早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

YOMIURI ONLINE

ホーム > キャンパスナウ > 2013 新緑号 キャリアの羅針盤

キャンパスナウ

▼2013 新緑号

キャリアの羅針盤 学生と進路選択

水上 貴央(みずかみ・たかひさ)弁護士 略歴はこちらから

人生にマニュアルはない
覚悟をもって頑張るだけ

水上 貴央/弁護士

採用担当者に就職活動の最新事情や、普段どのような意識で採用活動に携わっているかをお聞きする「キャリアの羅針盤」。今回は、社会人を経て法科大学院(ロースクール)に入学し、現在は弁護士、コンサルタントとして活躍されている水上さんに、弁護士の仕事内容や弁護士に必要な資質、学生時代だからこそできることなどについてお話を伺いました。

「社会的劇薬」を扱う面白さと責任

 弁護士になるまでの道のりや目的は一つではありません。私の場合、大学卒業後は、企業に経営ノウハウを提供する仕事をしたいと思い、コンサルタントの仕事を選びましたが、新しいビジネスを提案する際に法律が壁になることが多く、弁護士と対等に話ができるようになりたいと思い、法科大学院に行くことを決めました。早稲田大学の法科大学院を選んだのは、第一線の実務家の先生が揃っているうえ、多様な人材を受け入れようとする姿勢に共感したからです。

 弁護士に必要な資質は、知識や論理的思考力はもちろん、最も重要なのはヒューマンスキルだと思います。依頼者の話に耳を傾け、依頼者自身も整理できていない真の問題点を引き出す必要がありますし、企業間の訴訟であっても、ビジネスライクでは割り切れない感情的な要素を理解しなければなりません。「法律は社会的劇薬」と言われるように、法の適用は一人の人間の人生を変えてしまうことがあり、高い倫理観が求められます。早稲田の法科大学院では法曹倫理の授業を重視していますが、実務に就いてからその意味がよく分かるようになりました。

弁護士の仕事は訴訟だけではない

 現在の私の仕事内容は、訴訟関連が3割、青山学院大学法務研究科の助教、早稲田大学大学院法務研究科でのアカデミックコーディネーターなどの教育関係が4割で、残りの3割が再生可能エネルギー事業を支援するための法律実務です。持続的なエネルギー構造への変革は、地域主導型の再生エネルギー事業の拡大が鍵になるため、政策提言や個別案件の法的助言を行い、地域の人たちを支援しています。これまでに、飯田市の「再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくりに関する条例」の制定に携わりました。こうした仕事でも、弁護士は活躍することができます。政治家や官僚でなくても、立法等によって社会を良くするために働きかけることができます。

 弁護士の進路を考えると、5年前なら弁護士事務所に就職することは難しくありませんでしたが、今は訴訟関連の仕事をする弁護士の数が飽和状態です。従来の訴訟関連の市場で厳しい競争を勝ち抜くか、弁護士資格を生かせる新しい市場で仕事をするか、2つの選択肢を考えていく必要があるでしょう。

多様な法曹の活躍で 法律を社会の共有財に

 現在、私が参画している早稲田リーガルコモンズ法律事務所は、法律に対する知見は社会の共有材であるという共通のポリシーのもと、経験5年くらいの弁護士が集まって開設した弁護士事務所です。早稲田大学の法科大学院と連携し、法科大学院生と社会を結ぶプラットフォームとしての役割も担っており、彼らにエクスターンシップやケース・プログラムなど実務体験の場を提供します。また、社会人経験も志もある弁護士が年齢を理由に就職が難しいという現状などに対応するため、育成弁護士として受け入れる制度も設けています。実務家が実務家を育てることで、より多くの優れた法曹を輩出し、私たちのポリシーが実現できることを願っています。

特権階級の学生時代に 会いたい人に会いにいく

 法曹を目指す目指さないにかかわらず、学生の皆さんに助言できることは「考えているだけではだめ」ということ。ぐずぐず考える暇があったら行動し、うまくいかなければまた考えればいい。行動を伴わない考えは妄想に過ぎません。学生時代は特権階級です。早大生というだけで、大抵の人は会ってくれるでしょう。法曹の道に関心があるなら、判例時報を見て一番良いと思った判決の代理人を務めている弁護士にアポイントをとって話を聞きにいってもいいでしょう。

 学生時代は、覚悟を持って何かに取り組めば、無駄なことは何もないと思います。最近、「何をすべきか」という問いにマニュアル的な正解をほしがる人をよく見かけますが、世の中、型通りにやったからといって成功するほど甘くありません。自分が決めた人生を幸せにできるよう、覚悟を決めて頑張るしかないと思います。

水上 貴央(みずかみ・たかひさ)/弁護士

1999年、一橋大学商学部経営学科卒業。同年株式会社三和総合研究所に入社。2007年、早稲田大学大学院法務研究科修了。法務博士。2008年弁護士登録。国の事業仕分け民間評価者、地方自治体仕分けの仕分け人、文部科学省大学の情報公開に関するワーキング委員、消費者委員会東京電力値上げ問題WG外部有識者などを歴任。現在、UR都市機構契約監視委員、飯田市地域エネルギービジネスコーディネート組織タスクフォース委員、青山学院法務研究科助教、NPO法人再エネ事業を支援する法律実務の会理事長を務める。2013年より早稲田リーガルコモンズ法律事務所に参画。

キャリアセンターより
どんどん挑戦し結果を次へ生かす

 大学生の特権は時間があること、失敗が許されること。どんどん行動して経験を積み、成否に関わらず結果を次のステップにつなげることが大切です。多様な人材と成長の場が溢れる早稲田。その資産を生かして、自分らしい学生生活を続けてほしいと思います。