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▼こんな授業! どんなゼミ?

ジェンダーとイメージ
~既成概念への挑戦~

宮本 里穂/第一文学部(2009年3月卒)

 この講義では毎回テーマを美術から取り上げ、考察する。題材は多様だが、共通しているのは作品をジェンダー的視点で見ることである。

 美術史にジェンダーの視点を取り入れるとはどういうことだろうか? 私は2年生から研究を始めて以来、幾度となくその問題に突き当たった。例えばティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》(1538)は、裸婦像の傑作とされている。

 しかし、私はそれを素直に「理想的女性像」だと肯定することがどうしても出来なかった。白昼堂々裸を見せる女性像を、自然なものと受容できなかった。その違和感が、私のジェンダー美術史学の出発点であったと思う。

 美術史を学ぶ時、流れをある程度暗記することは避けられない。しかし、歴史には「歴史を構成した主体としての誰か」の存在がある。その主体はしばしば、あるはずのものを排除し主観的に選んだ要素で歴史を再構成する。

 排除の対象の最たるものは女性の存在・目線である。フェミニズム美術史に功績を残したG・ポロックは、ジェンダーの視点で美術を読み直すことを「現行の学問理念に対する政治的な挑戦」だと述べた。

 昨年10月、戸山キャンパス36号館で行なわれた講演会においては、ジェンダー美術史の第一人者であるL・ノックリンはこう発言した。「フェミニズムは学問上の手段の一つにすぎない。重要なのは政治的目線を持ち続けることだ」と。

 私は講義に、毎週多大な刺激を受けている。だが私は女性の権利の追及とか男性の糾弾という目的は一切持っていない。私は既成概念に疑いを持ちたい。イデオロギーを構成する主体を意識していたい。そういった意味で、やはり自分にとってもジェンダーは手段であるのだと思う。

 この講義は低学年から受講できる。美術史の学生だけでなく、多くの人に受講してほしい。既成概念を疑い、考え直すことは生きるのに不可欠な力だからだ。

(提供:早稲田ウィークリー