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河野 貴美子(こうの・きみこ) 早稲田大学文学学術院教授 略歴はこちらから

日本学研究の新たな潮流を生みだす
――文学研究科国際日本学コース(Global-J)開設

河野 貴美子/早稲田大学文学学術院教授
2018.3.5

 早稲田大学大学院文学研究科では、2018年9月21日より「国際日本学コース(Global Japanese Literary and Cultural Studies, 略称Global-J )」(博士後期課程)を新設します。文学や歴史、哲学や芸術など、日本文化の学問領域において、早稲田大学はこれまでも日本そして世界の研究をリードしてきました。「人文学の危機」ということがしばしば叫ばれる昨今、これをむしろ画期とすべく、新たな未来の人文学のあり方が盛んに模索されていますが、その方向は学際化と国際化という大きな二つの流れにあります。このたび新設される国際日本学コースは、スーパーグローバル大学創成支援「Waseda Ocean 構想」のもと、学問の真のグローバル化を目標に掲げる国際日本学拠点の活動の一環として、日本学の研究および教育における新たな潮流を作りだし、実現していこうとするものです。

World Academia Alliance in Global Japanese Studies 国際日本学研究網

 これまで、日本の文学や文化を理解し究めるものとしては、日本における日本語による研究が当然のごとく主流とみなされてきました。海外における日本文学や日本文化の研究も、近代以降行われてはきましたが、一部の著名な学者の研究を除くと、外国語による研究成果が日本に波及することは決して多くはありませんでした。言葉の壁は逆もまたしかりで、日本の研究者が外国語で直接自身の学説を発信することや、あるいは日本語で書かれた研究書の翻訳も必ずしも多くは行われてきませんでした。また、海外における日本研究は、日本を理解して「くれる」貴重な「味方」であるとの価値は認められても、それらが日本における日本研究と有機的に結びつき、新たな対話や協同の成果に展開していくことは稀でした。

 しかし近年、こうした従来の学界の状況は劇的に変化しつつあります。研究者の往来は増え、海外の学者を相互に招聘して開催される数多の国際学会やシンポジウム等は、世界の日本学研究者をつなぐプラットホームとして重要な機能を果たすようになりました。また、海外から日本に留学し、あるいは日本から海外に留学し、複数の環境で日本学を学んだ学生たちは、海外の研究の方法や理論と日本における日本研究の伝統の双方に習熟し、日本学の魅力と可能性を新たに発見し提言する原動力となっています。

International Symposium “Rethinking Authorship in East Asia and Europe” (2017年3月、於コロンビア大学)

“狂言の夕べ in Los Angeles”における狂言講座(2017年5月)

 そうした動向に先んじて、文学研究科では2008年度よりコロンビア大学との間で日本文学のダブルディグリープログラムを実施してきました。また2014年度からは柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト(The Tadashi Yanai Initiative for Globalizing Japanese Humanities)により、UCLAとの相互の教員派遣・学生派遣等の連携事業を展開してきました。このたびの国際日本学コース開設は、こうした北米有力大学との協力体制のもとに構想されたものです。

 国際日本学コースでは、日本語と英語によるハイブリッドな教育と研究を行い、日本における日本学研究の伝統と蓄積のうえに立ち、文学、歴史、演劇などにわたる日本学の研究成果を日英両言語で世界に発信できる人材を育てます。それを実現する指導体制として、海外の有力大学に本属を有する教員をJA(ジョイントアポイントメント)制度などにより招き、Waseda Vision 150により海外から新たに採用した教員、そして現有教員とが共同し一体となって研究指導や授業を行います。また、国際的な舞台で日本学の研究と教育に貢献しうる即戦力を養うべく、国際日本学コースでは日英両言語によるコースワークを必修科目とするほか、コロンビア大学とのダブルディグリープログラムやUCLAへの留学を含むカリキュラムを用意しています。そして、国際日本学コースの研究・教育活動は、早稲田大学総合人文科学研究センターに設置されている角田柳作記念国際日本学研究所(Ryusaku Tsunoda Center of Japanese Culture)もサポートし、その成果の発信を積極的に推進していきます。現在、国内外において、英語で日本学を教授できる教員の需要はにわかに高まっています。国際日本学コースは、そうしたニーズに応じて、将来の日本学の研究・教育を牽引する人材を養成していくことを目指します。

International Workshop "Japanese Theater, Publishing Culture, and Authorship" のポスター(2018年3月、於コロンビア大学)

 文学学術院では、国際日本学コース開設に先駆けて、2017年度より文化構想学部に英語学位プログラム Global Studies in Japanese Cultures Program(JCulP:国際日本文化論プログラム)を開設しました。また国際日本学コースでは2021年度までに修士課程も開設する予定です。従来の早稲田における日本学研究のハードとソフト両面の資源に加え、海外の大学や研究者との協同と連携により、相互の作用や化学反応、そして新たな旋風を巻き起こす、国際日本学の挑戦は今後も加速を続けます。

河野 貴美子(こうの・きみこ)/早稲田大学文学学術院教授

専門は和漢比較文学、和漢古文献研究。1987年早稲田大学第一文学部卒。2004年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。早稲田大学文学学術院専任講師、准教授を経て、2012年より現職。著書に『日本霊異記と中国の伝承』(勉誠社、1996年)、共編著に『日本「文」学史 第一冊 A New History of Japanese "Letterature" Vol.1 「文」の環境――「文学」以前』(勉誠出版、2015年)などがある。