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▼スタディ・アブロード―早稲田から世界へ―

加藤 真理子/国際教養学部4年

From WASEDA to Philippines
WASEDAからフィリピンへ

加藤 真理子/国際教養学部4年

 「なんでわざわざそんな所に行くの?」。出発前、いったい何度こう訊かれたかわからない。しかし今は、「最高の選択だった」と胸を張れる自分がいる。

 私の留学先は「フィリピンの東大」と呼ばれるフィリピン大学……とはいっても最新の設備はなく、校舎も古い。国立のため、さまざまな階層の出身者が机を並べる。しかし彼らこそこの国の未来のリーダーなのだと、身の引き締まる思いだった。

カシグラハンの元気な子どもたち(インターンしていたNGOの奨学生たちと)

 学校から1時間前後のところに「パヤタス」「カシグラハン」というコミュニティがある。近くに巨大なゴミ山があり、多くの人がそれに頼った生活をしている。インターンをしていたNGOの支援先だったため、毎日のように通った。ホスピタリティ溢れるフィリピンの人々だが、はじめの頃の私はよく観察され、試されていた。「どうせ1年で帰っちゃうんでしょ?」「日本人の小娘に何がわかるの?」そんな風に思われているようで辛かったけれど、乗り越えなければ何も始まらない。とにかく足を運んでは、人々の話に耳を傾けた。

 次第に、いつも明るい人たちの「笑顔の裏にあるもの」が、垣間見られるようになっていった。4人の子ども全員が栄養失調という若いお母さん。13人も子どもを産んだうち、8人を病気で亡くしたおばさん。「仕事を失った母さんの代わりに、僕が放課後に働いて20ペソ(約40円)くらい稼ぐんだよ」と話す母子家庭の6年生。

 日常をシェアしてもらえるようになって満たされる反面、こみ上げる葛藤もあった。数十ペソの生活費の話をする人々と関わっているのに、留学生仲間とはスタバで数百ペソのコーヒーを飲む自分もいる……。よく悩み、よく考え、よく語った1年だった。

 生活面では、電気・水・インターネットが突然止まるのは日常茶飯事。先生の遅刻なんてカワイイもので、大雨が降れば授業に来ない。部屋にネズミが出たり、泥棒が入ったり、髪にシラミがわいたり……トラブルの連続だった。正直言って、留学中はフィリピンを「好き」と思える余裕はなかった。

ゴミ山のまわりにつくられた家やジャンク・ショップ(ゴミの換金所)。人々はゴミ山から再利用できるものを集めては換金し、生活している(パヤタスにて)

 しかし、今なら「私はフィリピンが大好きだ」と言える。ゆっくり流れる時間。すぐに歌い踊り出す愉快な人々。たくましく優しく生きる子どもたち。語尾に「ポ」を付けるフィリピン語の響き。オシャレもできない環境のなかで、がむしゃらにがんばっていた頃の自分も好きになった。

 英語をマスターするだけが留学じゃない。ぜひ、あなたにピッタリの「テーマのある留学」に挑戦してみてほしい。1年後、大きく成長した自分にきっと出逢えるはずだから。

(提供:早稲田ウィークリー