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森林生態系のCO2吸収量
―年変動は何に左右されるのか?

A tower for measuring CO2 flux in a cool-temperate deciduous broad-leaved forest

 地球温暖化を肌で感じるほどの暑い夏と暖冬が繰り返されている日本。台風の大型化や局地的な集中豪雨、極端な小雨など、温暖化が原因と思われる異常気象も頻発するようになっている。2007年、IPCC(機構変動に関する政府間パネル)は、2100年の平均気温が今よりも1.8~4度C上がるとの予測を発表した。主たる原因は化石燃料の使用による二酸化炭素排出量の増加だが、今や、その削減が国際規模の急務になっている。森林に恵まれた日本では、森林の生態系によってどの程度の二酸化炭素が吸収されうるのかを科学的に把握することが求められている。教育・総合科学学術院の小泉 博教授らは、約10年前から、岐阜県高山市にある岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地内の冷温帯落葉広葉樹林を対象に、二酸化炭素吸収量の年変動を調べはじめた。

 冷温帯落葉広葉樹林は、春に葉を茂らせ、秋に落葉するミズナラやブナなどによる森林。中部や関東以北ではごく普通にみられ、日本の森林面積の約2割を占めるとされている。小泉教授らは、高山試験地内に樹木よりも高い観測タワーを建て、1993年から15年間にわたって、「昼間に大気から森林に吸収される二酸化炭素量」と「夜間に森林から大気に放出される二酸化炭素量」を測定しつづけた。ほかにも、地面から1.3メートルの高さにある幹の直径を測ることで割り出す「幹・枝の生産量」、落ち葉の量を調べることで推定する「葉の生産量」、土壌の呼吸量と森林内植物の根の呼吸量から推定する「分解者呼吸量」などのデータをためていった。

Diagram of CO2 dynamics in the forest

 ただし、一口に二酸化炭素吸収量といっても、さまざまな種類がある(図1)。たとえば、土壌をも含めた森林全体の吸収量はNEPとよばれる。NEPは森林生態系を構成する生物の活動によって、プラスのこともあればマイナスの場合もある。また、森林内の植物(樹木や林床の植物)の吸収量はNPPとよばれる。「1999年以降の8年分のデータを解析したところ、NPPが年によって倍以上変動することや、葉生産量は年変動が比較的小さいこと、逆に幹・枝生産量は年変動が大きいことなどがわかりました」と小泉教授。さらに、「地温の変化から推定される分解者の呼吸量の年変動は小さい」、「幹・枝生産量とNEPには正の相関がある」、「葉生産量および分解者の呼吸量とNEPには相関関係が認められない」といったことも突き止めた。

 「一連の解析から、NEPは年によって大きく変動し、変動の大小には、生産者である植物相の活動の年変動パターンが影響するということがはじめて科学的に理解されました」と総括する小泉教授。生態系の二酸化炭素吸収能が温暖化の低減や予測にどの程度貢献できるかを検討すべく、草原や水田なども視野に入れて研究を続けたいと意欲を燃やす。

文:西村尚子/サイエンスライター
研究者:小泉 博(こいずみ・ひろし)/早稲田大学教育・総合科学学術院教授

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