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中川 義英(なかがわ・よしひで)/早稲田大学理工学術院教授  略歴はこちらから

東京副都心ターミナル周辺地区が直面する課題
~ターミナル駅の都市計画を考える際のポイント~

中川 義英/早稲田大学理工学術院教授

 渋谷、新宿、池袋などのターミナル周辺地域では、現在、「歩行者の回遊性の向上」、「地域の防災力の向上(旧耐震基準の建築物などの建て替え)」、「車両流入の軽減」、「文化・交流機能の強化」、「副都心相互の地域経済競争」、「事務所床の適正供給」などの課題の中で整備が進められてきている。

1.渋谷・新宿・池袋 駅周辺地域の動向

 渋谷駅周辺では渋谷ヒカリエが完成し副都心線の東横線相互直通運転が開始された。東横のれん街もマークシティに移り、今後、駅街区(東棟2020年、中央・西棟2027年)、南街区(2017年度)、道玄坂街区(2018年度)の3つの事業が具体化していく。なおカッコ内の年度は竣工・開業予定年を示している。

 新宿駅では新宿駅南口地区基盤整備事業が展開しており、新宿駅新南口ビル(2015年度末)が竣工を目指している。また、現在のJRの西口改札と東口改札を結ぶ形で東西自由通路(2020年頃)が設置される。新宿駅東口では新宿中村屋(2014年)、ヒューリック新宿ビル(2014年)、新宿東宝ビル(2015年、ホテル一体型)の建て替えも着工した。

 池袋駅周辺では西口駅前広場の整備のほか、2006年~2010年度の間、東池袋四丁目市街地開発事業(新中央図書館・あうるすぽっと)、自転車駐車場、街路事業等がおこなわれた。更に、有楽町線東池袋駅に近接した豊島区新庁舎建設(2014年度、マンション一体型)に着手し、副都心線の新駅として東池袋駅の設置などを目指している。

渋谷駅周辺地区の完成イメージ

2.渋谷・新宿・池袋ターミナル地域の都市計画

200708淀橋・追分・御苑散策大路、散策小路構想:新宿研究会

 このような動きは個々別々に動いているのではなく、それぞれの区で定めている「都市計画マスタープラン」や、「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」(2011年3月策定)、「渋谷駅中心地区基盤整備方針」(2012年10月策定)、「新宿駅東口まちづくり構想」(2011年2月策定)、「池袋副都心整備ガイドライン」(2010年3月策定)等のビジョンに即する形で展開整備が進められている。

 また、新宿駅周辺地域および渋谷駅周辺地域は都市再生特別措置法に基づき、特定都市再生緊急整備地域(2012年1月現在、全国で11地域)の指定を受け、緊急かつ重点的に市街地の整備を推進している。この地域では用途規制や容積率、高さ制限、日影規制など、従来の都市計画で設けた規制をとりはらった計画が可能であり、事業者には都市計画の決定や変更を提案できる権限が与えられ、提案をうけた自治体は6カ月以内の計画決定を求められている。渋谷駅周辺の3つの事業は、本年1月23日付けで、開発業者による都市計画提案として提出されている。

3.渋谷・新宿・池袋ターミナル地域が抱える課題

 都市再生特別地区の指定を受ける、受けないは別として、東京の副都心ターミナル周辺地区における都市再生の要因、直面する課題、問題点としては共通する内容も多いが、次のような事項が指摘されている。

 【渋谷】では、「駅施設の耐震性の向上、バリアフリー化、乗り換え利便性の改善」、「安全で快適な歩行者空間の確保」、「自動車交通の混雑や錯綜の改善」、「緑や潤いに欠けるなかでの渋谷川のあり方」、「渋谷の発進力・求心力の相対的低下、文化の若年層化」、「旧耐震基準の建築物が多数分布」、「谷に位置し、熱だまりが起こりやすい」、「来街者が憩い・たまれる空間の絶対的な不足」等々があげられている。

 【新宿(東口)】では、「多くの人々が集中」、「歩行者の環境が悪い」、「荷捌き車両が通過交通の妨げとなるばかりでなく、賑わいや景観を損なっている」、「建物の多くが更新時期を迎えているが思うように進まない」、「建物が様々な高さで並び雑然としている」、「避難場所となる空間や歩行者のための溜り空間が不足している」、「駐車場では利用者ニーズとのミスマッチがある」、「多数の商店会や町会が存在、競い合いにより生まれる相乗効果がある一方で、優れた企画や活動もスケールメリットが得づらく、公平性の原則から行政による支援も受けにくい」といった問題がある。

 【池袋】では、「安心・安全して通行できる道路となっていない」、「放置自転車が歩行者の通行を妨げ、また街の景観を損なっている」、「池袋駅周辺の交通環境が大きく変わる中、過度な自動車への依存を改める」、「文化や歴史性を守りながらの都市づくり」、「建築物等の機能更新や、木造住宅密集地域の解消」、「市街地の一体感の欠如があり、地域全体の回遊性を向上していく」、「既存の文化芸術施設間を結ぶネットワークが弱く、交流・情報発信が十分に機能していない」、「緑が少ない」などが指摘されている。

池袋副都心の将来イメージ

4.課題解決に向けてのポイント

 これらの課題を踏まえ、地域の将来像と実現するための戦略と具現化が図られてきている。具現化に当たっては、住民、事業者、行政の調整、協働、信頼が大きなポイントになるとともに、法制度遵守のもとで関係行政機関との調整、施策実施のタイミング、連携等を如何に進めるのかといった課題も乗り越えて進めていく必要がある。更には事業費の確保などについては住民・事業者とともに行政制度の中での検討も必要である。

 2010年12月に公表した「新宿駅東口まちづくり構想案」(策定委員会委員長:中川義英)では、4つの基本戦略とその具体化のための9つの取組を提案した。取組としては、「駅前広場の整備・顔づくり」、「靖国通り地下通路の延伸」、「新宿通りのモール化」、「駐車場附置義務の新宿ルール」、「地区計画等による建替えの促進」、「優れた街並み景観を誘導するルールづくり」、「安心で快適なまちづくり」、「エリアマネジメントの体制づくり」、「まちの魅力の創造・発信」を掲げている。基本戦略ならびに取組として行政主体で進めていくことができる施策・事業に限らず、地元主体で検討を進めるべき内容を含む形となっている。また、行政内部においては13を超える担当課にまたがる案件となるが、住民、事業者、来街者等にとっては相互に密接に関係する事柄である。

 新宿東口の基本戦略・取組を取り上げたが、都市計画(土地利用)や人々の生活などと交通計画との連携整備のもとで、まちづくりがなされる必要がある。また、住民、事業者などが関わりながら一体となってまちづくりに取り組むためには、主体間の役割と任務、ルール、体制を明確に確認した上で、適切な連携と関与を進めていくことが肝要となる。

 ターミナル地域には、これまで培ってきた文化や歴史に裏付けされた「風格と活力」が存在する。ターミナル地域の住民、地元事業者などに受け継がれてきた地域・社会コミュニティを活かし、大事にしつつ、「来街者は何を求め、地域は何を提供していくのか」を将来にわたり継続的に考えていくべきである。

中川 義英(なかがわ・よしひで)/早稲田大学理工学術院教授

【略歴】
1972.3 早稲田大学理工学部土木工学科 卒業
1980年4月 早稲田大学理工学部助手
1985年4月 早稲田大学理工学部助教授 兼 大学院理工学研究科助教授
1991年4月 早稲田大学理工学部教授 兼 大学院理工学研究科教授
2004年9月~現在 早稲田大学理工学術院教授
2010年9月~現在 理工学術院総合研究所所長(副学術院長)

【公的役職(現職のみ)】
1985年 4月~現在 世田谷区スポーツ推進委員
1993年 9月~現在 新宿区都市計画審議会委員(会長代理)
2001年 4月~現在 豊島区建築審査会委員
2005年10月~現在 中央区入札監視委員会委員
2006年12月~現在 世田谷区都市計画審議会委員(会長)
2010年 4月~現在 豊島区都市計画審議会委員
2010年10月~現在 東京都土地利用審査会委員
2012年 4月~現在 世田谷区入札監視委員会委員 (委員長)

【著書】
「未完の首都圏計画」(共著)、早稲田大学首都圏研究会、2011
「交通工学ハンドブック2008」(共著)、交通工学研究会、2008
「まちづくり賛歌」(共著)、早稲田大学大学院「子どものまちづくり学習」研究会、2003

【表彰】
1974. 9 ジャスコ㈱応募論文「50年代の流通を考える」第一席
1997.11 世田谷区区民功労者表彰
2001.10 東京都体育功労者表彰
2010.11 全国体育指導委員連合体育指導委員功労者表彰
2011.10 新宿区功労者表彰
2011.11 全国建築審査会協議会表彰