We Are Lilly―― ─描く未来と新たな挑戦、次の150年へ─
小嶋 毅彦
Takehiko Kojima
日本イーライリリー株式会社 執行役員
ダイアベティス・オベシティ・心・腎領域事業本部長
兼 営業本部長
「薬を届ける」その先へ。
――限界を超える挑戦、予防医療への転換
第2回は、日本イーライリリー株式会社で、ダイアベティス・オベシティ・心・腎領域事業本部長と営業本部長を務める小嶋毅彦執行役員に話を聞きました。
治療が大きく変わる現場で実感。
患者さんの人生を支える喜び
――2008年に日本イーライリリーに入社し、営業部門のMR(医薬情報担当者)も経験。医療現場に関わってきた中で、思い出深いエピソードはありますか。
入社以来、国内外でさまざまな役割を経験してきましたが、私の原点は何といっても、医師や患者さんに最も近い立場でダイアベティス(糖尿病)領域の現場に立ったことです。ちょうど新しいタイプの糖尿病治療薬が登場し、治療そのものが大きく変わろうとしていた時期でした。それまでの「血糖値をいかに抑えるか」を中心とした治療から、患者さんのQOL(生活の質)を大切にする治療へと変わる瞬間に立ち会うことができ、多くの喜びの声を耳にしました。自分たちの仕事が患者さんのより良い人生を支える一助になっていると実感できたことは、忘れがたい経験です。
――MRは医師と患者さんをつなぐ存在でもあると思います。どのような使命感を持って仕事をしていましたか。
製薬企業の営業というと、「医薬品を売る」のが仕事だと思われがちですが、私たちがいつも考えているのは、「患者さんが豊かな人生を送るためにはどうすればいいのか」ということです。そこに価値を提供することが私たちの役割であり、単に「薬を届ける」のではなく、「治療を選ぶための正しい情報と安心を届ける」ことを使命と心得て仕事をしてきました。
正しい情報で適切な治療へ。
疾患啓発の取り組み
――インターネットにさまざまな情報があふれる中、「正しい情報を届ける」重要性はますます高まっています。
そうですね。情報源が医療従事者に限られていた時代に比べると、何が正しいのかを見極めるのはかえって困難な状況になっていると思います。
問われているのは、信頼できる情報に、必要なタイミングで、適切にたどり着けるかどうかです。私たちが疾患啓発活動に取り組んでいるのも、そのためです。
たとえば肥満に該当する方は、国内に約2800万人いらっしゃると推計されます*。しかし、そのうち肥満に関連する健康障害を合併する「肥満症」については、疾患として定義されている一方、その診断や治療にあたってはこれまで治療選択肢が限られていたという現状があります。今なお「自己責任だ」と受け止められがちですが、肥満症はさまざまな病気の引き金にもなり得る、治療すべき疾患なのです。
私たちが運営する啓発サイトでは、正しい情報を発信するとともに、専門医を探せる仕組みや、通院が難しい方に向けたオンライン診療との連携も進めています。これまで治療にたどり着けなかった方が、最初の一歩を踏み出せるよう、取り組みを続けています。
社員の挑戦を後押し。
成功と失敗を重ねながら成長を期待
――幅広い領域の医薬品を、多くの患者さんに確実に速やかに届けるため、営業組織のあり方も随時見直していると聞きます。組織を動かす上で欠かせない人材育成において、大切にしていることは何でしょうか。
私が大切にしているのは、多様な経験を積むことができる環境を整えることです。人は多くの現場を踏み、成功も失敗も重ねながら学んでいきます。それが成長への一番の近道です。その過程で欠かせないのが、キャリアに対する二つの考え方とその両立です。
一つは、任された役割に責任を持ち、期待を超える成果を出す「ビジネスオーナーシップ」。もう一つは、自分が何をしているときに充実感を得られるのかを知り、進む道を自分で描く「キャリアオーナーシップ」です。
リリーには多様な人材が集まっていて、目指す道筋も人それぞれです。一つの領域を究めて専門性を高める道もあれば、複数の領域や部門を経験する道もあります。
私自身は、18年間で12の役割を経験してきました。糖尿病領域を長く歩んだ後に、未経験の抗がん剤事業を任されたこともあります。最初は戸惑いましたが、そうして挑戦の場を与えられてきたことが、今の自分をつくっています。今度は私が社員の可能性を信じ、一歩先の挑戦を後押ししていきたいと思っています。経験のない領域であっても、恐れず挑んでほしい。その積み重ねが、個人と会社の成長の原動力になると考えています。
――もうひとつ、リリーが大切にしている企業文化について教えてください。
部門や領域の垣根を越えて対等に議論し、多様な視点を持つ人たちが対等に議論し、互いに高め合う。それがリリーの文化です。単に仲良く助け合うということではなく、より良い答えを導くために、ときにぶつかり合うこともあります。それでも、私たちが常により所としているのは、「世界中の人々のより豊かな人生のため、革新的医薬品に思いやりを込めて」というリリーの使命です。
これは国内外を問わず全社員に深く共有されていて、この揺るがない軸があるからこそ、私たちは安心して意見をぶつけ合っていけるのです。
「シックケア」から「ヘルスケア」へ。
次の150年に向け、新たに挑む
――日本イーライリリーは近年、大きく成長を続けています。数字の成果を常に求められる営業出身の立場から、売上と社会的使命をどう両立させているのでしょうか。
当社は昨年度、3年連続で二桁の伸び率で成長し、過去最高の売上を記録しました。ただ、売上はあくまで結果であり、目的ではありません。より多くの患者さんに価値ある医薬品をお届けし、その人生をより豊かにする。その根本を見失ってはいけないと考えています。
私たちが目指していくことは、病気になってから治療する「シックケア」から、より早く手を打ち、予防にもつなげる「ヘルスケア」への転換です。薬を届けるだけでなく、人々の健康そのものを支えていく。私たちは、2030年までに製薬業界のリーディングカンパニーになることを掲げていますが、これは売上の順位を指すのではなく、一人ひとりが健康でいられる時間を少しでも長くし、より豊かな人生を送ることができる社会づくりを、先頭に立って進めていく覚悟です。
――そのような大きな転換を進めていくうえで、何が大切だとお考えですか。
新しい挑戦を、前例のないスピードで進めるには、ポジティブな姿勢で臨むことが欠かせません。「できない」と口にした瞬間に、可能性は閉ざされてしまいます。だからこそ私たちは、「限界を超えていこう」という考え方を大切にしています。正直、私自身もここまで踏み込んでいいのかとためらうことがあります。それでも、まず踏み出してみなければ、新しい景色を見ることはできません。
150年という歴史は、「これから何をするか」でこそ意味を持ちます。次の150年へ、部門や領域の垣根を越えながら、志を同じくする仲間とともに、今後も患者さんのために新たな価値を創り出していきます。
2026年5月、イーライリリー・アンド・カンパニーは
創立150周年を迎えました。
創立150周年を迎えました。