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山岳部、南米最高峰アコンカグアに59年ぶりに登頂成功
チームで登るから、大きな目標を達成できる!

塚本 健吾/商学部4年

 2012年3月3日、“アコンカグア登山隊2012”の5名(早大山岳部)がアンデス山脈にある南米最高峰のアコンカグア(標高6,962m)の登頂に成功した。1953年、当時の早大山岳部員が日本人として初めて登頂して以来の快挙だ。「アコンカグア登頂は、高度があるので入念な計画やトレーニングが必要とされ、短期間で挑戦する登山グループも含むと30%しか登頂できないといわれる難関です」と、山岳部主将の塚本さんは語ってくれた。

アコンカグア登山隊2012の5名(山岳部員4名、コーチ1名)

 現在のメンバーにとって海外遠征は初めての経験。半年前から準備を始め、想定し得る問題を最小限にするため、何回も検討会を行った。ちなみに、登頂成功のためには、計画が8〜9割の重要度を占めるといわれる。山での生活に必要な食糧、水、道具を綿密に計算し、安全な工程を考えておかなければならない。計画を立てる上では、PDCAサイクル(計画=Plan、実行=Do、評価=Check、改善=Action)で、「ヒヤリ・ハット」を見逃さないのが山岳部の伝統。経験豊富なOB・OGにも指導を受けている。「稲門山岳会の皆さんのアドバイス、資金面での援助には本当に感謝しています」。

 日本最高峰の富士山(標高3,776m)よりはるかに高い6,962mへの挑戦は、高度との闘いだった。高度障害(高山病)は、十分なトレーニングをしたからといって克服できるものではない。「今回も通常の練習に加えて、低酸素室に宿泊して高度対策の訓練を行い、現地で本番に臨みましたが、高度への適応はお酒に強いかどうかと同じで、体質や現地での体調に左右されます。6,600m地点までに5人の仲間がリタイアしましたが、こればかりは根性論でどうにかなる問題ではありません。全員が力を出し切ったと思いますし、無事に下山するための的確な判断でした」。

 頂上ではみんなでハグをして全員の健闘を称え合ったという。普段は理性的な塚本さんも「達成感と全員で登頂できなかった悔しさがごちゃまぜになって、涙が止まりませんでした」と感慨深げだ。

 山における判断は難しいと塚本さんはいう。「一歩間違えれば生死に関わります。経験が少ない1年生は自分の限界が分からないため、上級生が登山を続けるか判断しなければなりません。30kgの荷物を背負って歩き続けていると、山を楽しむ余裕もなくなってきますが、それでも弱音を吐かないのは、上級生としての使命感。ここで俺が頑張らなければ後輩を不安にさせてしまうという思いが、自分を強くしてくれます」。

 今年度は主将として部を率いていく立場になった。「前主将が所信表明で『身も心も山岳部に捧げる所存である』と書いていたのですが、今はその意味がよく分かります」。それだけ、部員の命を預かる責任は重い。塚本さんの所信表明にはこんな言葉がある。「小心にして無謀、細心にして大胆」。自分を過信せず、身の丈に合った登山を心掛ける一方で、準備を怠らず、常に挑戦し続けたいという思いが込められている。

 卒業後は念願の総合商社で働く日々が待っている。1年間の留学で鍛えた英語力と登山で鍛えた的確な判断力で、世界を舞台に活躍していくだろう。

アコンカグア登頂に挑戦した山岳部員と現地ガイド

お世話になった22歳の現地ガイド・マティアスさんと

“白い嵐”と称されるビエント・ブランコ(頂上付近で吹き荒れる猛烈な強風)の様子

(提供:早稲田ウィークリー

塚本 健吾(つかもと・けんご)/商学部4年

千葉県出身。商学部4年。千葉県立船橋高等学校卒業。山岳部に興味を持ったきっかけは「アウトドアファッションが好きだった」と意外にも形から入ったとか。趣味は映画鑑賞。1年間の留学中に黒澤映画を見尽くし、「Film Comedy Around the World」という授業では世界中のコメディ映画について学んだ。卒業後は総合商社に入社予定。