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学生4人が静岡県伊豆市で起業!
株式会社「toiz」で“活き方をつくる”

前島 恵/人間科学部4年

 全国紙に「伊豆に学生移住 起業」という見出しが躍った。それは、地域活性化を目指す東京の大学生4人が起業した「toiz(トイズ)」の記事。メンバーの一人、前島さんにとってtoizの起業は、自分自身を探し続けた末に見つけた生き方そのものだった。

 熊本の小学校時代はいわゆる不登校児。学校での思い出はほとんどなく勉強もあまりしなかったと語る前島さんは、両親の勧めで「競争原理の中で子どもを育てない」という教育理念を掲げる中高一貫校に進学。定期テストさえない自由な校風は、当時の前島さんにとって居心地の良い場所となるが、一方で、目を背け続けてきた勉強とは向き合えずにいた。「自分は勉強ができないと決めつけていました。だけど高校を卒業したとき、『変わるなら今しかない』と吹っ切れて」。意を決した前島さんは、小学校までさかのぼりゼロから勉強を始める。そして2年間で、大学に入学するまでの学力を身に付けた。

東京から来た大学生が伊豆に集まり、勉強会を行う

 晴れて早大生となった前島さん。しかしその心はまだ満たされずにいた。「音楽や映画、インターンシップなど、興味を持てば何でも打ち込みました。限りある人生で自分がすべきものを必死で探していたように思えます」。そして3年生を目前にした頃に、後にtoiz起業のきっかけを与えてくれた桜田賢介氏と出会うこととなる。

 IT企業の専務を務める桜田氏は、伊豆市の活性化をテーマとしたビジネスコンテスト「イズコン」を企画・実行している。観客の一人として、そのコンテストに参加していた前島さん。そこで優勝したのは同じ早大生の塩見拓己さん(当時政治経済学部2年)による、学生団体を立ち上げて地域活性化を目指そうというプランだった。懇親会で初めて言葉を交わした塩見さんと前島さんは、集まった仲間たちと伊豆市公認サークル「Sizu(サイズ)」を立ち上げる。「伊豆を盛り上げるため地元のお祭りに学生を呼んだり、セミナーを開催したり、夢中になって奔走しました。でも1年が過ぎた頃、『本当にこれでいいのか?』と疑問が湧きました。自分が東京にいて「地域活性化をする側・される側」という構図がある限り本質的な解決には至らないのではないかと感じ始めたからです」。Sizuのメンバー、前島さん、塩見さんたち4人は、桜田氏の援助を受け、地元密着企業、株式会社toizを創設。静岡県伊豆市に民宿兼シェアハウスを構え、学生4人の共同生活を始めた。

 現在、伊豆を拠点にツアーの企画・運営、民宿経営を主な事業として企業活動を行うtoiz。「僕らが考える活性化された地域の状態とは、外に出て行った人たちが戻ってこられる状態です。都会に出て故郷に戻らないのは、『仕事がない』などの生活インフラの問題のほかに、『田舎は暮らしにくい』といった価値観が存在するからだと思います。そんな価値観を変えるために、まずは僕らのような若者が、伊豆で楽しく暮らしていることを示したいと考えました」。toizメンバーの生き方が一つのモデルとなり各地方に広がり、いずれは日本中が活気づくことを願っているという。「だから自分の生き方を通してそんな価値観を壊して、より多くの人が自分の生き方に誇りを持てる日本にしたいです」。

 受け取った前島さんの名刺には、“活き方をつくる”と一文が添えられていた。その言葉には、彼が探し続けた自分らしい生き方(活き方)という一つの答えが表れていた。

シェアハウスの庭で育てた作物。生でも食べられる

伊豆で釣りに興じるtoizメンバー。釣った魚は夕飯のおかずに。前島さんは奥から2番目

修禅寺の近くにある足湯につかりながらのんびりとミーティング中。前島さんは右から3番目

(提供:早稲田ウィークリー

前島 恵(まえじま・けい)/人間科学部4年

熊本県出身。人間科学部4年。自由の森学園高等学校卒業。趣味は料理。「地域の方からいただいた伊豆の食材で作っています」。現在は伊豆から大学に通学し、会社経営と学問の両立のため、大学院進学を目指している。「穴場スポットをご案内しますので、ぜひ伊豆に遊びに来てください!」