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QuonNetがつなぐ世界―早稲田発“学び”のSNS

 早稲田大学は“学び”のためのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「QuonNet(クオンネット)」http://www.quon.asia/を2008年10月21日スタートした。早稲田大学が開設したといっても、参加者は早稲田の学生・教職員に限ったものではなく、一般の学生はもちろん、社会人や企業、自治体、NPOなど、多くの人に開かれたサイトとなっている。内容は「つどう」「まなぶ」「よむ・しる」に大別され、会員はeラーニングシステムを使用して英会話・文章作成・ファシリテーションなどの各種講座を学べるほか、「東京グルメの会」「会議ファシリテーションの実践ノウハウ集」「哲学・社会学勉強会」など参加者オリジナルのコミュニティにも参加可能。専門家によるブログなども充実しており、会員数はすでに1500人を超え、早稲田発の“学びの輪”が大きな広がりをみせ始めている。

「日産V字回復」のノウハウ

東国原宮崎県知事の前で発表。多くの報道関係者が集まり、地元でも大きな関心を呼んだ

 2008年10月の宮崎県庁。早稲田大学OBでもある東国原英夫知事の前で、宮崎県や同県内市町村の若手職員14人が4チームに分かれてプレゼンテーションを行なった。テーマは「宮崎観光のV字回復~恋旅(ラブ・ツーリズム)ブームの創出を目指して~」。共同で仕事をする機会の少ない職員が、職務横断チームとして、空港での観光客インタビューや県内の観光スポット調査など、約2ヶ月間のフィールドワークを行ない、知事に直接、政策を提案するという画期的な試みだった。

 この企画は、早稲田大学が出資する関連会社「早稲田総研インターナショナル」と日産自動車が共同開発した“日産V字回復”のノウハウを結集した研修プログラム「OJTで成果を出す問題解決」を導入して実現したもの。集合研修とインターネットのコミュニケーションツールを併用することで、通常の業務に支障をきたさない仕組みになっている。「QuonNet」の英会話・文章作成・プレゼンテーションなどの各種の人気講座は、こうしたプログラムや、大学の通信教育課程としては驚異的な卒業率を達成している「早稲田大学人間科学部eスクール」などで培ってきたeラーニングの運営ノウハウを基盤に開発されている。

「もっとも活用されているのは、研修講座と各種コミュニティです」と語るのはQuonNetを主宰する早稲田大学社会連携推進室の根本進室長。「QuonNetを実際に企画・運営している早稲田総研インターナショナルは、大学の関連会社として早稲田大学のeラーニングシステムの運営に携わってきました。早稲田のeラーニングには教育コーチがついている。コーチがきちんといてクラスもあるという、集合学習のよさときめの細かい個人指導のよさを取り入れていることが特徴です。その運営ノウハウをSNSの中に取り込んだものがQuonNetです」と話す。

研修講座とコミュニティ

 文章の基本スキルを身につけることに的をしぼったオンライン講座「書く力をつける文章教室」は、人間科学部の向後千春准教授が監修する4週間のプログラム。(1)構想マップからノンストップライティングへ、(2)パラグラフにする、(3)5段落で構成する、(4)ピア・レビューと書き直し―といった4つのステップごとに、ビデオ講義の視聴、課題の提出、添削という流れで進めていく。現在、無料で講習が受けることができ、QuonNet発足20日間で定員に達して募集終了。20人が定員のところへ100人以上の申込があり、社会人や就職活動を控えた学生が多いという。受講生コミュニティも開設されており、講座の中で書いた文章、完成した作品を公開して誰かに読んでもらい、お互い批評しあうこともできる。

多くの経験と専門のトレーニングを積んだ講師が、フィリピンからマンツーマン・レッスンを行う

 ビジネス英語をマンツーマンで学ぶ「オンライン・イングリッシュ【ビジネスコース】」にも200人以上が登録、現在も無料受講者の募集を受け付けている。面接・エッセイなどを通じで選抜した講師陣はフィリピンにおり、社会人が受講しやすいよう平日は19時から、土日は午前中と19時から待機。受講生はビジネスの必要にあわせて学習したい内容を自ら決め、都合の良い時間に講師とマンツーマンの英会話レッスンを受けられる。講座は来年3月から有料化する。英語に関するコミュニティも開設されており、海外からのアクセスもある。「Just English!」は英語で様々なことを語ろうというコミュニティで、月間投稿数は1600件ほど。アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、イギリスなどからアクセスがある。

 また、社会連携推進室が中野区と連携して「人材を育てる経営者の輩出」などをテーマに実施しているセミナー「次世代リーダー育成塾」では、すでにQuonNetを活用。2008年11月から2009年2月まで計4回にわたって行なわれる同セミナーでは、集合研修だけでなく、QuonNetを使った研修のフォローも行なっている。QuonNetで意見交換をし、講師からでた課題に取り組んでコミュニティを形成していくという、eラーニングの方式を応用している。

“Quon”の理想

 スタートしたばかりのQuonNetだが、今後も参加者次第で可能性は大きく広がっていく。現在、2009年1月をめどに準備している企画が創作支援サービスだ。文章、写真、動画などを組み合わせて作品として公開できる機能を持つ。QuonNet事務局では、その可能性を次のように語っている。「例えば、地方の方言は現在話している高齢者がいなくなると、方言そのものが消滅してしまうかもしれません。方言文化を後世に残していくためにも、高齢者が元気なうちに、映像や音として、各地方の方言を全国からアップできる場所をQuonNetに作ることで、貴重なデータベースを構築・保存することになります。みんなでつくっていく文化のデータベースから、新しい表現が生まれていくかもしれません」。

早稲田大学と中野区が連携して行なっているセミナー。QuonNetをうまく活用している

 また、コミュニティを日本にとどめるのではなく、世界に向けて広げるため、「asia」というドメインを取得。海外からのアクセスも増えており、国際的なサイトへの発展も見据えている。現在、アジアを中心に世界から約2800人の留学生が在籍している早稲田大学は、今後、迎え入れる留学生を8000人に増やそうとしている。OB・OGは世界中に羽ばたいていき、国際交流はますます活発になっていく。QuonNet運営に関わる早稲田総研インターナショナルの新川雅之社長は「アジアの大学、アジアの人・団体・企業に、自由に使っていただきたいです。コミュニケーションが活性化すれば、アジアはともに発展し、ひいては世界をよりよく変える力につながっていくでしょう。そんな願いを込めてQuonNetを運営しています」と、その理想を語る。そして、根本室長は次のように締めくくった。「『Quon』は早稲田大学校歌にある『現世を忘れぬ 久遠の理想』に由来しています。名前の通り、現実のなかで日々努力しながら、未来にある真の理想に向かって、弛まず進んでいきたいと思います」。