卵巣がんについて、あまりよく知らないという方は多いのではないでしょうか。実は、卵巣がんは子宮頸がんより年間の診断数が多く、診断時にはすでに進行しているケースも少なくないことから、まずは卵巣がんについて理解を深めることが大切です。40~60代の女性4名が、卵巣がんについて婦人科医から学び、語り合いました。
実は診断数が
子宮頸がんより多い卵巣がん
卵巣がんは、乳がんや子宮頸がんと比べて耳にする機会が少ないかもしれませんが、どのようながんなのでしょうか?
藤原先生 今、卵巣がんは増加傾向にあり、2021年の卵巣がん年間診断数は1万3456人で、実は子宮頸がんの診断数を上回っています(※1)。年代を問わず発症しますが、特に多いのは40代~60代の方です。卵巣がんは、初期には自覚症状がほとんどなく、診断時にはすでに進行しているケースが少なくありません。また、半数以上の症例で再発が認められています。
こうした実態がある一方で、卵巣がんの認知がなかなか一般に広がらない理由の一つに、子宮頸がんのように早期発見につながる有効な検診やワクチンによる予防法などが確立していないことが挙げられます。親指ほどの大きさしかない卵巣は、子宮の左右にぶら下がっていて、下腹部の深いところにあります。そのため、子宮頸がんや子宮体がんのように直接、細胞や組織を採取して調べることができません。卵巣がんの可能性が強く疑われる場合には、外科的手術を行い、腫瘍組織を病理検査に出して初めて良性か悪性かが判断されます。
※1 国立がん研究センター・がん情報サービス・統計情報(卵巣)
婦人科受診という選択肢
卵巣がんには確立した検診がなく、初期症状も乏しいとのことですが、どうしたら発見することができるのでしょうか?
藤原先生 卵巣が腫れてくるとお腹の張りや腹痛を感じるようになることがあります。また、食欲不振、吐き気、便秘、頻尿といった症状があらわれることもあります。これらの症状は消化器系の問題であることが多いのですが、婦人科系の病気が隠れている可能性もあります。腹部に症状が見られる場合でも、婦人科受診が選択肢の一つであることを知っていただければと思います。
卵巣がんに確立した検診はありませんが、腫瘍の有無や状態を確認する「経腟超音波断層法検査」というエコー検査があります。あまり痛みを伴わず、短時間で済み、費用の負担も比較的少ない検査なので、なんらかの症状があって不安な場合は婦人科受診を検討してもよいかもしれません。また、内診が含まれる子宮頸がん検診がきっかけで卵巣腫瘍が発見される場合もあります。その後、さらに詳細な検査として、MRI検査、CT検査、腫瘍マーカー検査などを行います。
婦人科を受診する際、事前に用意しておくべきことはありますか?
藤原先生 現在の症状が、いつ頃から現れ、どのような経過で今に至っているのかを把握することは、非常に重要なポイントです。また問診で、最終月経の時期や妊娠・出産歴、初経や閉経の時期、持病の有無や手術歴などは聞かれると思いますので、受診前にこれらの情報をまとめておくとスムーズです。さらに、卵巣がんの一部は遺伝的要因によって発症していると考えられているため(※2)、家族の病歴なども記録しておくとよいと思います。
婦人科は、女性が一生を通して抱えるさまざまな症状や悩みを相談できる診療科です。妊娠・出産だけでなく、月経のトラブルや更年期症状、婦人科疾患など、年齢やライフステージに応じて婦人科との関わり方は変わっていきますが、常に女性の健康を支えるパートナーであると言えます。何か気になることがあれば、いつでも気軽に相談していただければと思っています。
※2 日本婦人科腫瘍学会編. 患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版. 金原出版. p233-236. 2023
自分のからだと
向き合う時間を大切に
女性の健康パートナーとして婦人科を受診することの大切さがわかりましたが、もし卵巣がんと診断されたら、どうすれば良いのでしょうか?
藤原先生 卵巣がんと診断された場合、さまざまな感情が湧き上がると思いますが、自分のペースで事実に向き合い、病気について正しく理解することが大切です。卵巣がんの治療法は、大きく手術と薬物療法(化学療法や維持療法)に分けられます。基本的には、手術で可能な限りがんを取り除いた後に化学療法を行い、再発を防ぐことを目的とした維持療法、または経過観察を行います。医師としっかりとコミュニケーションをとり、疾患について理解、納得して治療に向き合っていただくことが大切だと思います。また、医師だけでなく、看護師や薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種で医療チームを編成し、患者さんやご家族のさまざまな相談に対応できるサポート体制が整ってきていることも、ぜひ知っておいていただきたいです。
大切なのは、卵巣がんについて正しく知ること、そして、日頃からご自分の体と向き合い、ちょっとした異変を見逃さないことです。また、自己判断で更年期や年齢のせいにしたり「こんなことで婦人科に相談していいのかな」と迷ったりせず行動に移すことが、ご自身の未来を守り、周りの大切な人を守ることにもつながると考えています。
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