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黒川 陽子(くろかわ・ようこ)/2008年3月大学院文学研究科修士課程修了 略歴はこちらから

ちょっと“裏側視点”の新人劇作家

黒川 陽子/2008年3月大学院文学研究科修士課程修了

 数年前に作った初戯曲の主人公はなんとメスの蚊。蚊が人間になり、お酒を出す店を営みながら好物の血を吸い放題の生活を送る…というもの。メスの蚊は高性能の蚊取り線香で駆除されてしまう結末だ。友人が「意地悪な結末がおもしろい!」とほめてくれたのが戯曲に本格的に取り組むきっかけとなった。「私自身、根本的なところが意地悪なのかもしれませんね」と、ころころ笑う。

 07年12月、紀ノ国屋サザンシアターで開催された公開審査会で審査員全員一致、大絶賛され黒川さんの作品『ハルメリ』は見事“劇作家協会新人戯曲賞”を受賞した。“ハルメリ”は造語。「意味が特定されず、やわらかい音を出す言葉にしたくて」たどりついた言葉。「珍しいものをおもしろく描くのは王道。じゃあ正面からではなく、ちょっと裏側から見た視点で描いてみようかと」劇中“ハルメリ”は流行語のように会話で使われたり、クラブの店名やチョコレートの商品名として溢れていく。「小説や映画もちょっとした“嘘”を上質に作り込んでいくものが好きで…」“裏側視点”で、一気に仕上げたものが『ハルメリ』だった。

 それにしても黒川さんは姿勢がいい。すっとたたずむ姿は美しくのびやかだ。その姿勢のよさ、バレエでも習っていたの? と尋ねると「スポーツは観るだけ、とくにフィギュアスケートが好き」。「じつはフィギュアスケートを題材にした作品を考えていまして…」。主人公は人間。でも注目するところは実況だ。こちらは現在、構想中とのこと。今は友人が立ち上げた演劇ユニット(パセリス)の8月公演のための戯曲執筆に忙しい日々を送っている。テーマは手芸。独特の文化を彼女ならではの語り口で描き出すつもりだ。

 “裏側視点”で見ているといろいろな生き方に出合うのだという。「普通に暮らし幸せに生きる、よく生きることが一番すごいことじゃないか」と最近は思っている。背筋をきりりと伸ばして、そう言葉を結んだ。

Information

パセリス第1回公演『褒め殺し』
作:黒川陽子
演出:佐々木拓也
8月27日(水)~31日(日)
渋谷Gallery LE DECO

(提供:早稲田ウィークリー

黒川 陽子(くろかわ・ようこ)/2008年3月大学院文学研究科修士課程修了

1983年栃木県生まれ。栃木県立宇都宮女子高校卒業。慶應大学文学部卒業後、本学大学院文学研究科修士課程入学、2008年3月修了。07年『ハルメリ』で第13回劇作家協会新人戯曲賞受賞。08年、小野梓記念賞(芸術賞)受賞。