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▼こんな授業! どんなゼミ?

比較翻訳論
コミュニケーションの根幹をあぶり出す“翻訳”

住本 麻子/文化構想学部2年

学生の翻訳に対し丁寧にコメントする水谷八也先生

 英語が好きだ。翻訳家になりたい。そんな人にはもちろんこの講義をお勧めします。しかし英語ができないからといって比較翻訳論の講義を受けないのはもったいないと思います。というのは、翻訳の問題は、言語を超えた、もっと大きく、もっと身近なものだからです。

 授業の内容はいたってシンプルです。まず、先生が翻訳課題を出し、それを学生が翻訳し、提出。次の回で先生が「気になった」訳文を抽出して、先生がコメントしていく、というものです。先生が取り上げるのは単に「良い例」だけでなく、工夫した表現、全体的にまとまっているものなど、幅広く学生の訳文を紹介してくれます。先生の懐の深さが垣間見える瞬間です。

 翻訳のポイントとなるのは、訳としての正確さはもちろん、作者・著者の意図をどれくらい汲み取っているかということです。例えば「but」は「しかし」と訳せば、間違いではありません。しかしその「but」という言葉が、逸れた話を戻したいときに出てくれば、「それはともかく」という訳がいいときもあります。

 どの訳がいいかは、文章全体をきちんと把握していなければ分かりません。よく読み込まないとつかみ取れない情報まで意識する必要があります。例えば小説の翻訳であれば、それがたとえ書かれていなくても、主人公はどこで生まれ、子どものころはどんな性格だったのかを持てる情報でもって最大限に想像しなければ、一つ一つの言葉がもつ微妙なニュアンスを取り違えてしまいます。

 その作業は一人の人を理解しようとすることに似ています。それも小さな子どもや価値観の違う人など、簡単には分かり合えない人です。その人が発信しているどんな情報も逃さないようにすること、伝えたいことがうまく表現できない煩悶(はんもん)さえ表現に反映させること。比較翻訳論を通して学んだことは人間を理解することの難しさ・面白さであると私は思います。なお、前期の翻訳文化論では翻訳理論を中心に講義が行われるので、前期に翻訳文化論の授業を取ることもお勧めです。どのようなことに気をつけて翻訳をすればいいか先取りできます。

「翻訳」を通して物事を理解することの難しさを学ぶ

(提供:早稲田ウィークリー