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▼こんな授業! どんなゼミ?

ドーピングを倫理学的に考察する「アンチドーピング論」

東郷 大輔/スポーツ科学部 2008年3月卒業

大きな階段教室がほぼ満席になる人気の講義だ

 ドーピングとは、スポーツ選手の競技能力を増幅させる可能性がある手段(薬物あるいは方法)を不正に使用することである。近年、大物メジャーリーガーや有名陸上競技選手などのドーピング疑惑が新聞紙面やニュースをにぎわしている。この場合のドーピングはもちろん「悪」であり、「やってはいけないこと」という前提で報道、批評がなされているであろうし、受け取る側もそれを前提としているだろう。国際オリンピック委員会(IOC)会長のジャック・ロゲ氏も、「五輪最大の敵」にテロとドーピングを挙げている。

 しかし、今回紹介する友添先生担当の「アンチドーピング論」の授業では、最初からドーピングを「悪」であるとは決め付けない。感情論、(損得)勘定論とは違う視点、つまり倫理学的視点からドーピングを考察していくのである。

 この授業の魅力はまず、具体例や説明によりドーピングについての各考察が理解しやすいことである。講義はまず「なぜドーピングをするのか」というところから始まる。実際、アスリートは1度トップに上れば何10億という金を手にすることができる。たとえ多くの副作用に苦しんでも莫大な富が手に入るのなら、とドーピングに手を出してしまう。講義ではこれをもっと身近なところに引き寄せるため、営業マンを例に挙げる。不健康になることを承知で、不眠不休、栄養ドリンクを飲みながら仕事をするのが猛烈営業マン。アスリートもサラリーマンも共に生活がかかっているから、健康を犠牲にしてでも「働く」のである。トップアスリートという遠い存在を、サラリーマンという身近な存在に置き換えることで、生活がかかっている者に対して、その収入を得る一つの手段としてのドーピングを禁止する理由は何なのか、と問うことになる。

 授業では最終的にはドーピング禁止論の根拠を倫理学的視点で考察していくのだが、このような倫理学的なものの考え方というのは、ドーピングに対してのみならず、スポーツ文化全てに対して学び理解を深めていくために身に付けたいものである。こういった考え方を学べることも、この授業のもう一つの魅力だ。スポーツ倫理学のエキスパートである友添先生によるこの「アンチドーピング論」。ドーピングに対する新たな視点が得られることは間違いない。

(提供:早稲田ウィークリー