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50年分の記録と記憶を集めて、
文キャンの歴史を未来につなぐ

櫻田 俊太郎/文化構想学部5年

 2010年11月、文化構想学部の2年生だった櫻田さんが、ツイッターで早大生に向けてとある呼びかけを行った。「文キャン(早稲田大学戸山キャンパス)に工事のフェンスが設置されます。そこで、フェンスの少ない今の空間の良さを感じてもらえるような一般参加型のパフォーマンスを企画しています」。かねてより計画されていた文キャンの一部校舎建て替え工事が本格的に始まるにあたり、「10日後、工事用フェンスを設置します」という大学からの通達を受けての先のツイートである。「工事が始まってしまえば、フェンスが撤去されるのは5年後。つまり在学中は、文キャンの“本来の姿”を二度と見ることができなくなってしまいます。工事前の光景を多くの人の記憶に留めてもらうと同時に、フェンス設置を周知させることが狙いでした」と、櫻田さんは自身の活動の端緒となったツイートを振り返る。

一般参加型のパフォーマンス「The Fence -中庭にさよなら-」。設置前の工事用フェンスを身体で表現した

 しかし、パフォーマンスを企画したものの、実施までの期間はわずか6日。常識的に考えれば、この短期間で成功を収めるのは難しい。ところが、櫻田さんの呼びかけがツイッターや口コミで広まり、当日、約30人もの文キャン生が集結した。楽器の生演奏に合わせてパフォーマーたちが文キャンの中庭をゆっくりと周回し、30メートル程の白い布を掲げる。4日後に設置されるフェンスを“人間のフェンス”で表現してみせた。「時間がなかったので、夢中で走り抜けた感じです。大学側の協力もありがたかった。ギャラリーも大勢集まりましたし、期待以上の成果でした」。櫻田さんはこの取り組みをきっかけに、建て替えによってかつての姿を変えつつある文キャンの“記録と記憶”を残していこうと決意を固める。

 1962年に建てられた文キャンは、校友であり、文化勲章を受章した近代日本を代表する建築家、故・村野藤吾(むらのとうご)が設計。半世紀以上にわたって多くの文キャン生を見守ってきた。「そもそも建物にまつわる“記憶”に興味があるんです。いくら通い慣れた建物でも建て替われば、すぐ新しい記憶に上書きされてしまう。でも、以前の写真を見ると、次々と記憶がよみがえってきますよね。そこで、まずは僕自身が文キャンの“記録と記憶”を集めなければと思ったんです。誰かがやらなければ、きっと忘れられてしまうから」。

 こうした思いから、文キャンの歴史を紹介するWebサイト「文キャンアーカイブ」を着想する。櫻田さんを中心に、Webデザインやライティングの経験を持つ早大生がつながり、少数精鋭のチームを結成。数回のバージョンアップを経て、現在のデザインに定着した。読者を惹きつけるコンテンツとして文キャンで学生生活を送った著名人へのインタビューをはじめ、旧校舎の写真やエピソードなどを配信している。「引き続きアーカイブを充実させて、いつでもアクセスできる環境を整えていきたいと思っています」と、今後の展望を語る櫻田さん。

 今もなお建て替え工事の続く文キャンだが、いつでもその“記録と記憶”に再会できることを感謝したい。

文キャンの写真や映像を収集したWebサイト「文キャンアーカイブ」(http://buncam.org

戸山キャンパス校舎のパノラマ写真。その迫力に圧倒される

「早稲田祭2012」の一環として開催された戸山芸術展での展示の様子

(提供:早稲田ウィークリー

櫻田 俊太郎(さくらだ・しゅんたろう)/文化構想学部5年

秋田県出身。秋田県立秋田高等学校卒業。「文キャンの記録と記憶を残す会」代表。Webサイト「文キャンアーカイブ」の運営の他、電子書籍「ねとぽよ」(http://www.netpoyo.jp)の制作にも参加している。