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小松 睦美(こまつ・むつみ)早稲田大学高等研究所助教 略歴はこちらから

流れ星の科学
-彗星ダストから太陽系の誕生を探る-

小松 睦美/早稲田大学高等研究所助教

 今年2月にロシアのチェリャビンスク州に隕石が落下し、世界中で話題となったことは多くの方の記憶に新しいだろう。隕石衝突といえば、恐竜の大量絶滅の原因としての可能性や、数々のパニック映画が作られるなど、地球上の生物を危険に晒す恐ろしい現象として受け入れられている。しかし、隕石衝突、すなわち流れ星は、本当に危険なだけの存在なのだろうか? 

彗星か隕石か?

 流れ星の正体は、太陽系を漂う小さな物質である。これらが地球の大気圏に取り込まれ発光すると、流れ星として観測される。流れ星は主に、彗星起源のものと、小惑星を起源とする物質に分けられる。彗星起源の物質は数mm以下の粒子で、それより大きく溶け残った物質を隕石と呼び、多くは小惑星を起源とする。

 では、彗星と隕石の違いは何であろうか。彗星は、冥王星よりもずっと外側のカイパーベルトやオールトの雲からやってくる天体である。それゆえ彗星を構成する物質は、低温で作られる物質と氷であろうと信じられていた。一方で隕石は、火星と木星の間の小惑星帯を起源とし、高温で形成される物質から成り立っており、彗星と小惑星はまったく別の天体だと考えられていた。

 しかし、この常識は彗星ダスト分析によって大きく覆された。2006年に、NASAのスターダスト探査機がヴィルト第2彗星のコマから噴出した粒子を採取し、初の彗星ダストのサンプルリターンに成功した(図1)。彗星ダストには、予想に反して、高温(>1300℃)で形成される鉱物が含まれていたのである。彗星の故郷である太陽系外縁部では、このような高温の鉱物は形成されないことから、これらの高温起源物質は太陽に近い場所で作られた後、何らかの機構を経て、彗星の故郷である太陽系外縁部まで運ばれたと考えられる。つまり太陽系初期には、現在からは想像もできない程の大規模な物質循環があったことが明らかになった。さらに、彗星と小惑星は、氷や揮発性元素の量比に違いはあるものの、どちらも共通の物質から成り立つということが示唆されている。筆者らは、彗星ダストの分析から太陽系形成時のより詳しい物理条件を明らかにすべく研究を行っているところである(図2)。

図1.スターダスト探査機のイメージ図(左)と実際の粒子。探査機上部のテニスラケット状のキャプチャーで彗星ダストを採取。シリカエアロジェルタイルに捕獲された粒子は、一粒ずつ切り出され研究者に配分される。(画像:NASA)

図2.彗星の粒子の電子顕微鏡写真。右図はマグネシウム・鉄・クロムの元素の合成マップ。マグネシウムに富むカンラン石(と、鉄とクロムに富むクロマイトという鉱物が共存している。化学組成・同位体組成から、約45.6億年前に形成されたと考えられる。1μmは1000分の1mm。

生命のゆりかご「流れ星」

 彗星は太陽に近づくたび、彗星ダストを放出し、そのダストは彗星と似た軌道を周回するようになる。こうしてできた彗星ダストの帯に地球が接近すると、大量のチリが地球の大気に衝突して、流星群となる。

 最近の研究により、彗星ダストや隕石、また宇宙空間を漂う宇宙塵には、様々な種類の有機物が含まれることが分かってきた。これらの物質は、太陽系が生まれて間もなく作り出されたと考えられている。太陽系の初期において、流れ星の一部は高温を経験しないまま地球に到達し、まだ生命の無い地球に有機物を降り注いだと考えられている。これらが初期生命に繋がったかも知れない。

生命の起源を探しに

 2014年には、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星1999JU3へ向けて旅立つ。1999JU3は、C型小惑星という、有機物や水を含む可能性の高い小惑星である。小惑星の表面を分析し、サンプルリターンに成功すれば、初期太陽系での惑星の形成過程や、有機物を含めた太陽系物質の進化についてのさらなる解明の手掛かりとなるに違いない。

 また、彗星と小惑星の中間的特徴を持つ活動的小惑星(あるいは枯渇彗星)も興味深い。ふたご座流星群の母天体である小惑星フェイトンは、揮発成分を使い果たした枯渇彗星核だと見られており、表面物質について詳しい分析を行う探査が計画されている。このような物質は、太陽系での小惑星及び彗星の進化に多くの情報を持つと考えられ、探査の実現が待たれる。

図3.はやぶさ2探査機イメージ図。はやぶさ2探査機は、はやぶさ初号機とは異なる、より始原的な小惑星の探査及びサンプルリターンを行う予定である。(画像:JAXA)

2013年は彗星の当たり年

 毎年8月中旬には三大流星群の一つである、ペルセウス座流星群が極大を迎える。2013年は、月齢条件や極大時刻など、日本ではここ数年で最高の条件といわれている。さらに、今年の11月には史上最大の彗星と呼び声の高い、アイソン彗星が姿を現すと予想されている。アイソン彗星は、太陽の中心から約190万kmまで大接近するため、近日点(彗星が太陽に最も近づく点)付近では、満月を凌ぐ程の明るさになると期待されている。

 夜空に輝く流れ星。それは地球の生命にとって危険を及ぼす存在でもあるが、同時に地球の生命の進化の鍵を握っているかも知れない。そんな思いで夜空を見上げてみてはいかがだろうか。

小松 睦美(こまつ・むつみ)/早稲田大学高等研究所助教

【略歴】
早稲田大学教育学部理学科地学専修卒業。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。博士(理学)。NASAジョンソン宇宙センター夏期研修生、ハワイ大学地球物理惑星科学研究所客員研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、2011年より現職。