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北川 正恭(きたがわ・まさやす) 早稲田大学大学院公共経営研究科教授・早稲田大学マニフェスト研究所所長 略歴はこちらから

日本を洗濯(選択)する総選挙を
―マニフェストが歴史を変える―

北川 正恭/早稲田大学大学院公共経営研究科教授・早稲田大学マニフェスト研究所所長

 国権の最高機関、衆議院の選挙が久しぶりに行なわれる。安倍・福田両内閣は国民の審判を仰いでいない内閣で、自民党内の政権交代にすぎなかった。国民の信任を得ていなかったため、途中で投げ出さなければならなかったほど執行権が弱かった。民主主義は選挙で過半数を得た、民意が与えた権力があってこそ執行権を得る。このことを見事に2人が証明した。麻生・自民党総裁も小沢・民主党代表も太田・公明党代表も党員に選ばれた代表にすぎず、国民が選んだ代表ではない。来たる総選挙は、政策のプライオリティで選ぶ、歴史に残る「マニフェストによる政権選択選挙」になるだろう。

マニフェストは標準装備

 私は選挙を従来の“お願い・情実”の選挙から、“約束”の選挙に変えるという運動を続けてきた。「私を選んでくれたら、あなたの業界・団体にこのような利益をもたらしますよ」といった利益誘導型の選挙、地盤・鞄・看板で決まる選挙が当たり前であり、選挙とはそういうものなのだという意識、ドミナント・ロジックは、有権者の間にもあった。地縁・血縁や地盤・鞄・看板ではなく、政策で選ぶというマニフェスト運動を提唱して5カ年が経過したが、その間に、総選挙2回、参議院選挙2回、統一地方選2回を経験した。いまやマニフェストは選挙のオプションではなく標準装備になり、すでに一般用語化した。

 マニフェストは従来の選挙公約よりも明確な数値目標や財源が書かれていたり、有権者にはつらい苦い薬も盛り込まれている。したがって、選挙後に検証可能なものである。現在では、書こうか書くまいかではなく、書かなければならないというものになった。

 早稲田大学マニフェスト研究所はこれまで、様々な選挙アンケート調査をしてきた。政党・候補者を選んだ理由を問うと、どのアンケートでも1位はマニフェストと答える人が多くなった。候補者や各政党にとって経済的合理性を持つようになったのだ。マニフェストは都市部だから通用するが、郡部では地縁や血縁が主流という意見もある。しかし、どのアンケートを見ても都市部より郡部のほうが、選ぶ確率は1ポイントほど高い。昨年の参議院選挙で、自民党が地方の1人区で6勝23敗となったのは必然の流れであった。

あいまいな約束は許されない

 総選挙では従来のあいまいな約束は許されない。世界をみると、アメリカの一極支配が衰退し始めている。現在は、そのような文明史的な転換点にあり、世界の秩序をどう守っていくかという大命題もある。経済では、世界を代表する企業が破綻し、金融体制が崩れてきた。国内を見渡せば、少子高齢化で人口減少社会になっていく中で、100年安心の年金医療体制などというものは誰が考えても維持できない。安全保障についても、わが国、アジア、世界の安全をどう守っていくのかという課題がある。環境問題においても、もはや環境に配慮しない経済はありえない。環境と経済を同軸上にしていくという国の方向を明確にできるのかどうかが問われている。将来を安心して任せられるデザインを鮮明に描き、その実行体制を示していかなければならないだろう。

 ところが、税のあり方を示すことを与野党ともに逃げている。政策については話しても、財源については口を濁す。ここも明確に政策実現の工程表をつけて、どう実行していくかということがマニフェストに書かれないといけない。あの政策を通すためには、この政策は取りやめる。あの政策を推進するためには税金をとるなど、苦い薬も明らかにしておかなければならない。国民はつらくても具体的なことが盛り込まれた責任あるマニフェストを掲げた政党・候補者を必ず選ぶ。日本はもう後が残されていない。あいまいなことは許されないという気概を政党や政治家が持たなければならない。

「日本を今一度せんたくいたし申候」

 幕末の志士、坂本龍馬は「日本を今一度せんたくいたし申候」という高揚感あふれる書簡を、姉宛に書いている。近代国家を作るために、幕藩体制を丸洗いし、明治政府を作らなければならないという時代背景で書いた書簡だ。私が代表を務め、各界有志や地方自治体の首長らで組織する「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」(略称:せんたく)の名前の由来ともなっている。

 9月28日には、“地域・生活者起点”で日本を変革するための決意と指針を8項目にとりまとめた「せんたく八策」(http://www.secj.jp/pdf/080928-1.pdf)を策定し、323人の地方自治体の首長、議員の署名を得て、賛同者一同による緊急記者発表を行なった。8項目の1つでは、あらゆる癒着を排除し、利益誘導的な政治家の口利き斡旋を禁止する決意表明をしている。口利きがあった場合は全て文書化して記録し、情報の全面公開をする。ところが、口利きをするのが議員の仕事だと、有権者自身も思っている側面がある。議員も反省しなければならないが、有権者も反省してもらわなければならない。来たる総選挙では地縁・血縁や地盤・鞄・看板、候補者名の連呼中心であった選挙のイメージが変え、新しいバージョンの選挙、平成の民権運動を起こしたいと思う。マニフェストをよく読んで投票するという、日本の歴史上始まって以来、初となる民意による政権選択選挙にするべきである。構造的に日本をどうしていくのかという未来のあり方が問われる、大変な選挙になるだろう。

北川正恭オフィシャルウェブサイト http://www.office-kitagawa.jp/
早稲田大学マニフェスト研究所 http://www.maniken.jp/

北川 正恭(きたがわ・まさやす)/早稲田大学大学院公共経営研究科教授・早稲田大学マニフェスト研究所所長

【略歴】

1983年12月:衆議院議員当選(4期連続)
1995年4月:三重県知事当選(2期連続)
2003年4月:早稲田大学大学院公共経営研究科教授就任
2003年7月:「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)代表
2008年3月:「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合(略称:せんたく)を立ち上げ、代表就任

【主著】

・生活者起点の「行政革命」(ぎょうせい)
・マニフェスト革命~自立した地方政府をつくるために~(ぎょうせい)
・マニフェスト進化論(生産性出版)