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今最も注目される若手詩人の一人
風景のようになじむ言葉を紡ぎたい

文月 悠光/教育学部4年

 「詩」と聞いてどんなイメージを抱くだろうか? 小学校の授業で朗読した思い出。はたまた一人で没頭する文学作品……。多少なりとも“堅い”イメージを持つ人が多いのではないだろうか。

第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思想社)で、現代詩人の登竜門「中原中也賞」を史上最年少の18歳で受賞

 「もっと身近な存在としての詩や言葉に携わっていきたい」と話す文月さんは、高校在学中から史上最年少で現代詩手帖賞や中原中也賞を受賞するなど、すでに華々しい活躍を収めている注目の若手詩人である。文芸誌への詩や書評の寄稿、朗読会への参加など、いわゆる“詩人”らしい取り組みの他、FMラジオの番組に毎週新作を書き下ろしたり、タイツブランドとコラボレーションして自作の詩をプリントしたタイツを発表したりと、その活動は紙媒体だけにとどまらない。

 その中でも、文月さんの詩がより多くの人の目に触れたのは、昨年、作詞を手掛けたNHK全国学校音楽コンクール(Nコン)だろう。高校生の部の課題曲「ここにいる」の作詞家に大抜擢されたのだ。「Nコンに参加した全国の高校生が私の書いた詩を歌ってくれたのですが、その数は、詩集を読んでくださった方の比ではありません。また、音楽というフィルターを通すことで、言葉をより身近に感じてもらえたという手応えがありました」。

 文月さんが詩の魅力をより多くの人に伝えようと活動するその背景には、詩を書き始めたころの行き場のない思いが見え隠れしている。小学生のころ、周りの友人たちがダンスやサッカーを楽しんでいたのと同じように、言葉を紡ぎ出すことに熱中していた。しかし、「文学は難しい」といった周囲の先入観から、なかなかその個性を認めてもらえなかったという。「詩を文学的に捉える人もいますが、私は小学生の時、高校生が書いた詩を読んで、その真似をしたのが始まりなんです。だから、私にとって詩や言葉というのは、すごく身近なもの。自分の詩もなるべく、日常の風景になじむような言葉でありたいと思っています」。

 そんな文月さんは、詩の新しい可能性を探るべく、早稲田大学でも積極的に活動を行っている。短歌サークルに所属するのもその一環だ。「正直、詩よりも難しいです」と苦笑するが、詩を推敲する際、言葉のリズムや音数を操作するのが以前よりも上達したという。その他にも繊維研究会とのコラボレーションで、文月さんの詩からインスピレーションを受けて制作されたシャツと詩を展示する企画展を開催したことも。「写真や絵とのコラボはこれまでにもありますが、詩からシャツという、言葉を立体化させる経験はものすごく新鮮でした」。今後は詩のワークショップ企画など、詩との新しい出会いの形を模索していきたいと話す。

 最後に、詩にあまりなじみのない学生のために、その楽しみ方を聞いてみた。「最初に触れるきっかけとしてはやはり朗読会がお薦めです。言葉の意味にとらわれず、音やイメージを自由に楽しんでもらいたいですね。私の詩がきっかけになって、皆さんそれぞれにとってのかけがえのない詩や言葉と出会ってほしい。自分の詩がその“入り口”になればうれしく思います」。

昨年6月に早稲田大学で開催された『ろうそくの炎がささやく言葉』(勁草書房)の朗読会。谷川俊太郎さん他、著名な作家と共に登壇した

文月悠光×繊維研究会「ことばのシャツ展」

短歌会の同期のメンバーと

(提供:早稲田ウィークリー

文月 悠光(ふづき・ゆみ)/教育学部4年

北海道出身。北海道札幌旭丘高等学校卒業。中原中也賞を受賞した第1詩集に続き、昨年、第2詩集『屋根よりも深々と』(思想社)を発表。文月悠光というペンネームは、7月(文月)生まれで、月の光が好きなことから。