島耕作、農業用ドローンを視察する

コメ育む 先端の翼

 2013年にテコットの会長職に就いた私、島耕作は今後、企業の枠を超え財界人として国益のために尽くす決意を固めた。戦後、長く日本経済をリードしてきた「経済連」のメンバーとして、まず取り組んだのが農業分野だ。カロリーベースで38%という食料自給率の低さに危惧を抱くと同時に、成長分野として雇用の拡大に期待ができると感じたからだ。わが国でも、最新のICTを駆使した取り組みが農業分野で実践されている。さっそく、その現場に足を運んでみた。

 初秋のある1日、埼玉県吉川市の郊外の田んぼに、地元の農業関係者約50人が集った。農業用ドローンのデモンストレーションが行われるというのだ。ドローンの農業活用については、報道でも耳にする機会が増えてきた。そうした中、この日のデモは、ドローンによる「完全自動運転」が披露されるということで、より注目を集めたわけだ。

 静かなプロペラ音をたてながら、ゆっくりとドローンが浮上する。幅1.8メートル、奥行き1.4メートル、高さ0.7メートル。重さは、バッテリーを含めて17キロ、農薬を搭載すると24.8キロになる。高度は1メートル弱。「随分、低く飛ぶんだなぁ」と参加者から声があがる。

 「収穫間際の田んぼをお借りしているので、風圧で稲が倒れないよう、ふだんより高く飛ばしています。実際に農薬散布で使う際の高度は、作物の上空30~50センチです」

 こう説明するのは、農業用完全自動運転ドローンの開発元「ナイルワークス」(本社・東京都渋谷区)の柳下洋社長だ。開発を始めてもうじき4年になる。

 ドローンは、約25アールの田んぼを端から端に移動しながら往復していく。くまなく全部回り終わるまで約5分。仕事を終えたドローンは、寸分の違いもなく、最初に離陸した場所に着陸した。その正確さに、見学者からどよめきが起きる。

ボタン押すだけ

 柳下社長によると、このドローンを使う際に人が行うことは、スタートのボタンを押すだけ。事前に専用の測量装置を持って、田んぼを1周し、ナイルワークスのサーバーに位置データを送っておけば、あとはドローンが自分で最適の飛行経路を見出して、飛んでくれる。薬剤の種類ごとに、稲に吹き付ける部位が違うのだが、飛行の高さや散布幅を自ら設定し、田んぼ全体に均質に散布してくれる。搭載された小型コンピューターが、1秒間に200回という頻度で解析・計算し、随時、判断を下すことで、完全自動運転を実現している。

 さらに、農薬散布と同時に生育調査用カメラから得られる赤色光と近赤外の反射率から、稲の部位ごとの光合成の進み具合をチェックし、収穫量の予測やイモチ病などの病気の早期発見の実用化を目指しているという。

 本格販売は、来年から。想定販売価格は、数百万円になる見込み。

コストと品質

 新規開発に新たな付加価値は当然だが、そもそもなぜ完全自動運転なのか。柳下社長に質問をぶつけてみた。

 「安全性を第一に考えているからです。デモ飛行では、見学者の方の2,3メートル先をドローンが飛んでいましたが、人が操縦していると、30メートルは離れていないといけない。小さなスティックで操作しているとミスも起きやすい。コンピューターが自動で判断してくれるから、ミスなく飛行できる。それで完全自動運転なのです」

 ドローンの羽根はプロペラガードで保護されている。安全第一は、テコットのような製造業をはじめ、モノづくりに携わる者にとっての最優先事項である。まさに、「わが意を得たり」である。

 完全自動運転ドローンの導入で、コメの生産コストは4分の1にまで下げることを目指しており、品質の向上と均質化にも大きな効果が期待を寄せている。小麦、大豆といった、あらゆる農作物への転用も視野に入れているそうだ。

 テコットでも、家電分野で自動運転の技術を導入しており、最先端技術も保持している。それらのドローン分野への転用を急ぐよう、(テコットの)国分社長に耳打ちしておこう。

広告 企画・制作 YOMIURI BRAND STUDIO

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