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都心に田んぼ 私たちの“わせでん”

増田 智美/先進理工学部3年
申 廷秀/政治経済学部2年

 かつて、見渡す限りに田園風景が広がっていた早稲田の地。神田川の氾濫に備え、成熟の早い品種、「早稲(わせ)」が栽培されていたことが地名の由来だ。平成の世に見る影もなくなった早稲田の田んぼが、2004年、大隈庭園に復活した。学生NPO「農楽塾」により開田され、“わせでん”と名付けられたその小さな田んぼは、顧問の堀口健治教授(政治経済学術院)と歴代メンバーの情熱によって大切に育てられてきた。“わせでん”は現在、都心で農業体験ができる貴重な場となり、学生や地域の子どもたちに新鮮な刺激を与え続けている。

10月10日にわせでんで行われた稲刈り式。右から増田さん、中島峰広名誉教授、堀口教授、農水省の前田管理官

 農楽塾の代表を務める増田さんは、富山県の広大な田園風景の中で育った。大学進学を機に上京したものの、無機質な都会の風景に寂しさを感じ、農楽塾の門を叩く。「農家の生まれではありませんが、農業は風景の一部だったように思えます。まさか、東京で初めて本格的な農業を体験するとは(笑)。代表となった今年は、“広げる”をテーマに掲げ、京都大学有機農業研究会「minori」と連携し、地球温暖化による稲の生育不良に関する研究を行ったり、単純に農業体験だけではなく、バケツ稲の設置や脱穀体験などを含んだ“農”に、より多くの人に触れ楽しんでもらえる活動に取り組んでいます」。

 一方、韓国・ソウル出身の申さん。国際協力に興味を持ち日本に留学。世界中の人と人とが国籍や人種の壁を越え、心と心で付き合える世をつくるという夢を持っている。農楽塾では今年度からできた国際課の担当。農楽塾の取り組みを国の枠を越えて“広げる”使命を担っている。農業を通じた国際交流プロジェクトに取り組み、農楽塾と国際コミュニティーセンター(ICC)との連携プロジェクトも実現した。「農業は、日本でも韓国でも若者に敬遠されがちですが、やってみないと楽しさは分からない。人も同じで、まずは交流することから関係が始まるのだと思います」。

 田畑を耕し、種をまき、農作物を育てる。それは自然との格闘の日々だという。動物に荒らされていないか、病気に感染していないか、農楽塾のメンバーは“わせでん”を自分の子どものように思い、育ててきた。「うまくいかないことは何度もあります。丹精込めて育てた野菜が、収穫前に枯れてしまったり。その度に原因を調べ、失敗を繰り返さないよう研究を重ねました」と増田さん。今年は稲穂をついばみに来るスズメとの格闘だった。「ネットを張っても、群れで来て、自分たちの重みでネットをたるませ、またついばんでいくんです。やられた! って思いながらも、スズメの賢さに感心してしまいますね」と申さん。農業で味わう失敗や苦労は、メンバーに発見と工夫の機会を与えた。

 これまで“農”という体験を通し、多くの人に世界を広げる機会を与えてきた農楽塾。農楽塾が二人に与えてくれたものとは?「夢です。農業を体験することで故郷を思う気持ちが強くなりました。将来は、農楽塾で学んだことを故郷に還元したい。それと、“わせでん”がこの先も後輩たちの手によって守られ、いつか早大生の故郷になったらいいな」と増田さん。「農業を体験して初めて、生産者の苦労や喜び、食のありがたみを知りました。自分の夢のために何でも体験して、その真髄を味わっていきたいです」。

 “わせでん”の稲穂を愛おしそうに見つめる二人。農楽塾で育った夢の収穫も間近だ。

2012年稲刈り式典。WAVOC所長紙屋敦之教授(最前列左から3人目)、農楽塾担当のWAVOCの秋吉恵助教(最前列左)

来年3月退職の農楽塾顧問堀口教授。団体を代表し、長年にわたる感謝の気持ちを込めて花束を渡す増田さんん

早稲田キャンパス付近の02cafe、わせでんで収穫した餅米を利用し、お餅つきすることを計画中

(提供:早稲田ウィークリー

増田 智美(ますだ・ともみ)(右)/先進理工学部3年

富山県出身。先進理工学部3年。富山県立高岡高等学校卒業。星海社の新書がお気に入り。「増える田んぼで増田です! 休み時間や早稲田キャンパス付近にお越しの際は、“わせでん”に立ち寄って“農”を感じてください!」

申 廷秀(しん・じょんす)(左)/政治経済学部2年

韓国・ソウル出身。政治経済学部2年。景福高等学校卒業。人とのふれあいを求めてさまざまな地域を旅している。「夏休みにWAVOCのプロジェクトを通じ、マサイ族のお宅で三日間ホームステイしてきました」