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キャンパスナウ

▼5月号

プロ・ローグ
縣 公一郎

縣 公一郎(あがた・こういちろう) 略歴はこちらから

行政において、理論と実践の接合を図りたい

縣 公一郎/早稲田大学政治経済学術院教授

 私が研究を志したきっかけは、高校時代に出会った『タテ社会の人間関係』という一冊の本でした。著者の中根千枝先生が繰り広げる日本人論が興味深く、その後、放送大学の実験放送で先生の明快な講義を聞いて、すっかり社会科学の魅力にはまってしまいました。私の専門は行政学ですが、行政も組織をミクロに見るとタテ社会です。ですから、中根先生は私の人生に大きな影響を与えた恩師だと言わせて頂きたいと思います。

縣先生の人生を決めた1冊「タテ社会の人間関係」

 研究の基底にあるのは、一つが「ドイツの連邦主義」です。ドイツの行政のあり方から日本が学ぶべきことを研究しています。それを基に、日独学術交流の推進に注力していきたいと考えています。もう一つが「行政の発展系としての公共経営」で、社会問題は、政府だけでなく、民間(市場)やNPO /NGOなどが一体となって解決していくものだという概念です。これらの研究を進める過程で、大学の枠を越え、中央府省での仕事も増えてきました。現在、総務省、外務省の審議会メンバーを務めており、今年4月からは文部科学省の研究振興局科学官の任務を帯び、政策評価、情報通信、大学政策などの分野において、研究者の立場から協力しています。一例として、かつて大学設置審査に関わりましたが、大学人でありながら、逆に外からの目線で大学のあり方を検討、助言できることが非常に面白いのです。これらの立場から得た経験は、私たちの大学経営の参考にできるだけでなく、自身の研究や教育にフィードバックすることができます。理論を実践に生かすだけでなく、実践を理論に生かすこともできる立場を与えられたことに感謝し、研究に勤しむ今日このごろです。私をこうした学問の世界に導いて下さった中根先生とは、直接お話する機会を得られないままだったのですが、なんと1年ほど前に偶然、街でお見かけし、思い切って声を掛けて感謝の気持ちを述べることができました。ご著書に出会ってから35年目の出来事でした。

縣ゼミナールでは、他大学と合同の遠征夏合宿や共同研究を通して友とともに学ぶことを楽しみ、最終的にゼミ論に取り組みます。ゼミ論は製本され学生読書室に保管されるほか、データを1枚のCDにまとめて全員に配布されます。

 最近の学生たちは真面目で、カリキュラムをしっかりこなして勉強に励んでいます。インターネットなどのツールを使いこなした情報収集力、まとめあげる能力は、私たちの時代にはなかったものですね。私が学生たちに常日頃から言っているのは、「好きなことでないと、長続きしない」ということ。ですから、私のゼミナールでは、共同研究もゼミ論文も学生が好きなテーマを決め、自分たちの考え方で研究に励んでいます。

 好きなことといえば、合唱を始めて今年で40年目になりました。現在も、最も好きな作曲家であるバッハの曲を、時間を見つけて歌っています。実はドイツ語を勉強し始めたのも、ドイツがバッハの故郷であり、クラシック音楽の中心地だというのが大きな理由。バッハの旋律は、歌えば楽しく、聴けば別世界へ誘なってくれる、他には代え難い魅力があるのです。ちなみに、研究室のウエブサイトのBGMはゴルトベルク変奏曲です。音楽は日常を忘れさせてくれる最高の気分転換。音楽がなければ、人生の楽しみは半減してしまうでしょう。

縣 公一郎(あがた・こういちろう)/早稲田大学政治経済学術院教授

1979年政治経済学部卒業。1982年より同学部に助手から勤務。1992年Dr.rer.publ(シュパイアー行政大学院:行政学博士)取得。1997年から教授。専攻は、行政学。