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▼スタディ・アブロード―早稲田から世界へ―

From Waseda to Switzerland
早稲田からスイスへ

高岡 佑介/文学研究科 博士後期課程3年

隣り合わせの都会と自然

 高岡さんはドイツ思想・哲学の研究を専門とし、交換留学生としてチューリッヒ大学に1年間留学した。ここは理工系のスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ:1855年設立)とセットになった、スイスを代表する総合大学である。

 スイスというと「牧歌的」なイメージが浮かぶ人は多いはず。しかし、チューリッヒ中央駅に初めて降りたときに高岡さんが抱いた印象は「新宿駅前の往来と雰囲気が似ている」というもの。人でごった返す「都会そのもの」の雰囲気に、それまでの「スイス」観を見事に覆された。それでも「路面電車で15 分ほど郊外へ足を伸ばせば、『スイスらしい』牧歌的な風景を目にすることもできますよ」とのこと。身近に混在する都会と自然を一挙に満喫できる街なのだ。

チューリッヒでの暮らし

 そんなチューリッヒは、日常的にドイツ語・フランス語・イタリア語に触れる機会がある多言語社会でもある。高岡さんが特に苦労したことは、現地で使われるチューリッヒ方言(スイスドイツ語)だという。「スイスドイツ語特有の規則性のゆるい文法や独特なリズムにはとても苦労しました。せっかく街で話しかけてくれる人がいても、満足に会話することができないんです……」。

 しかし、言葉での意思疎通に困難を抱えながらも、高岡さんの目にはチューリッヒの街はつねに魅力的なものとして映っていたようだ。「チューリッヒは交通網が非常によく整備されていて、どこへ行くにも快適でした。特にお気に入りだったのはトラム(路面電車)です。チューリッヒではトラムは、蛇のように動きながら街を巡ることから『コブラ』と呼ばれていて、僕はこれに乗って街の景観を眺め、雰囲気に浸るのが好きでした」。

 高岡さんはチューリッヒを「多面的な街」と言い表す。「散策がてら歩き、トラムに揺られながら風景を眺めていると、街のいろいろな相貌をみることができます。旧市街や教会、河川や丘陵など、〈現在〉の中に〈古さ〉をとどめている場所がある傍らで、イルミネーションに彩られたストリートがあり、そこには多くのブランドショップが立ち並んでいます。『牧歌的な田園風景』『アルプス/ハイジ』といった言葉でイメージされる『自然』の面影を残しながら、同時にどこかテーマパークのような人工的に整備された空間として知覚される、チューリッヒは僕にとってそんな街です」。

もてなしの作法

 留学生活の中でもっとも高岡さんの印象に残ったのは、他人への「もてなしの心」だという。

 「現地では学生、教員、スタッフがとにかくよく人の話を聞いてくれます。『相手を尊重する』ということの意味をあらためて意識させられて、そこから自分も『他者の言葉に耳を傾ける』という作法を身につけたいと思うようになりました」。

 留学を通じて「スイス」に触れた高岡さん。「僕にとって『スイス』はなによりも、そこで出会ったさまざまな友人たちとともに過ごした時間と結びついています。研究も言葉の習得もその中で行われました。その意味で、今はまるでもうひとつ故郷をもったような気持ちです」と、チューリッヒでの体験を話してくれた。

(提供:早稲田ウィークリー