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特別連載企画

We Are Lilly―― ─描く未来と新たな挑戦、次の150年へ─

日本イーライリリー株式会社 代表取締役社長 カーラ・アルカサル

カーラ・アルカサル

Karla Alcazar

日本イーライリリー株式会社
代表取締役社長

Vol.01

「すべては人々の健康のために」
──製薬企業が挑む、未来の社会づくり

 イーライリリー・アンド・カンパニー(以下、リリー)は、米国に本社を置くグローバル製薬企業です。2026年5月に創立150周年を迎えました。長い歴史の中で変わらずに受け継がれてきたもの。それは、「世界中の人々のより豊かな人生のために」という志と、「患者さんのために何ができるのか」という問いに真摯(しんし)に向き合う姿勢です。この節目は到達点ではなく、新たな出発点。「医療の未来にどう貢献できるのか」に向き合いながら、リリーは日本においても挑戦を重ね、次の未来に向けて歩みを続けています。
 第1回は、今年7月に就任した日本イーライリリーのカーラ・アルカサル社長に話を聞きました。

7月に社長就任。
日本の医療に、さらなる価値を

――創立150周年という節目の年に、日本法人の社長に就任しました。今のお気持ちと、日本の印象を教えてください。

 非常に誇らしく思うとともに、新たなフィールドで挑戦できることに期待が高まっています。来日してまず驚いたのは、日本の方々の謙虚さです。スーパーマーケットでも、電車の中でも、食事の席でも、誰もが自分を主張しすぎず、相手を思いやる。ところが、そのように控えめに振る舞う人々が、現状に決して満足することなく、常に高みを目指しています。相反しがちな「謙虚さと卓越性」が、日本ではごく自然に同居している。ここに、私は日本の底力を感じました。私自身も、ぜひこの姿勢に学びたいと思っています。

――ビジネスにおける日本の位置づけや重要度は、どう考えていますか。

 日本は、リリーにとって世界で最も重要な市場の一つです。神戸に日本法人を設立したのは1975年ですが、それ以前の国内企業との協働までさかのぼれば、その歩みは約100年に及びます。市場が大きいだけではありません。高度な医療制度と卓越した科学技術を備えた、世界の手本ともいうべき国です。この国で患者さんのニーズに応えることは、私たちの大きなやりがいです。(社長に就任して間もない)今はとにかく、社内の仲間、社外のパートナー、そして医療従事者と患者さんの声に、強い好奇心を持って耳を傾けることを大切にしています。

過去より「これから何ができるか」
最も信頼され、最も貢献できる企業へ

――150年という歴史の重さをどうとらえていますか。次の150年に向けてどう進んでいきたいですか。

 リリーは創業以来、「情熱と科学を融合させ、世界中の人々の生活をより豊かにする医薬品を創る」という使命のもと歩んできました。事実、150年もの歴史のなかで、多くの人生を支えてきたという自負があります。しかし本当に大事なのは、過去ではなく「これから何を成し遂げるか」です。
 私たちの次なる挑戦は、リリーを日本で最も信頼され、最も大きな価値を提供する製薬業界のリーディングカンパニーへと成長させることです。
 真のリーダーシップとは、売上順位やシェア率で決まるものではありません。患者さんにどれだけの価値を届けられるか。それこそが、私たちにとって最も重要な指標です。病気を治療するだけでなく、その先にある一人ひとりの健康で豊かな人生を支える。その思いを、「Health Above All(すべては人々の健康のために)」という言葉に込めています。健康があってこそ、その人らしい人生がある。リリーは、その実現を何よりも大切にしています。

インタビューに答えるカーラ・アルカサル

革新的な医薬品を安定的に届け、
必要な医療へ着実につなぐ

――「すべては人々の健康のために」という考えのもと、「革新的な医薬品の創出」「安定供給」「医療アクセスの改善」という三つを掲げています。特に重視しているのは、どの取り組みでしょうか。

 この三つは互いに深く関わり合っており、どれか一つでも欠ければ成り立ちません。どれほど革新的な薬でも、患者さんに届かなければ意味がない。届けるには安定供給という土台が不可欠です。どれか一つを優先するのではなく、三つすべてを同時に追求しています。

――それぞれの具体的な取り組みについて教えてください。

 革新的な医薬品を創り出すための研究開発は、国内の製薬企業のなかでもトップクラスの水準*で行っています。現在、50を超える開発中の新薬を有しており、治療が難しい疾患領域にも果敢に挑んでいます。供給面では、2022年以降、生産拠点である神戸・西神工場へ270億円の投資を決定し、安定供給を支える基盤強化を進めてきました。
 「医療アクセスの改善」は、誰もが必要な医療を適切なタイミングで受けられる環境づくりを実現していくということです。たとえば肥満症は、心血管疾患やダイアベティス(糖尿病)などさまざまな健康リスクにつながる慢性疾患であるにもかかわらず、「自己管理の問題」という偏見(スティグマ)が根強く、治療につながりにくい現状があります。私たちは、こうした社会の認識不足を解消し、正しい理解を広げるための啓発活動にも力を注いでいます。
 認知症の原因の一つであるアルツハイマー病も同様です。初期の「もの忘れ」を「年のせい」と見過ごさず、早期に気づき、必要な治療につなげる環境づくりにも取り組んでいます。病気を治す医療から、予防する医療へ。その変革をリードすることが、これからのリリーが提供していく価値だと考えています。

――健康寿命の延伸にも積極的に貢献していくということでしょうか。

 そうです。特に日本のような超高齢社会では、平均寿命と健康寿命の差が重要な社会課題となっています。この差を縮め、誰もが最後まで自分らしく生きられる社会にしていく。私たちの取り組みは、薬を届けるという枠を超えて、医療のあり方や社会の仕組みそのものを変えていく挑戦でもあります。

手ぶりを交えて語るカーラ・アルカサル

誠実さ・卓越性の追求・人の尊重が原動力。
健やかに自分らしく生きられる社会へ

――社会の仕組みを変えていくような大きな挑戦となると、社外との連携も欠かせないように思います。

 もちろん、一社で成し遂げられるようなことではありません。ですから私たちは、大学や研究機関、行政、医療従事者、患者団体など多くの人々と手を携え、患者さんを中心とした医療の仕組みを、どうすれば社会全体で育てていけるか日々問い続けています。
 リリーには長きにわたり受け継いできた価値観があります。正しいことを貫く「誠実さ」、最高水準を目指して困難に挑む「卓越性の追求」、そして関わるすべての「人の尊重」です。変化の激しい時代であっても、根底にあるのは「患者さんのために尽くす」という、ただ一点であり、私たちが挑戦を続ける上での原動力でもあります。

――最後に、多様な文化の中でリーダーシップを発揮するうえで、ご自身が大切にしていること、リリーの日本法人トップとして次世代に残したいことを。

 私はメキシコに生まれ、米国や中南米で20年にわたりリリーとともに歩んできました。その中で学んだのは、多様な仲間が集うチームこそ、より良い決断を生むということです。
 目標を掲げれば、誰もが達成でき、輝ける——私自身も子を持つ母親ですが、そのロールモデルとなり、次の世代へ道を示していけたら、これほど幸せなことはありません。こうした思いは、リリーの職場環境にとどまるものではありません。一人ひとりが、より長く健やかに、自分らしい人生を送ることができる社会へ。その実現に向けて、妥協のない実行力とスピードも持って、患者さん、そして社会により大きな価値を届けていきたいと考えています。

オフィスで微笑むカーラ・アルカサル