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鎌田 清一郎(かまた・せいいちろう)早稲田大学理工学術院教授 略歴はこちらから

ブック・リーダ・ロボ「二宮くん」誕生
―子供たちに心込めて読み聞かせ

鎌田 清一郎/早稲田大学理工学術院教授

 早稲田大学情報生産システム研究センターは、読み聞かせブック・リーダ・ロボット「二宮くん」(にのみや・くん)=ワセダムービー参照=の公開デモを、2009年6月11日第49回 西日本総合機械展ロボット産業マッチングフェアIN北九州にて行いました。これが、「二宮くん」の初舞台でした。「二宮くん」は、機械的な音声ではなく、子供のように、あるいはソフトに優しく、などの感情を入れて人に本を読み聞かせてあげたいという想いから生まれました。「二宮くん」の実力はまだ小学校低学年のため感情は豊かではありませんが、図書館での子供達や介護施設でのお年寄り、視覚障害のある方々への読み聞かせの実現を目指しています。

薪の代わりにPC 「二宮金次郎」をイメージ

公開デモでお披露目された「二宮くん」

 話は変わりますが、これまでの1年半の研究開発に対して、もっとも難しかったのが ネーミングです。二宮金次郎をイメージしてデザインを考え、薪のかわりにパソコンを背負うというコンセプトは早い時期にできたのですが、名前がなかなか決まらなかったのです。例えば、「金ちゃん」、「次郎君」、「ジロー君」などなど、いろいろな案がでました。少し焦りましたが、結局、その名のとおり、「二宮くん」と命名したのは展示会の1ヶ月前でした。したがって、展示会のパンフレットには名前が載せられませんでした。

カメラで文字認識、音声合成

 「二宮くん」には大きく分けて文字認識機能と音声合成機能が備わっています。目に搭載されたディジタルカメラから1ページの画像全体を読みとり、次に各文字を文字認識します。数種類のフォントの違いにも対応できるようになっていますが、残念ながら手書き文字は認識できません。文字認識部の出力はテキストデータです。これをTEXT-TO-SPEECHで音声合成し、ロボット下部に搭載されているスピーカから声として出力します。現在、ひらがな、カタカナ、漢字、記号の2,300字種を登録していますが、今後さらに増やす予定です。また、スキャナではなく、ディジタルカメラを使っているため、照明の影響や本の文字サイズの影響を受けやすいのが大きな弱点です。今後、この弱点を克服し、認識性能をさらに向上させる予定です。また、音声合成する能力は、文字ごとの音声出力で、文脈全体を理解した感情の表現はまだまだこれからです。

海外連携プロジェクトで成果

報道関係者に説明する鎌田教授

 今回の研究開発は、海外連携プロジェクトであり、上海交通大学趙群飛教授、朱杰教授、北九州工業高等専門学校山内幸治准教授との共同研究です。この海外連携プロジェクトは、2007年10月31日(水)に締結された北九州市・財団法人 北九州産業学術推進機構〔FAIS〕・上海交通大学の3者間「科学技術・人材交流促進等に関する協定」に基づいて実現しました。この協定で上海交通大学は、早稲田大学 情報生産システム研究センターに北九州研究室を開設、海外連携プロジェクトがスタートしました。また、文部科学省が実施する知的クラスター創成事業(第II期)の「高速パターンマッチング回路の合成とその応用に関する研究開発」とも連携しています。ブック・リーダ・ロボット本体のデザインは、早稲田大学と上海交通大学でそれぞれ独自に設計することとしたため、まったく異なるものとなっています。また、上海交通大学におけるロボットは、中国語と英語に対応しています。

2、3年後の実用化視野

 私は、約25年前に日本電気株式会社中央研究所において研究員として文字認識の研究を始めてから早稲田大学理工学術院大学院情報生産システム研究科の現在まで、画像処理やパターン認識の研究開発に従事しています。研究テーマとしては、基礎から応用まで、できるだけ世の中の役に立つようなものを選んでいます。ここ十数年は、解析学の基礎に出てくる「空間充填曲線」という非常に可能性のある曲線に着目しています。その特徴を利用した画像処理アルゴリズムを開発し、遠隔監視システムなどに応用しています。「二宮くん」は、できるだけ早い時期に世の中で活躍できるよう、2,3年後の実用化を視野に研究開発を行っていく予定です。

鎌田 清一郎(かまた・せいいちろう)/早稲田大学理工学術院教授

1983 九州工業大学工学部卒業、1985 九州大学大学院総合理工学研究科修士課程修了、同年 日本電気株式会社中央研究所、1988 九州工業大学工学部電気工学科助手、1996 九州大学大学院システム情報科学研究科助教授、2001年早稲田大学理工学総合研究センター客員教授、2003 早稲田大学大学院情報生産システム研究科教授、2009年早稲田大学理工学術院大学院情報生産システム研究科教授
著書:画像処理-画像表現・圧縮・フラクタル-、サイエンス社、2003
訳書:空間充填曲線とフラクタル、H.Sagan 原著、シュプリンガー・フェアラーク東京、1998