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しなやかで頑丈な、内径6mmの動脈血管を開発!

Left: Immunohistochemical stain of the engineered artery
Von Willebrand Factor (upper), Calponin (lower)
Right: SEM image of the Engineered Vessels / Luminal surface

 ES細胞やiPS細胞による研究が進み、失われた組織や機能を蘇らせる再生医療への期待が高まっている。細胞培養のレベルでは、拍動する心筋細胞や酸素を運ぶ赤血球といったように、特定の細胞に分化させる技術も開発されているが、複数種の細胞をいかに三次元化し、組織としての機能をもたせるか、といった課題も残っている。高等研究所の岩﨑清隆客員准教授は、動脈血管を構成する3種の細胞と人工の高分子シートを材料に、動脈と同じような層構造、強度、弾性を兼ね備えた組織工学血管を作ることに成功した。

 動脈には約100mmHgもの大きな圧力がかかるため、その血管壁は丈夫で弾性に富んでいる。ところが、高脂血症などによって、壁がかたくもろくなる動脈硬化が起きる。動脈硬化は無症状のうちに進み、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などを誘発するため、予防が社会的な課題にもなっている。

 岩﨑准教授は、学部時代から、人工弁や人工心臓などの開発、その科学的な性能評価法の検討、再生・成長する無細胞化組織の開発などの研究を続けてきた。2003年12月の国際組織工学会への参加が契機となり、今度は組織工学血管の開発に挑戦。人工血管としては合成樹脂などで作られたものが広く実用化されているが、直径が6mm以下の細い血管は血栓ができてしまい、臨床で使えるものはまだない。岩山﨑准教授は、高い圧力に耐え、弾力のある直径6mmの血管を細胞を使って開発することにした。

Left: Hemodynamically-equivalent pulsatile flow-and-pressure bioreactor
Right: Elastic artery engineered in vitro

 まず、ウシの動脈血管から、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞を、採取・培養した(それぞれが、動脈の中膜、内膜、外膜の構成材料となる)。このとき、各細胞をシート状に培養するために、体内で加水分解後に吸収される高分子材料(ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン)からなるシート基盤を用意し、その上に細胞を播くようにした。「平滑筋細胞のシートをシリコン製のチューブに巻いてさらに培養。その外側に、別に培養しておいた線維芽細胞のシートを播いて培養し、内側のシリコンを抜き取る。チューブ状になった構造を自前の装置(拍動循環培養システム)に取り付け、内腔に内皮細胞を注入してさらに培養。その後、生体内の血流・血圧環境を再現した環で、さらに培養。最終的に、直径6mm、長さ4cm、厚さ約0.7mmの動脈血管を作り出せた」と岩﨑客員准教授。この組織工学血管の内腔は内皮細胞で覆われているため、問題とされていた血栓ができる心配はない。

 成功の鍵となった拍動循環培養システムでは、血液のかわりに培養液を流し、その流量や圧力、pH、二酸化炭素濃度を自由に制御できる。岩﨑客員准教授は、流量および圧力を少しずつ上げていき、最終的に成人の内径6mmの動脈血管に相当する値に調節していった。加えて、これまで難しかった弾性成分(エラスチン)を細胞から大量に産生させることにも成功した。「今後は、骨髄細胞やiPS細胞などを材料にし、患者さんの治療に使えるものを作りたい」と意欲をみせる岩﨑准教授。一刻も早い実用化が望まれる。

文:西村尚子/サイエンスライター
研究者:岩﨑 清隆(いわさき・きよたか)/高等研究所准教授

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