早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

YOMIURI ONLINE

ホーム > ニュース > 早稲田の法科大学院で学修する意味(上)

ニュース

新司法試験 合格者座談会

早稲田の法科大学院で学修する意味(上)

 「東京専門学校法律学科」の創立以来、125年以上にわたり優れた法曹を輩出してきた早稲田大学。その伝統と実績を礎に2004年に開設した早稲田大学大学院法務研究科(法科大学院)からは、すでに多くの修了生が法曹界に羽ばたいていきました。優れた実務家養成をめざすため、早稲田が誇る多様性と総合性、進取の精神をもって「挑戦する法曹」の育成を行っている早稲田大学大学院法務研究科。今回は2008年11月から司法修習生として確かな一歩を踏み出した修了生4名に集まっていただき、早稲田での学びの魅力、勉強法や心構えなどについて語り合っていただきました。

(※年齢は座談会開催時)

司会進行
 

古谷 修一 教授(国際法担当)

 

秋山 靖浩 准教授(民事法担当)

出演者
 

市村 拓斗さん(26)

早稲田大学法学部卒。新卒で入学。

 

川見 友康さん(30)

早稲田大学政治経済学部卒。証券会社に勤務した後、法務研究科に入学。法律初学者。

 

林 絵理さん(26)

一橋大学法学部卒。新卒で入学。

 

原 優子さん(31)

東京大学法学部卒。保険会社に勤務後、法務研究科に入学。法学既修認定者。法務研究科在学中に交換留学を経験し、ニューヨーク州司法試験に合格。

双方向・多方向で学ぶソクラテスメソッド
秋山

本日は早稲田大学大学院法務研究科(法科大学院)を修了され、平成20年新司法試験に合格された4名の方々にお越しいただきました。皆さん異なったバックグラウンドを持っておりますが、それぞれの立場から早稲田大学大学院法務研究科での学修や学生生活、新司法試験を受験した感想についてお話を伺いたいと思います。それでは、自己紹介と、法曹になるために早稲田を選んだ理由からお願いします。

市村

早稲田大学法学部から新卒で入学しました。法曹を志したのは、環境問題に取り組んでいた両親の影響で、学部時代は様々な紛争現場に足を運ぶ等の活動をしていました。法曹における環境の専門家を目指しています。早稲田を選んだ理由は、学部時代から自由な校風が気に入っていたのと、環境法の第一人者である大塚直教授の存在が大きなポイントでした。

私は一橋大学法学部から新卒で入学しました。私は弁護士志望で、法律家の少ない地方で活躍したいという想いがあり、そのためのカリキュラムが豊富にあったこと、3年コースでじっくりと勉強したいと思ったことが早稲田を選んだ理由です。

私は東京大学法学部を卒業し、保険会社に勤務した後、法学既修者認定を受けて入学しました。早稲田は3年間での学修が基本ですが、入試の最終合格後に行われる法学既修者認定試験で法学既修者認定を受けると1年次の必修科目が免除されるので、2年間での修了が可能です。しかし、1年間アメリカのペンシルバニア大学のロースクールに交換留学をしたかったので、結果として3年間在学することを選びました。早稲田を選んだ理由は、交換留学制度が充実していたことと、学びたいと思っていた金融関係のカリキュラムが豊富だったことが決め手です。

川見

早稲田大学の政治経済学部を卒業し、証券会社に勤めた後、入学しました。私は金融商取引法に興味があり、その分野で著名な黒沼悦郎先生が教授としていらっしゃったのがきっかけです。

秋山

入学したての頃は、いままでとは異なる授業形式に驚かれる声もよく聞きます。授業の印象はどのようなものでしたか? 社会人経験を経て、初めて法律を学ぶ川見さん、いかがでしょう。

川見

最初の授業は民法でしたが、難しくてついていくのに必死だった、いうのが入学当初の印象です。先生と学生が議論を重ね、双方向で授業を進める、いわゆるソクラテスメソッド(※)という授業形態に戸惑いました。そこで繰り広げられる法律の考え方や議論のやり方に慣れるまでが大変でした。

市村

私も初めのうちはソクラテスメソッドに戸惑いましたが、慣れてくると、自分の意見を積極的に発信できる点は面白いと感じるようになりました。

法務研究科での授業全般に言えることですが、先生の質問や、そこで交わされる議論が高度で、初めのうちは求められるものの質の高さと自分のいたらなさのギャップを痛感しました。十分な予習をして授業に臨むのが大前提で、得た知識の確認を授業で行うというのが大切だと思います。

法学部出身なので、ある程度法律をわかったつもりではありましたが、法科大学院ではレベルが随分違い、学部の時とはまた違った、より深い勉強が必要だと実感しました。

社会人経験者と互いに刺激を受け、切磋琢磨できる環境
古谷

早稲田の特徴のひとつは、同じクラスに出身の異なる人たちが集い、法律を学んできた人も法律を学んでこなかった方も一緒になって学修をしていることです。こういった異なる立場同士で学ぶメリットはどう感じられましたか?また苦労した点はありましたか?

市村

社会人経験者や他学部出身の方と一緒に勉強できたのはとても新鮮な体験でした。法律を学んできた人との間では、法律に関してはある程度前提知識の共有があるのですが、初めて法律を学ぶ人と話をすると、その前提知識が覆され、改めて気づかされたり理解が深まることが多く、とても勉強になりました。

川見

一方初学者の私は法学の基礎を学んでいなかったこともあり、始めのうちはなかなか授業についていけなかったのが苦労した点です。法学部出身者の議論を聞いているのは、空の上で戦っているのを見上げている気分でした。逆に彼らの存在がメリットにもなりました。自分もその中に入ってやろうと奮起し、刺激される仲間がいたのが一番のメリットです。

確かに社会人を経て入学された方は気合いが違います。それに負けないようにしようと刺激されました。社会人経験のある方は、実務でどのように法律が使われているかつかみやすいので、その部分のイメージを教えてもらいながら自分の理論を組み立てていくことができました。

秋山

学部から入学してきた人にとっては、社会人の持っている視点が大きな刺激になるようですね。原さん川見さん、社会人を経験された上での感想はいかがでしょうか?

学部時代に勉強していた法律が実社会に出るとどう活用されるかわかると、法科大学院での勉強が理解しやすいですね。学んだことを社会と結びつけて考えられるようになるのがメリットです。

川見

特に会社法などは、新卒で法科大学院に入られた方はイメージがわきにくいようで、よくアドバイスを求められました。また、メリハリのある効率的な時間の使い方は、社会人としての経験から学んだことが大きかったと思います。

秋山

それぞれの立場に苦労はあったとしても、お互いに刺激しあい、フォローしあうことで得られる学習上のメリットは大きいでしょう。それでは具体的な授業内容について、印象的な授業や、自身の学修にとって意義深かった授業などにはどんなものがありますか?

川見

例えば民事訴訟法の授業では、先生がどのようなレベルの生徒にも対応できる具体的なレジュメを作られていて、自分の学修にとって大変役に立った授業の一つです。他にも、夏休みなどを利用して法律事務所や企業の法務部、官公庁等に実習に行くエクスターンシップでは、多くの実務的な経験や出会いがあり大変意義深いものとなりました。

市村

一番印象に残っているのは、生きた法曹教育を学ぶリーガルクリニックです。これは弁護士の指導のもと、実際に依頼者からの法律相談を受けるという実務を学べる科目です。私は行政法に関心が高かったので行政法クリニックを履修し、相談を受けるほか控訴理由書等の書面等を起案しました。川見さんのおっしゃったエクスターンシップもそうですが、こういったカリキュラム(臨床法学教育)を通じて実践的なスキルを養えるほか、現実の弁護士の業務を垣間見て、勉強に対するモチベーションもあがりました。

実践的な授業という面では、3年次に民事の模擬裁判を受講したのが印象的でした。ディスカッションや法文書の作成を通して、生きた法律を自分たちで展開していく充実感や、法律家として、問題となっている事柄を自ら表現し、解決していくことの重要性を実感できたのが模擬裁判の授業でした。

私は興味のある分野の専門性を深めるためにも、国際法に関る先端的な科目を多く取りました。また留学を視野に入れていたので、ネイティブの先生による英米法の授業も受講しました。早稲田は自分の志望にあわせてバラエティーに富んだ科目を履修できるのが印象的でしたし、実際役に立ちました。

積極的に1日を過ごす
秋山

法務研究科に入学すると、かなりの量の学習が要求されます。普段の授業の準備などもあわせて色々と苦労されたこともあるかと思いますが、皆さんの一日の過ごし方はどうでしたか。どのくらい勉強していたのでしょうか。

川見

法律初学者なので予習が本当に大変でした。初めのうちは毎日予習に追われていました。社会人時代は朝が早く、7時には出社していたので、その習慣を3年間続けようと、朝5時に起きて7時には学校にいました。家が遠いので、夜は10時に帰路につきました。

受け身でいると乗り遅れると思い、積極的に授業に臨みました。十分に予習し、インプットした知識を確認して正しく理解する場所として授業を活用しました。1年次は、各法律の基本体系をみっちりと学ぶチャンスです。ハードではありますが、基礎をしっかりと身につけておくことが大切だと思います。 普段の生活は、授業が終わってからは、毎日、自習室で夜12時ぐらいまで勉強していました。

市村

私は初年度、学部時代からお世話になっている弁護士の方のところでアルバイトをしていました。法務研究科の授業終了後は直ちにアルバイト先に行き、アルバイト終了後予習、復習をやるという毎日で、学習との両立はかなりハードで後悔しました。1年次は特に基礎を固めるために非常に重要な時期であり、法務研究科での勉強のみに打ち込む事が大切ですので、全くお勧めはできません。

毎日の予習・復習で終わることもままあります。その勢いのまま、司法試験の前はずっと机に向かっていました。

秋山

皆さん、予習に力を入れて授業にのぞまれ、かなり勉強されたようですね。林さんのおっしゃられた「基礎が大切」という点と「積極的に授業に臨む」という点は、法律初学者の方は特におさえておいた方がいいでしょう。

※ソクラテスメソッド=教授と学生の対話を通して進められる双方向の授業形態。

早稲田の法科大学院で学修する意味(下)へ