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▼錦秋号

第二世紀へのメッセージ

白井総長から贈られた早稲田カラーのネクタイを締めて

アブドゥルアジーズ トルキスターニ閣下/駐日サウジアラビア王国特命全権大使  略歴はこちらから

早稲田だからできる、グローバル化がある

アブドゥルアジーズ トルキスターニ閣下/駐日サウジアラビア王国特命全権大使

 日本に8年間留学した経験を生かし、サウジアラビア王国の駐日大使に就任したトルキスターニ閣下。早稲田大学在学中の思い出、海外から見た日本の大学の印象、本学への期待などについてお話を伺いました。

授業中の礼拝を許してくれた
理解ある先生たち

――日本へ留学を決めたきっかけを教えてください。

 1971年、サウジアラビア国王が初めて日本を訪れたときにテレビに映っていた通訳を見てからです。母に「あの人みたいになりたい」と話したら、「それなら、サウジアラビアと日本をつなぐ架け橋になるために、大使になりなさい」と言われました。それから38年、今年、母との約束を果たすことができたのです。

 当時の文部省の奨学生第1号に選んでいただいたことは、今でもとても感謝しています。早稲田大学への入学も、当時、サウジアラビアにいた日本総領事館のスタッフの方に薦められて決めました。しかし、日本語もまだできず、実際来てみるとカルチャーショックばかりでしたね。

――どんなことに驚いたのですか。

 まず、文部省の方に駒場の寮に連れて行っていただき、初めて自分の部屋に入ったときに本当に驚きました。ドアを開けてエントランスだと思ったら、それが部屋だったのです。普通、サウジアラビアの家はもっと広いので、信じられませんでした。また、お腹が空いたので、外のコンビニエンスストアに行って白いチーズだと思って買ってきたら、何だか変わった味がする--そう、豆腐だったのです。毎日が驚くことばかりでしたね。

――日本人の印象はいかがでしたか。

 とても優しく、心が温かい民族だと思いました。日本に初めて来てから29年ですが、嫌な日本人にほとんど会ったことがありません。私は日本人が大好きです。

 先生たちも私の国の文化を理解しようと努力してくれました。イスラム教徒の私は毎日決まった時刻に礼拝をするのですが、授業中でもその5分だけは抜けることを許してくれたのです。これには心から感謝しました。そして、心から日本人を尊敬しました。

――本学ではどのようなことを学びましたか。

 主な研究テーマは、サウジアラビアの広告倫理です。広告研究で著名な小林太三郎先生や、講師でいらしていた東京経済大学の八巻俊雄先生のもとで学びました。サウジアラビアには海外から、広告とともにさまざまな商品が入ってきます。生活が便利になったり、夢を与えてくれたりするなど、良い影響もありますが、一方で今まで守り続けてきた文化が失われてしまう面もあります。そこで、広告によって人々の考え方、生活、文化はどのように変わるのかについて分析し、どのような広告倫理が必要なのかを研究しました。テレビに放送倫理があるように、広告にも倫理が必要なのです。

――前職は、キング・サウード大学経営管理学部学部長だとお聞きしました。海外から見て、本学はどのような印象ですか。

 人材をとても大切にしているという印象を受けますね。日本は物質的資源に恵まれていないかわりに、人を大事にする習慣があります。サウジアラビアのキング・サウード大学、キング・ファハド石油鉱物資源大学との協定締結をはじめとしたさまざまな国際的取り組みを行い、留学生を積極的に取り入れる姿勢は素晴らしい。私たちサウジアラビアの大学でも、日本を見習っていきたいです。

違った角度からも私たちを知ってほしい

――今後、大使としてサウジアラビアと日本の交流をどのように深めていきたいですか。

 教育面では、サウジアラビアで日本について学べる大学を作りたいと思っています。これは以前から抱いていた、私の夢でもあります。もうすでに準備は進めているので、これは必ず成し遂げたいです。

 スポーツに関しては、サウジアラビアでも日本でもメジャーになったサッカーを通じて交流できればと思います。昔は日本人に「サウジアラビアと聞いて、何を連想しますか?」と聞くと、「石油」「砂漠」「ラクダ」といった答えしか返ってきませんでした。しかし、今の学生に聞くと「サッカー」という答えが多いのです。これはとてもうれしいこと。今後、サッカーで両国をつなぐ機会を作れたらと思います。

 メディア面では、お互いに情報を知る努力が足りないので、もっと呼びかけていきたいと思います。

お子さんの人間的成長を見届けてほしい

――本学が世界で選ばれる大学になるために必要なことは何でしょうか。

 今や大学のグローバル化は当然のこと。他の大学と差をつけるには、海外の大学のシステムをもっと知ることが必要だと思います。日本の大学は何を決めるにしても、とても時間がかかります。サウジアラビアはまずは書類に判を押し、取り組みながら軌道修正をすることが多いのです。もちろん文化の違いがあるので、私たちのやり方に合わせてほしいというわけではなく、海外にはそういった国がたくさんあることを知っておいていただきたいのです。

 それは「早稲田だからできるグローバル化がある」と思っているからです。早稲田大学を尊敬しているからこそ、期待も大きいのです。

――最後に、これを読まれる学生の親御さんにもメッセージをお願いします。

 「うちの子は早稲田に入ったからこれで安心」と考えるのではなく、社会に送り出すまで責任を持って育ててほしいと思います。ご両親も忙しいと思いますが、息子さん、娘さんの人間的成長を見届けてあげてください。立派になった学生が社会に羽ばたけば、日本の社会はもっと良くなるでしょう。そこのつながりはとても大きいと思います。

アブドゥルアジーズ トルキスターニ閣下/駐日サウジアラビア王国特命全権大使

1958年生まれ。サウジアラビア王国タイフ出身。キング・アブドゥルアジーズ大学を卒業後、1980年に日本政府奨学金で来日。本学大学院商学研究科で広告を学び、1984年に修士号を取得。その後、1988年まで成城大学博士課程でマーケティングを研究し、1999年にカイロ大学で博士号取得。帰国後は、大学講師をはじめ、出版社や日本車販売会社などにも勤務。前職はキング・サウード大学経営管理学部学部長。今年6月に、駐日サウジアラビア大使に就任。