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「演劇の早稲田」復活へ!
学生演劇の最高峰「シアターグリーン学生芸術祭」最優秀賞獲得

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岡本 将大/教育学部 4年

演劇で「自分がドキドキするもの」を作りたい

 学生演劇の最高峰とも言われる「シアターグリーン学生芸術祭(以降、SAF)」。岡本将大さんは2016年8月に開催されたVol.10にて最優秀賞を受賞した「くらやみダンス」の主宰として劇団を率い、演出・脚本を手掛けています。演劇を始めたきっかけ、SAFについて、そして将来の展望について、公演で使用したこともあり学内で最もお気に入りの場所、大隈記念大講堂にて聞きました。

――岡本さんが演劇を始めたきっかけは何ですか?

 中学生の頃から映画が好きだったので、高校に入学してから演劇部に入りました。ただ、想像していたのとは何か違って、すぐに辞めてしまいました。だから、本格的に演劇を始めたのは早稲田に入ってからです。通っていた高校は奈良の公立高校で、周りの多くが関西の国立大学を目指す中、「自分も何となくそうするのかな」と思っていました。けれどもそれは同時に、「このまま生まれ育った田舎でぼんやり生きて終わる」という底知れない不安でもあり、それゆえに勉強をする気になれない悶々(もんもん)とした時期もありました。

 高校3年の春、『第三舞台』(鴻上尚史氏の主宰する劇団)の解散公演の映像を見る機会がありました。早稲田が小劇場ブームを作り、「演劇の早稲田」と呼ばれていたころを描いた、ノスタルジーを感じさせる作品だったのですが、それを見てすごく悔しいと思ったのです。今はかなわないかもしれないけど、自分もやりたいことがあるし、そしてやれるはずだという根拠のない自信もありました。『第三舞台』の映像を見たことで、自分の中の漠然としたそういう気持ちが急に湧き上がって、東京に行く選択肢もありじゃないかと思うようになりました。東京に行って、早稲田に行って、演劇をやれば一気に何かが開けるはずだ! と。何の根拠もなく、なぜかそう信じていたんです。もちろん、実際にはそんなに簡単ではありませんでしたが。

 早稲田への進学は関西の国立大学に進学するものと思っていた両親には当然ながら猛反対されましたが、なんとか説得して早稲田に入学することができました。そして入学後は公認サークル「(劇団)森」に入りました。

――早稲田に入ってからの演劇について教えてください。

 もやもやしたものは「(劇団)森」に入ってからもありました。学生演劇をやっている同世代の人たちに対する嫉妬もありました。それでも、たくさんの公演を見たり経験したりして、少しずつ自分の考えを整理していきました。「(劇団)森」の企画公演として、学生会館で初めて企画、脚本を担当しました。初めてのことばかりでしたが、不思議と「きっと自分には面白いものができるはずだ」と思っての挑戦でした。上京を決めたときと同じ、根拠のない気持ちです。でもそれは、早稲田に来て演劇をやりたいと思って奈良から出てきたのに、何かをやらないと自分の価値、意味がないのではと思っていたからです。初めてのことで、正直とても大変でした。今でも変わらないのですが、脚本を書くのが苦手で、なかなかうまく書けません。自分が面白いと思うこと、やりたいことは断片的にたくさんあるのですが、それを整理するのが苦手でなかなか進まないのです。一緒にやる俳優やスタッフに、自分が面白いと思うことを伝え、理解してもらい、話し合う。この2点が本当に難しいと思います。

「くらやみダンス」の舞台

(撮影:飯田奈海)

――シアターグリーン学生芸術祭(SAF)に挑戦するに際してどのような心構えだったのですか? どんな準備をしたのですか?

野外稽古の様子

 東京に来る前からSAFは知っていて、小劇場での登竜門的な演劇祭と認識していました。2012年に優勝した早稲田の「ハイブリットハイジ座」は「(劇団)森」の先輩が作った劇団で、今もお世話になっています。作品もとても好きで、「(劇団)森」に入ったときから目標というか、意識する存在でした。そんな経緯もあり、SAFは自分にとって「憧れ」的な存在だったんです。ですので、「くらやみダンス」は「SAFの優勝を目指そう、目指せる」と思って立ち上げたんです。自分の個人的な目標だった「SAF優勝」をくらやみダンスのゴールとして定め、1人じゃできない、5人でやりたいと他のメンバーを口説きました。そして、SAFで優勝できなかったら解散という意気込みでスタートしました。

 稽古は通常だと公演の1カ月くらい前から始めるのですが、SAFに向けて3カ月前から始動しました。メンバーそれぞれの考えや思いが特に強く、作品の方向を定めるのに本当に苦心しました。「面白いこととは何か」「『正解』はどこにあるのか」。僕も器用ではないので、公演のギリギリまで本当に悩みながら、何とか幕を上げました。これまで以上に、俳優やスタッフに支えられた公演だったと思います。

――ゴールに設定していた SAF で優勝した感想を教えてください。

 実際に公演を終えて、頑張ったけど限界があるな、まだまだだなと。SAFに対する思い入れが強過ぎて、気持ちを込め過ぎてしまい、完璧な舞台を目指すあまり、気持ちばかりが先走ってしまったんです。出来としてはとても100点満点とは思えなかったし、そのことがもどかしかったのです。だから、審査結果を聞いたときには素直に「やったー!」という感じにはなれませんでした。それは、優勝の瞬間を1年生のときから想像してきたからかもしれません。確かにこれまでやってきたことが報われて、最優秀賞を取れたことはうれしいし、ぼろぼろになりながらもSAF優勝を目指して一緒にやってきてくれたメンバーを前にほっとしました。でも、学生演劇の頂点に立つことを明確にイメージしていたからこそ、どうしてもたどり着けない「理想」の果てしなさを感じたのです。自分が理想とする舞台を作るためには、まだまだ、しなければならないことがたくさんあるなと思います。

――今後について教えてください

 くらやみダンスとしては、来年3月にSAFの企画として、大阪・東京・福井の3都市ツアー公演を予定しています。

 その後のスケジュールはまだ決まっていません。自分自身としては、もっと研さんを積んでいかないといけないと思っています。もっと、興味のあるものにのめり込みたい。演劇ではいつも、「自分がドキドキするもの」を作りたくて、そのためのインプットの時間が必要だと思うのです。他には、演劇ではない新しい分野にも挑戦してみたいと思っています。卒業後は就職もするつもりでいますし、演劇以外のことにも目を向けて、自分がドキドキするための材料を探していきたいです。

(提供:早稲田ウィークリー

岡本 将大(おかもと・まさひろ)/教育学部 4年

【プロフィール】
 芸名・岡本セキユ(おかもと・せきゆ)。奈良県出身。奈良県立郡山高等学校卒業。くらやみダンスの名前の由来についてよく聞かれるが、実は字面と音の響きで付けた名前とのこと。見た目は意味がありそうで、考えれば考えるほど奇妙な響きが好きだと語る。