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史上最年少で第19回松本清張賞受賞!
ひらめき・やる気・根気で
プロの作家として生きていく!

阿部 智里/文化構想学部3年生

 第19回松本清張賞を史上最年少で受賞した阿部智里さん。世間は現役大学生が最年少で受賞した点に注目しているが、そのことは「素直に喜べない」とのこと。「今回の受賞では、選考委員から『可能性にかけたい』と言われていますので、焦る気持ちが強くて、最年少受賞に浮かれる余裕はありません」。

 阿部さんは、物心ついたときから作家だったという。幼稚園児の頃には、空想の話を両親や友達、先生を相手に一生懸命に語り、その内容を絵で表現することもあった。処女作品は、なんと小学校1年生のとき。大きな模造紙に夢中で書いた物語だった。以来ずっと書き続け、将来は作家になると公言してきた。

小説創作への熱い思いを語る阿部さん

 今回受賞した作品『烏に単は似合わない』(文藝春秋)は、“和風ファンタジー”と呼ばれるジャンル。和風ファンタジーには、厳密な時代考証が必要と考えている阿部さんにとって、大学進学は大前提だった。「大学は宝の山。教授がいて、図書館には膨大な資料があります。早稲田大学は最高の環境です」。学生生活は、勉強第一。学んだことが全て小説に役立つので、勉強が楽しくて仕方ないという。「日本を理解するためには、影響を与えた中国や朝鮮半島のことも知る必要があると考え、多元文化論系を専攻し、河野貴美子教授の漢字・漢文文化ゼミで学んでいます」。

 松本清張賞に応募したのは、今回が2回目。「高校2年生のときに初めて応募したのですが、そのときは玉砕しました。でもがっかりはせず、自分の表現力の足りなさを痛感しただけです。失敗を次に生かすために、何度も自分のダメだったところを分析しました」。

 プロの作家になるためには、「ひらめき」「やる気」「根気」が不可欠だと語る。「“ひらめき”だけなら、誰にでもあると思うんです。でも、それを小説に書こうとする“やる気”、読ませる文章に研ぎ澄ませていく“根気”がないと本当のプロにはなれません。イマジネーションを絵に描くように文章にしていく段階は楽しいですが、伝える文章にするために手術を施していく段階では痛みが伴います。それを乗り越えなければプロの作家にはなれないと思っています」。

 大学生活を通して、物語の核となるもの、すなわち読者に伝えたいことがはっきりしてきた。「伝えたいことが明確になって、不安がなくなりました。自信というより覚悟ができたのだと思います。揺るぎない核があれば、あとは、伝わる表現方法を根気よく探していけばいいことですから」。

 いくら才能があっても、作家として食べていくのは簡単なことではない。しかし阿部さんは、あくまでも専業作家として生きる覚悟を固めている。「物語を通じて伝えたいことが二つあるので、最低でも二つのシリーズを完結させることが目標。そのためには本を出し続け、売れ続けなければなりません。イバラの道ですね。でも私にはそれしかないんです!」。

 阿部さんが物語で伝えたいことは、最後まで教えてもらえなかった。読者に感じとってほしいそうだ。阿部さんが人生を捧げる物語、読まずにはいられない。

受賞作の登場人物を貼り絵で作成した

本の表紙を見たときの感動はひとしお

アイデアノート。受賞作の構想は手前のノートに書かれている

(提供:早稲田ウィークリー

阿部 智里(あべ・ちさと)/文化構想学部3年生

群馬県出身。文化構想学部3年生。群馬県立前橋女子高校卒業。趣味は小説のイメージを形にした貼り絵、便せん集めなど。柔道初段、高校時代の部活はミュージカル部と、意外な一面もあり。尊敬する作家は『指輪物語』のJ.R.R.トールキン。好きな食べ物は干し柿。