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実質賃金
働く人が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づいた「物価変動の影響」を差し引いて算出した賃金の指数で、厚生労働省が月ごとに公表しています。
モノやサービスの値段が上がっても、それを上回って賃金(給料)が上がれば、欲しいものをたくさん買えて、余暇に旅行をしたり、外食でおいしいものを食べたりしやすくなります。多くの人がモノやサービスに使うお金(個人消費額)を増やせば景気がよくなり、買い手が増えればモノやサービスの値段は上がります。しかし、物価がさらに上がっても、賃金の上昇がそれを上回れば個人消費は冷え込まずにすみます。
モノやサービスの価値よりお金の価値の方が高くなってしまうデフレーション(デフレ)の状況が続くと、モノやサービスを買うよりお金を持ち続けた方が得になり、景気は悪くなります。日本経済はデフレの傾向が長く続いたため、政府や日本銀行は、デフレとは逆に物価と賃金がともに上昇する緩やかなインフレーション(インフレ)の状況を続けて経済を立て直そうとしています。それには賃金の伸びが物価上昇を上回ること、つまり、実質賃金がプラスになることが望ましいわけです。
連合によると、2023年の春闘ではベアと定昇を合わせた賃上げ率は平均3.58%と、前年より1.51ポイント上昇し、29年ぶりに3%を超えました。しかし、グラフを見てもわかる通り、実質賃金は23年になっても前の年よりマイナスとなったままです。大幅な賃上げにもかかわらず、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていないのです。日本銀行は物価の上昇は23年の半ばには収まってくるだろうとみていましたが、予想より長期間にわたって物価上昇が続いており、企業側の賃上げがまだ足りなかったということになります。
ただ、本来、実質賃金は働きに応じて決まり、効率的に仕事をして、多くの利益を会社にもたらした場合に上がるべきものです。こうした生産性の向上を伴わずに無理して賃金を上げ続けることはできず、賃上げを続けることができなければ、政府や日銀がめざす物価と賃上げの好循環は途絶えてしまいます。
(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)