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「『スカヴェンジャーズ(漁る人たち)』より―20のデッサンと詩のコレクション―」展

「『スカヴェンジャーズ(漁る人たち)』より―20のデッサンと詩のコレク ション―」展

 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館では、「『スカヴェンジャーズ(漁る人たち)』より―20のデッサンと詩のコレクション―」展を開催している。会場は1階のシェイクスピア室、会期は2月5日まで。演劇博物館では、本年10月19日に画家トム・ドゥ・フレストン氏と詩人キーラン・ミルウッド・ハーグレイヴ氏による演劇講座を行う運びとなり、両氏制作のコレクション「スカヴェンジャーズ(漁る人たち)」に関連する展示物を設置することとなった。その際、コレクションの絵画所蔵している機関、ギャラリー、個人などのご好意により、絵画を完成させるために欠かせなかったデッサン20点を演劇博物館にご寄贈いただいた。コレクションを構成する絵画全てに関するデッサンが演劇博物館に所蔵されることとなる。20点の絵画の中には、クリスティーズなどのオークションハウスで取引されるものも含まれている。
(大木シエキエルチャック絢深/坪内博士記念演劇博物館助手)

 「スカヴェンジャーズ(漁る人たち)」は、もともとハーグレイヴ氏が英国シェイクスピア協会より作品を依頼されたことに始まる。シェイクスピア作品から着想を得た作品を作れないかという申し出に対し、氏はテクストから着想を得て別のテクストを作りだすよりは、絵画を間に入れてみた方が可能性が広がるのではないかという考えに至る。協会に対しドゥ・フレストン氏を共同制作者としてプロジェクトを組むことを提案。計画がまとまると、両氏のコレクションが2011年のケンブリッジ大学シェイクスピア学会にて展示されると同時に、学会のメイン会場にて講演を行うことが決定された。計画を進行していく中で、演出家トレバー・ナン卿やケンブリッジ大学アビゲイル・ロキソン博士の支持を受け、学会ではナン卿とロキソン博士によるコレクションに関するエッセーも用意された。ケンブリッジ大学にて学会が開かれたころ、演劇博物館に制作者2名をお招きして演劇講座としてワークショップを行っていただくことが計画され始める。グレイトブリテン・ササカワ財団の協賛、ブリティッシュ・カウンシルによる後援を賜り、ブリーズ・リトルなど多くのギャラリーや機関、ナン卿、ロキソン博士などの個人のご協力のもと、2名の招聘が決まった。

 「スカヴェンジャーズ(漁る人たち)」制作のプロセスとしては、まずドゥ・フレストン氏がシェイクスピア作品についての自身の解釈を基にして絵画を描く。そして、絵画の題名、背景となる解釈共に伏せられた状態でハーグレイヴ氏が視覚的に伝わってくるものを頼りにテクストを作りだす。ドゥ・フレストン氏の作品を間に据えることで、テクストからテクストへのやりとりに留まらず、テクストから絵画へ、絵画からまたテクストへと、異なる芸術の形の中で変換されていく。このコレクションに寄せて書かれたナン卿のエッセーの中で、この展示の題名の由来について触れられている。それによると、題名はドゥ・フレストン氏の描いた『リア王』最終場から着想を得た、ハーグレイヴ氏の詩から取られている。ときに泥棒カササギと呼ばれるシェイクスピアの劇は、その大部分が他の作家たちが創造したものに対する解釈であり、既存の作品を「漁」って、そこから得られたものを演劇作品の中でも最高の作品へと変換したものである。この共(競)作のプロジェクトは、既存の作品を解釈し、その解釈を基にして全く新しい作品を自由に作りだすものである。

 この度のご寄贈により「『スカヴェンジャーズ(漁る人たち)』より―20のデッサンと詩のコレクション―」展が実現し、シェイクスピア作品を解釈していく過程で作られたデッサンと、後に完成した絵画に着想を得て作られた詩を並べてご覧いただくことのできる展示が開かれることとなった。ナン卿が訴えているように、このコレクションをご覧いただき、その作品世界を経験した人たちにも、その世界を「漁り」、そこから得られる全てを持ち帰ってほしいと願う。

二人の作品の一部

トム・ドゥ・フレストン氏

キーラン・ミルウッド・ハーグレイヴ氏

トム・ドゥ・フレストン氏

【略歴】
レヴァーホルム財団から助成を受けてケンブリッジ大学におけるアーティスト・イン・レジデンスとして、またレヴィー・プルム財団より支援を受けてクライスツ・コレッジのアーティスト・イン・レジデンス、レイス・スクールのアーティスト・イン・レジデンスとして活躍している。ロンドンとケンブリッジにおいて数々の単独展覧会を開催。2011年には、クライスツ・コレッジ礼拝堂設立500年記念として、2つの祭壇画を発表した。その制作過程と作品については、デイリー・テレグラフやファイナンシャル・タイムズなどで紹介され、注目を集めた。その他の活動としては、ケンブリッジ大学での講義、ロンドンのサーチギャラリーなどでワークショップを行っている。テートの館長ニコラス・セロータ卿や演出家トレバー・ナン卿など、彼の作品を支持する著名人が少なくない。

キーラン・ミルウッド・ハーグレイヴ氏

【略歴】
2009年、フォレスト出版『Book of Bedtime Stories』に「Art Lover」が掲載された他、雑誌などで詩や短編小説を発表。2012年3月、スコット北極研究学会の協力の下、ピンドロップ出版より『Last March』が出版された。スコット最後の探検100周年を記念したものである。柔らかな女性らしい言葉を操ることで知られていたが、「スカベンジャーズ」の制作過程において、生々しい言葉、衝撃を与えるような言葉も使用するようになっただけでなく、視覚的に訴える言葉の並びなどにも挑戦する。「『スカヴェンジャーズ(漁る人たち)』より―20のデッサンと詩のコレクション―」展においても、抽象的な形から、魚や頭蓋骨の形など明確な形を持つものなど様々な実験的試みがなされている。

関連リンク

Finding Shakespeare』展

Finding Shakespeare展に寄せて