厚長大産業の跡地に着目しました。こうした産業跡地は、広大な土地を有し、かつエネルギーインフラがしっかりと整備されているため、データセンターと相性が良いのです。このような産業跡地活用のモデルケースとして、現在、大手鉄鋼メーカーであるJFE様とともに、同社の京浜扇島地区(川崎)の発電所隣接エリアを活用してデータセンターを整備する構想を検討しています。
データセンター自体が、一つの「社会インフラ」だと思っています。データセンターが近くにあることでの親和性が強いデジタル分野、AI分野などの企業群を集めることができます。このようにデータセンターを核とした新しい産業の誘致についてもJFE様と共に考えていきたいです。
■日本の未来を実装する三菱商事の役割
--バイオ・ライフサイエンスからデータセンターまで、多様な産業の事業知見を掛け合わせる戦略は、日本の社会課題解決にどう貢献しますか。
日本の産業構造の大きな転換期に際し、いかに優位性のあるインフラを整備、活用して新たな産業の集積地を作るかが問われています。それには産業自体を伸ばす仕組みが必要で、まさにイノベーションエコシステムの導入やベンチャー育成の支援制度といった枠組みも含めて作り上げる発想が求められています。
当社は不動産・都市開発のみならず、産業ごとに深い知見を持つ部門があります。エリアを俯瞰して相性の良い産業を考え、いかに都市形成に繋げていくか、不動産の知見だけでなく社内の各営業部門からヒントを得ながら未来の都市像を形作るよう心掛けています。 当社の各部門の事業知見を「掛け算」で組み合わせることで、規模感のある産業クラスターや新たな事業の創出に繋がっていくと思います。
こうした産業型都市開発を通じて日本の産業競争力、国力を高めることに貢献していきたいです。