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手塚キャラロボットよ舞台で踊れ “漫画と演劇の融合”に挑んだ7人の学生

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チームリーダー
松澤 貴司/創造理工学研究科 修士課程2年

プロフェッショナルの姿勢に感銘を受けた

 手塚治虫の名作漫画を演劇にし、2016年2月に公演された『漫劇!! 手塚治虫 第三巻』(※1)。この舞台に登場した有名キャラクター「ヒョウタンツギ」「スパイダー」などのロボットは、理工学術院・高西淳夫研究室の当時修士1年生と学部3年生の計7人(※2)が授業の中で製作したロボットでした。「本来は役者さんが操作する予定でした。でも難しくて、演劇の知識も経験も全くない僕が、公演直前になって動かすことになってしまったのです」。劇場を埋め尽くした観客の前で披露するロボットの“演技”に、リーダー・松澤貴司さんの手は汗がにじみ、心臓の鼓動が速まるほど緊張しましたが、見事ロボットを漫画のように動かして舞台の成功に一役買い、普段の研究とは質の違う大仕事を成し遂げました。

――今回の舞台に関わるようになった経緯は?

 もともとは演劇に出るなんていう話は全くなかったんです。「エンジニアリング・プラクティス」という、それぞれの研究室の修士1年生と学部3年生がチームとなって一つのテーマに取り組む授業があり、僕は「ロボット用のOSを使ってロボットを作る」というテーマを選択しただけでした。指導教員の橋本健二助教(高等研究所)から「ロボットを演劇に出してみないか」という話があり、すぐに出演が決まりました。研究室の先輩もロボット演劇に挑戦して大変だったことを聞いていたので、「できるのかなあ」という不安でいっぱいでした。

「ヒョウタンツギ」ロボット

――どのようにしてロボットを作ったのですか?

 まず、『漫劇!! 手塚治虫 第三巻』の演出家である工藤龍生(くどう・たつお)さんに直接会って、話を伺いました。すると、『ブラックジャック』や『火の鳥』などさまざまな手塚漫画に登場する「ヒョウタンツギ」と「スパイダー」という有名キャラクターが欲しい、ということでした。二つとも不可思議なキャラクターで、シリアスな場面で突然登場して場面を和らげたりする“ガス抜き”のような役目を担っています。劇中を走り回ったり、飛び跳ねるような動きをします。そこで、高西研究室で開発した2輪倒立振子知能ロボット「ミニウェイ」を母体にして作ろうと考えました。どのぐらい速く走れればよいのか、飛び上がる高さはどの程度かなど、細かい仕様を話し合いながら決めていきました。

――最も難しかったのはどのようなところですか?

「ヒョウタンツギ」は走るだけでなく、上に飛び上がるような動きがあり、モーターで上下する機構を取り付けたので「スパイダー」よりも複雑に動作させる必要がありました。公演では役者さんが操作することになっていたのですが、操作することが少し難しいということで、劇場入りした最終リハーサル直前で僕が操作することになったのです。工藤さんの役者さんへの演技指導も熱がこもり、時に怒号も飛び交う演劇の現場は、緊迫したピリピリムード。演劇の経験がない僕は、緊張で心臓がバクバクいっていました。ロボットは、おおむねうまく動いてくれてほっとしましたが、観客の反応を見ている余裕はなかったです。

ロボットの内部機構

ロボットを作ったチームのメンバー

――大学の研究とは別の世界を経験して得たことはありますか?

 演劇のプロフェッショナルの方と、濃密な時間を一緒に過ごすことができ、たとえ本番直前でも自分の理想実現に向けて妥協しない姿勢、細部へのこだわりというのは大いに感銘を受けました。ロボット製作は常に納期・スケジュールとの戦いで、品質との選択を迫られる機会があります。妥協しそうになったとき、今回の経験が役立つと思います。

※1 )総合芸術集団「Human Art Theater」(HAT)が「演劇と漫画」の融合をコンセプトに掲げる演劇の第3弾。2月24日~26日、東京・池袋の「池袋シアターグリーン」にて、『苦情銀行2016』、『そこに指が』、『生けにえ』、『人面瘡(そう)』の4作品が上演された。

※2 )松澤 貴司(大学院創造理工学研究科 修士課程2年)、竹内 弘美(たけうち・ひろみ、大学院先進理工学研究科 修士課程 2年)、礒道 貴矢(いそみち・たかや、同 修士課程 2年)、赤堀 孝太(あかほり・こうた、創造理工学部 4年)、木田 和紀(きだ・かずき、同 4年)、山口 航希(やまぐち・こうき、同 4年)、陳 偉信(たん・うぇい・しん、同 3年※9月入学)

(提供:早稲田ウィークリー

松澤 貴司(まつざわ たかし)/創造理工学研究科 修士課程2年

富山県出身。富山県立砺波高校卒業。総合機械工学専攻で高西淳夫研究室に所属し、4本足のように見えたり、人型のようにも見える、手と足が同じ動作ができる4肢ロボットの開発を担当。『漫劇!! 手塚治虫 第三巻』では4作品中、3作品で製作したロボットが登場した。今後は博士課程へ進学し、地震・津波や土砂崩れなどの自然災害で調査や救助活動ができる災害対策用ロボットを作って社会に役立てたい、と意気込む。