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中原 和樹(なかはら・かずき) 略歴はこちらから

「早稲田学生文化・芸術祭2012」に携わって

中原 和樹/舞台監督・演出家

 早稲田学生なら誰もが知っており、誰もがその前を通り、早稲田の最も有名なシンボルの一つとも言える大隈記念講堂で、先月6月14−17日に、「早稲田学生文化・芸術祭2012」が開催されました。
 これは早稲田大学の文化サークルが24企画・45団体参加し、4日間で発表・公演を行なっていくという、文字通り文化のお祭りのようなイベントで、今年で開催3回目を数えるものです。参加団体は年々増えており、チア、お笑い、タップ、よさこい、和太鼓、音楽祭、ジャグリング、日本舞踊、フラメンコ、オーケストラ、エレクトーン演奏など・・・多種多様・多岐に渡ります。また、小野記念講堂では「早稲田演劇週間」が、ワセダギャラリーでは展示が開催されました。ここまでの多ジャンルが一同に会するイベントは、学生であるないに関わらず、この学生文化・芸術祭以外には無いのではないかと思うほど、密度の濃く刺激的なイベントとなっています。

 これは、本当に早稲田ならではだと、大隈記念講堂の舞台監督として携わってみてつくづく感じました。

 舞台監督とは、舞台が滞りなく進行するように、転換や開演・終演の段取りを組み、進行させていく役割ですが、その役割の特性上、各団体の裏側を見続けることになります。それはつまり演目そのものだけでなく、その演目に携わる人を直接見ることでもあります。
 その際に強く感じたことは、どの団体の学生達も、自分の団体にまっすぐ一生懸命で、そして楽しんでいるということでした。
 よくよく考えると、なにかの契約で拘束されているわけでもなく、言ってみれば対価があるわけでもない学外の活動で、自分達自身が楽しんでいなければ、続きようがないのかもしれませんが、それにしても皆、生き生きしているのです。

 これだけの多種多様なサークルの、生き生きわくわくした学生達が集まり、一つのイベントを形作ってしまうのが、早稲田ならではの「文化」であり、いちOBとしてとても誇りに思った点でした。

芸術文化の根源

 早稲田を卒業し、社会に出て、プロと呼ばれる人々と仕事をし、その道をずっと突き進んできた方々とお会いして強く感じることは、自分たちが創っていることにわくわくして、心からそれを楽しんでいることでした。
 これはつまり、私が学生文化・芸術祭を通じて感じたことと、根本は同じでした。
 もともと芸術文化は、極論を言ってしまえば、存在しなくとも日常生活に支障が出るものではなく、実際、芸術文化に触れないで生活している人もたくさんいます。
 しかし、芸術文化に関わる一人として、誤解を恐れずに言わせて頂くと、それに触れる生活と触れない生活で言えば、前者の方が、心豊かに過ごしていけると思います。
 心が豊かになること‐つまり心が動き、感情が生まれること。このために、表現者も自身の心が動いていないといけません。その根本が、表現する欲求をもち、その表現を出来ることにわくわくし続けることであると考えます。

「早稲田学生文化・芸術祭」の可能性

 自分のしようとすることが楽しく、その点が強い軸となり、表現することについて自分自身で考え、自分で責任を持ち、自分で行動し、自分で決定する。
 つまり、「自」が「立つ」。自立すること。
 これは、芸術文化の分野だけでなく、どこまでいっても、どんな世界に飛び込もうと必要なことです。
 しかし、これは時として「自」分勝手ともなりがちなものでもあります。
 自分やりたいからやる。自分が考えたことだから、その通りにやる。では、自立と自分勝手の境界線は何なのでしょうか。
 それは、どんなに自分自身で何かを創りあげようとも、そこに関わる「他人」がいることに、意識がいっているかということだと思います。
 それがどんなに素晴らしいものであったとしても、自分とその創り上げたものに関わる人々がいない限り、それは自分自身の世界の中で帰結してしまいます。
 つまり、究極的には、文化は人との関わりの中で生まれていくということに他ならないということです。
 舞台芸術、パフォーミングアーツというものはそれが分かりやすく、まずもって、見て頂く方がいなければ成り立ちません。
 また学生文化・芸術祭に関しては、そこに大学側のスタッフ、講堂スタッフなどのその場を用意してくださる方々、そして他団体の学生達もいます。

 その人々との繋がりの中に自分達が存在し、そして自分達の文化も存在すると感じられるかどうか。この点に、早稲田学生文化・芸術祭のさらなる可能性が含まれていると感じました。
 自分達の団体のパフォーマンスを行うことが出来る幸せを感じられることは、とても大事です。そして同時に、それを見に来る方々がどう感じるか、この学生文化・芸術祭のことをどう思うか‐ここまでを含めて、このイベントに携わっていく学生が増えれば増えるほど、もっと刺激的な、もっと創造性にあふれたイベントになると思います。
 そしてそれが出来れば、もっともっと学生自身の手で発信し、さらには発信する機会・土台でさえ新たに創りだしていけると考えます。

早稲田の学生文化の発信について

 自分達のパフォーマンスが出来る舞台がある、自分達の表現したいことが出来るというのは、本当に恵まれていて幸せなことです。そして、早稲田にはその無限の機会があると思います。
 それは、人間が豊富であるからです。多様な価値観の学生が集まり、熱を持って活動していることが、早稲田の特色であり、一番の魅力です。
 その点に気づき、自分達の世界の中だけでなく、もっと他の人に目を向け、お互いに関わりあい、そこから新たなものを生み出していくこと、それが早稲田の学生文化の発信ではないかと考えます。
 世界の価値観が一様でなく、個々の価値観がクローズアップされている現代こそ、ぜひ他人との関わりの大事さに気づき、感謝して、そしてそこから新しいものを恐れず創り出し発信していって欲しいと思います。
 そして「自」分勝手にならず「自」立し、さらにそれを後輩へと伝えていって頂ければ、早稲田にまた新たな「文化」の1ページが生まれることになるでしょう。そう願い、これからも早稲田大学と早大生の可能性に注目していきたいと思います。

中原 和樹(なかはら・かずき)/舞台監督・演出家

2007年度早稲田大学第一文学部総合人文学科卒業。
在学中に英語劇と英語ミュージカル団体にかかわり、そこでプロの演出家や舞台スタッフから演劇を学ぶ。
卒業後、自分達の力でどれだけのことができるかに挑戦するため、劇団を立ち上げ、ストレートプレイの演出・オリジナルミュージカルの作演出を重ねる。
外部では、子供ミュージカルの演技指導・演出をはじめ、昭和音楽大学や東京藝術大学の企画での音楽劇・ミュージカルの演出も行う。
演出とは別に、フリーの舞台監督として、芝居、ミュージカル、コンテンポラリーダンス、バレエなど、ジャンルを問わず舞台芸術に関わっている。