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山本 浩幾/演劇博物館デジタル・アーカイブ室所属 略歴はこちらから

早稲田大学文化資源情報ポータルの公開

山本 浩幾/演劇博物館デジタル・アーカイブ室所属

 早稲田大学では2007年度より、坪内博士記念演劇博物館、會津八一記念博物館、大学史資料センターの3機関が文化推進部のもとに集まり、共同で事業を行っている。そのひとつが今年3月に一般公開した「早稲田大学文化資源情報ポータル」である。これは、3機関がそれぞれ所蔵している特徴的なコレクションを、統一されたインターフェイスから検索できるものである。データベースの種類は、本文執筆時点で、演劇博物館が10、會津八一記念博物館が8、大学史資料センターが1、計19となっており、各機関独自の情報を登録している。例を挙げると、演劇博物館では総合データベース「デジタル・アーカイブ・コレクション」から、「浮世絵閲覧システム」、「九州地区劇団検閲台本データベース」、「現代演劇上演記録データベース」など、會津八一記念博物館では、「會津コレクション」(明器データベース)、「近代美術データベース」、「東洋美術作品総合データベース」(富岡コレクション)など、大学史資料センターは「早稲田大学写真データベース」を公開している。

早稲田の文化資源を通覧する

早稲田大学文化資源情報ポータル トップページ

 文化資源情報ポータルは、「早稲田大学文化資源共通データベース」(以下「共通データベース」)構想の一環として構築された。「共通データベース」は、膨大な文化資産を開発や活用可能な資源ととらえ、資源を利用した新たな価値の創発を促すためのツールとして構想したものである。

 例えば、演劇博物館では50万件を越える資料を所蔵している。大学内の他の文化関連機関を含めれば膨大な数となるだろう。この巨大な知の蓄積を活用しようと試みるとき、求める資料がどの機関に所蔵されているのかということは、本質的な問題ではない。さらに未だ文化的、学術的価値を見出されていない資料も、多く存在するだろう。個別の価値だけでなく、複数の資料に関連性を見出すことによって新たな価値が生じることも考えられる。このような背景のもとに「共通データベース」を計画した。

早稲田大学文化資源情報ポータルの検索結果一覧ぺージ

 この計画の目的は、学内の文化資源情報を効率的、機動的に活用するため、これまで文化財所蔵機関が個別の方針で行っていた文化財等の情報化に関して、共通システム=「文化資源共通データベース」を整備することにより、標準的な方法と形式で登録・公開する環境を整えることである。「共通データベース」は、各機関が目標とする所蔵品情報化を実現するための手段のひとつとし、並行して独自の情報化を行うことも可能である。また、登録・公開する資料情報については、推奨はするが、最終的な選定は各機関が判断することとした。

 最終的には大学内の文化資源情報を一元的に通覧するシステムを企図しているが、計画を段階的に実現していくため、3つのフェーズに分け、第1フェーズは「文化資源情報ポータル」の構築、第2フェーズは「公開プラットフォーム」の構築、第3フェーズは「所蔵品情報管理共通システム」の構築、としている。プロジェクト全体の所要期間は3~5ヶ年間と見積もっている。

現状と今後の展開

演劇博物館所蔵浮世絵閲覧システム詳細情報ページ

 まず、今回公開した第1フェーズの「文化資源情報ポータル」は、学内の文化財所蔵機関それぞれが現在Web上で公開している文化資源情報を、横断的に検索するポータルページである。これまで各機関で資料情報化が行われていなかったわけではなく、すでに各機関のWebサイトを通じ、多様な情報発信が行われている。このフェーズでは各機関ですでに蓄積・公開されている情報資源を利用することを前提に、ひとつの窓口=ポータルを出発点として、利用者が目指す資料情報へたどり着けるような統合されたインターフェイスを用意した。この窓口にアクセスすることによって、機関ごと、データベースごとの検索方法の差異を気にせずに利用することができる。

 今後の展開として、まず、第2フェーズでは、各機関が文化資源情報をWeb上で機動的に公開するための、共通プラットフォーム構築を計画している。この段階では、資料情報概念モデルの検討と、メタデータ標準の導入が必要となるであろう。現時点でひとつの選択肢として、東京国立博物館のプロジェクトチームが提唱する「ミュージアム資料情報構造化モデル」とその実装がある。

 最終段階の第3フェーズでは「所蔵品情報管理共通システム」として、所蔵品管理と文化資源情報の発信を、統合的に扱う情報基盤の構築を計画している。第2フェーズまでは文化資源の静的な属性情報を扱うが、この段階では展示、出品、補修などの履歴情報を含む所蔵品情報を管理することを想定しており、第2フェーズまでに蓄積公開してきた文化資源情報と表裏一体の関係となる仕組みを考えている。不定型かつ多項目の情報を格納するためには、これまでのデータベース構築とは異なるあらたな発想が必要となるだろう。

演劇博物館浮世絵閲覧システム検索結果一覧ページ

 以上の取り組みによってもたらされる効果としては、まず、共通の情報基盤を整えることで、大学内にある隠れた文化資源を平明な方法で見つけやすくなることが期待できる。また、標準的なデータ形式を採用することにより、学内だけでなく、学外とのデータ連携を進めることが可能となるだろう。また、コストや収益面で見れば、個別のシステム開発や、管理が不要となり、大学全体として手間や経費が削減できる。将来的には、学内文化財活用の一環として、コンテンツ提供による収益も期待できるだろう。

情報の連携へ

 本計画はまだ端緒についたばかりである。最終目標まで実現可能か、未知数の部分も多い。特に博物館のメタデータ共通化については、複数の定義がミュージアムドキュメンテーションの分野で議論されている状況にある。さらに、情報通信技術に関わる側面は、数ヶ月で様相が一変してしまうため、その動向に注目しつつ柔軟に対応していく必要がある。また、学内の学術情報の収集管理を主管する図書館とも、随時連携して計画を進める必要があるだろう。

 学術情報の発信は近年急速に進み、いったんネットワーク上に解放された情報は蓄積から連携へとステージを移し始めている。「文化資源情報ポータル」が早稲田大学の文化資源情報を発信するとともに、「早稲田大学文化資源共通データベース」として、学内外との情報の連携へと展開してくことを期待している。

 データベースの使い勝手や機能について、作っている我々ではなかなか気づきにくいこともある。実際に使う方々からのご意見や要望などをいただければ幸いである。

※本稿は、『演劇博物館』97号(演劇博物館発行2007年10月)掲載の拙稿をもとに加筆・修正したものである。

早稲田大学文化資源情報ポータル

http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/cr/portal/

演劇博物館デジタル・アーカイブ・コレクション

http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/

山本 浩幾(やまもと・ひろき)/演劇博物館デジタル・アーカイブ室所属

1970年、静岡県生まれ。演劇博物館デジタル・アーカイブ室所属。データベースの構築・管理を担当。専門はメディア情報学、文化経営学。