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▼こんな授業! どんなゼミ?

複製身体哲学~現在進行形で考える~高橋 透ゼミ

舟津 亘/文化構想学部3年

 「複製身体哲学」と、どうにも難しそうな名前がついたゼミではあるが、内実、皆が書物にかじりついて、「身体の神秘」に思いをはせているわけではない。

 この授業では“今”世の中に存在するメディア上に現れた文化から、それぞれが興味関心のある事象を取り上げ発表し、熱い議論を交わす。その内容は実にさまざまであるが、最新の話題にスポットを当てている。

 ある人はタレントを起用した広告について取り上げ、またある人は「ニコニコ動画」※1 や「初音ミク」※2などの流行について発表した。もちろん高橋透先生の専門分野であるサイボーグ技術についても扱われる。それらの題材は、一見バラバラの内容のように見えるが、その根底には共通の「私とは何か」という問題がある。それは「自己の存在」を見つめ直すというもので、これから技術発展において一番注目すべき問題だ。人間と機械、人間と他の生命、個人と集団、等の境界が曖昧になっていくことは、突き詰めていけば「自己」という存在自体が揺らぎかねない可能性を持っているからである。私の場合は、特に「音声」についての「バーチャル」と「リアル」の境界を考えたが、やはりそこでも「声を発する身体」をめぐってその存在が問い直されるだろうという結論に至った。

 発表後は先生から主にサイボーグ技術の観点での意見を頂いたり、ほかのゼミ生から自分とは全く異なる意見を得られたりと、私にとって非常に意味深い場であると感じている。 私たちは文化構想学部の一期生であるため、ゼミ生としても初めての学年だ。ゼミの形はまだ定まっておらず現在も常に変化している状態にある。そのような状況と扱う事象の流動性が相まって、複製身体哲学ゼミはまさに現在進行形のゼミであるといえるだろう。先生が常々言われていることだが、これからの世の中は、より技術と人間の接近が進み、その境界は更に曖昧になっていくものと思われる。しかしながら、そのように流動的である「今」の事象の中から、皆の考えをぶつけ合わせることで何か確実なもの、未来に繋がるものをすくい出そうとする姿勢は決して揺らいではならない、とゼミの授業を通して学ぶことが出来た。

※1 株式会社ニワンゴが提供する動画配信関連サービスである。再生中の動画の上にコメントが表示されるという新しいサービス形態で人気を博している。 ※2 株式会社クリプトンフューチャーメディア社から発売している、パソコンで歌声を作るデスクトップミュージック(DTM)ソフトウェア製品名、またそのキャラクターの名称である。DTMソフトとしては異例の販売数を記録し、前述したニコニコ動画上にも初音ミクを使った楽曲が多数アップロードされた。

(提供:早稲田ウィークリー