文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大
11月14日は世界糖尿病デー
糖尿病のある人は筋肉量減少に注意 食事と運動でサルコペニアを予防

11月14日は「世界糖尿病デー」です。高齢で糖尿病の人は筋肉量が減る「サルコペニア」になりやすいといわれ、生活の質が低下する恐れがあります。ご家族にそのような方がいる場合、どのような点に気をつけて対応すればいいのか、症状や予防法について専門家の先生にうかがいました。

歳をとると血糖値が高い糖尿病になりやすい

 「2016年国民健康・栄養調査」によると、日本の糖尿病患者数は推計1,000万人の大台に達しました。糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気です。日本人の半数は糖尿病になりやすい体質があり、さらに食事や運動などの生活習慣がよくないと病気にかかりやすくなります。血糖値をコントロールするインスリンというホルモンは、高齢になると分泌が少なくなってしまいます。加齢とともに糖尿病になる人が増えてきますので、本人はもちろん、ご家族の方も注意する必要があります。

歳をとって筋肉量が減り筋力が低下するサルコペニア

 例えば高齢のご家族が糖尿病になってしまった場合、さまざまな病気のリスクが高まります。「サルコペニア」もそのひとつです。サルコは「筋肉」、ペニアは「減る」という意味で、加齢により筋肉量が減って、筋力が低下することを指します。

 筋肉量の減少は、簡単な「指輪っかテスト」でチェックできます。指で輪をつくりふくらはぎのいちばん太い部分を囲んだときに、隙間ができるとサルコペニアの可能性があります。筋肉量が減ると、脚力が低下して歩行速度が遅くなったり、信号が渡れなくなることがあります。

指輪っかテストでチェック

 全身の筋力が低下すると、最終的には寝たきりの状態につながりやすく、サルコペニアがあると認知症やがんなど、ほかの病気との合併症が増加することが知られています。

清野 裕 氏
清野 裕
公益社団法人日本糖尿病協会
理事長
関西電力病院 総長
京都大学医学部卒業。1996年より京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学教授。2001年より京都大学医学部附属病院副院長。2004年より関西電力病院院長、京都大学名誉教授。日本糖尿病協会理事長、日本病態栄養学会理事長、日本糖尿病対策推進会議副会長、アジア糖尿病学会理事長、前国際糖尿病連合・西太平洋地区(IDF-WPR)議長。
サルコペニアを防ぐために朝昼晩たんぱく質を摂る

 糖尿病予防や改善のために、食事などの生活習慣を気遣うよう心がけましょう。食事のカロリーが過剰な場合は腹八分目の健康食を目指しますが、筋肉量が減るサルコペニアの場合は良質なたんぱく質をしっかり摂る必要があります。

 たんぱく質はアミノ酸に分解されて、血液の流れに乗って筋肉の中に入り、筋たんぱくに合成されます。ここで大事なのは、筋肉の合成が行われるのは食後2時間以内の短い時間に限られることです。つまり、筋肉は食事のたびに合成されるので、サルコペニア予防には1日3回たんぱく質を含む食品を欠かさず食べることが重要です。

 筋肉になりやすいたんぱく質は、鶏むね肉・豚ロース肉・牛赤身肉などの肉類、鮭・マグロ・カツオ・タラ・アジなどの魚介類、牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、納豆・豆腐などの大豆製品、鶏卵などに含まれます。

 腎機能が極端に低い場合でなければ、たんぱく質をたくさん摂っても腎機能への悪影響はないとされています。むしろ魚介類や植物性のたんぱく質は腎機能に影響が少ないので、こまめに摂るようにアドバイスしましょう。

サルコぺニアが気になったら始めてみましょう!「生活習慣」2つのポイント
サルコぺニアを詳しく知りたい方はコチラへ
運動でインスリンの働きを高めアミノ酸を送り込み筋肉を増やす

 ところで、糖尿病の人はどうしてサルコペニアになりやすいのでしょうか。炭水化物を摂って血糖値が上がるとインスリンが分泌されますが、インスリンはアミノ酸を筋肉に送り込む働きもしています。糖尿病になるとインスリンの作用が低下するので、アミノ酸が筋肉に入りづらくなり、結果として筋肉量が減りやすいのです。また高血糖や糖尿病性神経障害もサルコペニアを加速します。

 糖尿病やサルコペニアの予防・改善のために、食事と並んで重要な役割を果たすのは運動です。1日30分のウォーキングを続けるだけで、インスリンの働きが高まって血糖値のコントロールが改善し、同時にアミノ酸の取り込みもよくなりますが、歩くだけでは長期的に筋肉量はあまり増えません。余力があれば水を入れたペットボトルを振るなどの、筋力トレーニングを行うように促しましょう。

 糖尿病の人はサルコペニアになりやすい状態にありますが、血糖コントロールのほかに、たんぱく質を朝昼晩にしっかり摂ること、ウォーキングや簡単な運動を続けることで、筋肉の減少を予防することができます。ご家族の中に、高齢で糖尿病の患者さんがいる場合は、ご家族から生活習慣を改善するように働きかけましょう。

糖尿病にならない7か条

特別寄稿

サルコペニア予防に関する読者へのメッセージ

糖尿病患者はサルコペニアのリスクが高く、進むとフレイルという身体活動が低下した状態になりやすいことが知られています。また、サルコペニアは加齢による骨粗鬆症・関節症と合わせて、移動機能の低下を引き起こす原因にもなります。サルコペニアを予防するためには、朝昼晩しっかりとたんぱく質を摂ること、ウォーキングなど有酸素運動をすることに加え、スクワットや軽いダンベルを使って直接筋肉を増やすレジスタンス運動も大切です。栄養に気をつけ、体を良く動かす活発な生活習慣で筋肉を増やすこと、すなわち「貯筋」こそ糖尿病患者の健康長寿の秘訣です。

門脇 孝 氏写真
門脇 孝
一般社団法人日本糖尿病学会 理事長
東京大学大学院
医学系研究科
糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授
帝京大学医学部附属溝口病院
病態栄養学講座 常勤客員教授

東京大学医学部卒業、東京大学医学部第三内科入局。米国国立衛生研究所(NIH)糖尿病部門客員研究員、東京大学医学部第三内科講師を経て、2003年より東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授。2018年より現職。2011年より2015年まで東京大学医学部附属病院病院長を兼務。日本内科学会理事長、日本糖尿病学会理事長、日本糖尿病対策推進会議副会長、日本肥満学会理事長、日本糖尿病協会理事。

世界糖尿病デーのブルーライトアップ

「世界糖尿病デー」は糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発運動を推進するために、日本をはじめ世界各国のモニュメントがブルーにライトアップされる日です。我国でも日本糖尿病学会、日本糖尿病協会が中心となって、各地で著明な建造物をブルーにライトアップして街頭での啓発活動を実施しています。

道の駅あきた港 ポートタワー・セリオン(2018年シンボルブルーライトアップ)
道の駅あきた港 ポートタワー・セリオン(2018年シンボルブルーライトアップ)
世界糖尿病デー公式ホームページはこちら
クイズに答えた方に抽選で「月刊糖尿病ライフさかえ」をプレゼント。
主催:世界糖尿病デー実行委員会(日本糖尿病学会、日本糖尿病協会)
後援:厚生労働省、外務省、日本医師会、日本歯科医師会、日本糖尿病対策推進会議、読売新聞社他
特別協賛:小野薬品工業株式会社、大正富山医薬品株式会社、田辺三菱製薬株式会社、武田薬品工業株式会社、MSD株式会社、大日本住友製薬株式会社、アクサ生命保険株式会社、第一三共株式会社、ノバルティス ファーマ株式会社、江崎グリコ株式会社、株式会社ローソン、山崎製パン株式会社(順不同/2018年10月現在)

広 告 企画・制作 読売新聞社広告局