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先端技術大賞学生部門で特別賞を受賞
好きだという思いが、医療に革新をもたらす

岸本 彩/先進理工学研究科修士課程2年

 優れた研究開発成果をあげた理工系学生や企業・研究機関の若手研究者を表彰する「第26回 独創性を拓く 先端技術大賞」。先進理工学研究科修士課程2年(当時1年)の岸本さんは、論文「PET装置の高解像度化に向けた新規三次元位置検出器の開発」で、先端技術大賞学生部門特別賞を受賞した。この部門の受賞者の多くは博士課程の学生だが岸本さんは、修士1年での受賞という異例の快挙を成し遂げた。

先端技術大賞受賞式にて。論文指導をしてくださった片岡淳准教授と一緒に

 岸本さんが科学に興味を持ったきっかけは、高校時代に出会った物理の先生の影響。「ごく普通の物理の授業でしたが、その先生からは『科学が好き』という純粋な思いが伝わってきました。授業を受けるたびに、先生の思いに共感し、気が付いたら私も科学を好きになっていました」。

 早稲田大学での学部生時代は、「宇宙航空研究会 WASA」に所属し、「鳥人間コンテスト」優勝を目指し、仲間たちと共に人力飛行機の製作に励んだ。「自分たちのアイデアを形にしていく過程がすごく楽しかったです」と話す岸本さん。

 4年生になると放射線応用物理学の研究を行う片岡淳准教授の下で、今まで以上の情熱を科学に注いだ。片岡准教授について尋ねると、「研究に対してとても真摯な先生です。だからこそ厳しいと感じる場面もありますが、本当に科学が好きなんだなってよく思います(笑)」。高校時代の物理の先生のように科学と真摯に向き合う片岡准教授から、研究者としてのあるべき姿を見出せたという。その後、岸本さんは自身の研究テーマをより深く追究するために大学院へと進学、放射線の可能性を探り続けた。

 そして修士1年のとき、放射線の特性を応用し、がん診断のための画像診断法の一種であるPET(陽電子断層撮影)の高解像度化を実現させた「新規三次元位置検出器」を開発。岸本さんのこの開発は、およそ3人に1人ががんで命を落としているという日本の未来に希望の光を届けるものだった。そして、岸本さん自身にも何ものにも代えがたい経験をもたらす。「この技術の特許申請を行う過程で、大学の関係者の方から『先端技術大賞』への応募を勧められたんです。受賞できる自信はありませんでしたが、これまで取り組んできた研究をまとめる機会ととらえ挑戦しました」。

 2012年6月、岸本さんが片岡准教授に指導を受けながらまとめた論文は、医学的貢献度と新規性が高く評価され、特別賞を受賞。高円宮妃久子さまも訪れた授賞式では、博士課程の研究者や有名企業の若手研究者などの受賞者たちと肩を並べることに。「その場に自分がいること自体、信じられない気分でした。でも、一人の研究者としてようやく自信が持てるようになりました」。

 高校時代の先生やWASAの仲間たち、片岡准教授から科学の楽しさを教わり、今の自分があるという岸本さん。これからについて尋ねると、「修士課程が終わりに近づいているので、これまで取り組んできた研究をしっかりやり遂げたいと思います。そしていずれは、私も科学の楽しさを後世に伝えられたらいいなと思っています」。  ものごとと真摯に向き合い全力を注ぎ続ける岸本さんの姿勢は、やがて医療を変え、社会を変え、人を変える“力”になるのかもしれない。

先端技術大賞受賞者。岸本さんは後列左から2番目。前列中央には高円宮妃久子さま

高円宮妃久子さまに研究内容について説明する岸本さん

片岡研究室メンバー。岸本さんは前列右から3番目

(提供:早稲田ウィークリー

岸本 彩(きしもと・あや)/先進理工学研究科修士課程2年

東京都出身。先進理工学研究科修士課程2年。私立共立女子中学高等学校卒業。最近のお気に入りの映画は『コクリコ坂から』。「先日、WASAの仲間たちと大学からスカイツリーまで散歩したのですが、想像以上に遠かった…(笑)」。