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堀口 健治(ほりぐち.けんじ)早稲田大学政治経済学術院教授/W-BRIDGEプロジェクト代表 略歴はこちらから

CO 25%削減時代に向けて―“W-BRIDGE”が目指す環境保全

堀口 健治/早稲田大学政治経済学術院教授/W-BRIDGEプロジェクト代表

 株式会社ブリヂストンと早稲田大学の連携協定に依る、新しいコンセプトに基づいた地球環境問題に対応するプロジェクトがスタートしておよそ1年間が経過した。

 この間、われわれの予想を超えるスピードで事態は進行している。すなわち、鳩山新政権が、2020年までの中期削減目標で「1990年比25%減」を世界に宣言したこと、また、生物多様性に対する意識が急速に高まり、地球温暖化対策とのバランスが問われるようになったことなどである。

ポイントは産-学―市民の連携

 こうした問題には、革新的な技術開発や新たな制度設計が当然重要であり、大学もこの分野で貢献することが強く求められていることは言うまでもない。今年の11月28日早稲田大学大隈小講堂で行われる予定の「W-BRIDGE1周年記念シンポジウム」で基調講演をお願いしており、ともにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の主要メンバーである西岡秀三氏(国立環境研究所特別客員研究員)、三村信男氏(茨城大学副学長)がともに強く強調されているのは、「技術や制度だけでは、温暖化への対応は困難。市民、企業に根ざした取り組みが必要不可欠だ」ということである。まさに、われわれのプロジェクトが目指す、産-学―市民の架け橋、連携がカギであるということだ。

 また、独立行政法人科学技術振興機構で「地域に根ざした脱温暖化と環境共生プロジェクト」の領域総括をつとめる堀尾正靭氏(本学教授、W-BRIDGEプロジェクト代表代行)は、「今、『社会技術』の重要性が認識されつつある。市民目線に立った地域に根ざした温暖化対策と『適正』技術の体系化が必要不可欠」と語っている。

 こうした問題意識のもと、われわれのプロジェクトはいずれも縦割りの専門分野ではなく、環境問題に、いろいろな角度から双方向の橋を架けるという新しいアプローチで領域が構成されている。
その領域とは

1)地球温暖化対策と生物多様性保全のバランスを考える領域(地球規模の多様な環境問題解決の架け橋:持続的な人間活動と環境保全にかかわる人々の共通の理解と連帯の形成)

2)人々の生活と環境保全活動のバランスを考える領域(いかしつつ守る環境活動者のグローバルな架け橋:持続的な人間活動と環境保全活動にかかわる人々の共通の理解と連帯の形成)

3)次世代からの視点で目標を定め、効果的で効率的な環境改善手法を考える領域(たしかな未来へのたしかな架け橋:中長期目標設計とバックキャスティング手法によるアクション設計)

4)環境に関する情報を世界へ効果的に発信し、コミュニケ―ションする手法を考える領域(地域と世界を生き生きとつなぐ環境情報の架け橋:環境情報の世界発信を通じた日本および各地域の共時的精神空間の形成)の4つである。現在、継続6件、新規6件の計12件の研究・活動が進行中である。(既に成果を挙げ事業終了したものは4件)

企業の立場、大学の立場、市民の立場から

 本プロジェクトの成立に尽力され、かつ副代表をお願いしている株式会社ブリヂストン環境推進本部長の平田靖氏は「W-BRIDGEでは企業単独の環境活動あるいは特定の技術開発等狭い範囲の産学連携では決して得ることの出来ない成果をともに追求していきたいと考えている。産と学の視点だけでなく、生活者や地域の視点を重視した活動の推進に積極的に参画することにより、当社としても様々な要素を吸収し、ゴム農園と生物多様性のバランスといった課題、環境活動を推進するための指針や仕掛け作り等、環境経営活動に活かしていきたい」と決意を語っている。

(株)ブリヂストン環境推進本部長 平田 靖氏

 また、プロジェクトの本格稼動となる今期からは、ICRAF(国際アグロフォレストリー研究センター)とインドネシアの地域NGOが連携する「持続可能なゴム生産プロジェクト」、茨城大学と地域商工会の連携プロジェクトなどの意欲的な取り組みがあり、早稲田大学においても本学が誇る実績を有する教員の先駆的な研究(森川靖人間科学学術院教授を中心とする「荒廃地緑化研究」など)が着実な成果を上げつつある一方、学生や地域の方々に参画いただく研究・活動に対しても、環境活動参加の動機付けや地域環境活動の進め方といった側面で、本学若手教員や学内外の専門家が研究的要素を加味し、ユニークな研究成果を生み出すべく日夜奮闘している。各プロジェクト担当者ともこれまでの自らの成果をベースとしつつも、W-BRIDGEにふさわしい新たな方向性を打ち出しているのが特徴となっている。

 また、こうした成果をいかに発信していくかについても、本学の強みでもあるジャーナリスト人脈を生かした取り組みを行っている。なかでも新しいコンセプトに基づく学術誌の発行や学生が主体となって編集するプロジェクトレポートなどが企画されている。

 問題の大きさに比して、まだまだ取り組みは始まったばかりではあるが、多くの皆様方のご参画をいただいて、より有意義なプロジェクトとなるべく努力しているところである。

参考URL

W-BRIDGE ホームページ www.w-bridge.jp/

堀口 健治(ほりぐち・けんじ)/早稲田大学政治経済学術院教授/W-BRIDGEプロジェクト代表

【略歴】
1942年生まれ。1965年早稲田大学政治経済学部卒業。1968年東京大学大学院農学研究科博士課程中退。農学博士(東京大学)。鹿児島大学講師、東京農業大学教授などを経て、1991年より現職。1998年政治経済学部長、2002年より早稲田大学副総長、常任理事。専攻は農業経済学。学会活動としては日本農業経済学会会長(2002-2004)など。主要著書に、編共著『食料輸入大国への警鐘』(農文協、1993年ー翌年にNIRA東畑賞受賞)、『現代のアメリカ・農業』(大修館書店、2004年)などがある。