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▼こんな授業! どんなゼミ?

映画好きにはたまらないゼミ Film Studies

ゾロタリョワ クセニヤ/国際教養学部4年

森田典正国際教養学部教授

 授業は毎週のように映画鑑賞から始まる。教室は薄闇に包まれ、壁はスクリーンと化す。信じられないかもしれないが、これがゼミの授業なのだ。映画好きにはたまらないこと間違いなしである。実際、受講しているのは、授業後も先生を交えて最近観た作品の話で盛り上がる映画ファンばかりだ。もちろん、ただ映画を鑑賞するだけでは終わらない。映画の分析的視点を養うことに意味がある。

 2007年度後期のテーマは「ロードムービー」であった。主人公は広大なアメリカの砂漠を車で横断する。その途中で人を撃ち殺し、警察から逃走を図り、行きずりの女と関係をもつ。このあたりがいわゆるロードムービーを構成している重要な要素である。しかし果たしてロードムービーの意味合いは、そういった表面的なことに限られるのだろうか?答えはノーである。実はこのジャンルの映画は、保守的社会を批判する意図で撮影されたものが少なくないのだ。

 例えば『俺たちに明日はない』(Bonnie and Clyde/1967)の主人公は、退屈な日常から抜け出すために銀行強盗となっていく。罪を犯した2人は警察に追われるが、この作品では警察官は悪役として描かれており、気がつけば観客は社会からはみだしてしまった2人に味方をしている。この観点でみていくと、『イージー・ライダー』(Easy Rider/1969)はヒッピー・カルチャーを世の中に広めた作品であり、束縛から逃れてバイクで疾走する主人公らはまさにロードムービーを体現しているといえる。またタバコ、麻薬、暴力という今でこそしょっちゅう描かれる反社会的なモチーフも、昔からこのジャンルの重要な要素である。

写真中央、ピンクのTシャツを着ているのが筆者

 ちなみにロードームービーは長いこと「男の世界」だった。主人公はたいてい男であり、女性は出てきても準キャスト程度の扱い。しかし変化は1991年に訪れた。『テルマ&ルイーズ』(Thelma&Louise)の公開だ。この映画では女性2人が果敢に砂漠を横断する。実社会にフェミニズムの思想が浸透し始めたことを反映している映画ともいえるだろう。このように映画はエンターテイメントの一種であるだけでなく、社会を映す鏡でもあるのだ。

(提供:早稲田ウィークリー