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空気をきれいにするあかり
酸化チタンの特性を活かした新しい照明を提案

船越 勇毅/芸術学校建築設計科卒

 『OTiO』という名のこの照明は、ゆっくり呼吸をするかのように光を放つ。やわらかな雲ごしに感じるようなやさしい光は、コンペでも高い評価を受けた。「テーマが“地球を大事にするあかり”だったので、酸化チタンの使用は審査員の方々からも評価いただきました」と船越さんは顔をほころばせる。もともと船越さんは高校卒業後、静岡大学に進学、次世代型太陽電池の研究をしていた。「研究を進めるにつれて、太陽電池に対する認識や普及を高めるためには、見た目の美しさも必要なのでは? と思うようになりまして……」。それならば……と大学卒業後に、改めて本学芸術学校に入学。「ここなら、デザインから建築まで幅広く複合的に学べると思い、入学を決めました」。

 銀賞に輝いた作品は、光触媒である酸化チタンでつくられている。酸化チタンは次世代型太陽電池にも応用されているため、船越さんにとってはなじみの深い素材。省エネや高性能化とは違う形で地球環境改善に役立つ照明をつくりたい、と思った時「酸化チタンがひらめきました」。酸化チタンは、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線を浴びると、空気中の有害物質であるNOx、SOx、ホルムアルデヒドなどを分解する。この特性を活かし「使用するたび、空気をきれいにする照明・OTiO」が完成した。「タイトルも酸化チタンの化学式、TiO2をもじったものなんです」。照明を包み込むランプシェードは、特注の工業用フィルターに酸化チタンをコーティングしたもの。「フィルター状のランプシェードにすることで、有害物質分解の効率も上がるし、柔らかくやさしいあかりをつくれるかな、と」。シンプルかつ、説得力のあるデザインのあかりができあがった。

 卒業設計は『祭、まん幕、集住。』という作品。地元姫路市の播磨灘を臨む灘地区の敷地に、集合住宅を提案した。「灘地区は、約650年前から続いている『けんか祭り(※2)』で有名なんです」。その祭りのおかげで、地域の人たちのむすびつきは強く「僕の実家も近隣の方々と、とても仲がいいのが自慢です」。地元自慢の結束力を活かした住宅プランを提案した船越さん。今後は幅広くなんでも“デザインしていきたい”と言う。「最近、祭はすごいデザインじゃないかと思うんです(笑)。意匠的なものといえば神輿くらいしかないのですが、それが、街の雰囲気や匂い、人の気持ち……そして人間関係にまでも影響を及ぼしている。自分も祭のように目に見えないものにも影響を与えるデザインがしたいです」。

※1:住宅・店舗の幅広い事業領域で照明器具の開発や計画を行っているコイズミ照明株式会社が1987年より開催している国際コンペ。世界で唯一の学生対象の照明コンペとして、プロダクトデザイナーを目指す学生の国際的登竜門である。

※2:姫路市白浜町松原八幡神社で行われる秋季例祭。練り合わせとよばれる3台の神輿をぶつけ合う特殊な神事を行うため、全国の数ある「けんか祭り」の中でも最大規模として有名。

(提供:早稲田ウィークリー

船越 勇毅(ふなこし・ゆうき)/芸術学校建築設計科卒

1985年兵庫県生まれ。兵庫県立姫路東高等学校卒業後、静岡大学を卒業。今春、本学芸術学校建築設計科を卒業。2009年、第22回コイズミ国際学生照明デザインコンペ(※1)にて出品1184点の中から銀賞に選出される。故郷である姫路市をこよなく愛し、卒業設計の準備に追われた2009年以外は毎年10月に行われる地元の松原八幡神社の例大祭『灘のけんか祭り』に参加することがライフワーク。好きなデザイナーはジャスパー・モリソン。