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野口 智雄(のぐち・ともお)/早稲田大学社会科学総合学術院教授  略歴はこちらから

総合スーパーが生き残るには

野口 智雄/早稲田大学社会科学総合学術院教授

 総合スーパーの斜陽が唱えられて久しいが、現在に至ってもその傾向に歯止めがかかる兆しはみられない。図表1の通り、商業統計(経産省)をみると、わが国の総合スーパーのトータルの販売額は、1997年の約10兆円から直近(2014年)には約6兆円へと実に4割もの減少をみている。無論、不況や競合業態による市場侵食などによって、この間、事業所数自体が、1,888カ所から1,413カ所へと減少しているからだが、一事業所当たりの販売額をみても(図表2)、同期間で19.3%の下落となっている。確実に、現代の消費者は、総合スーパーという業態から離れてきていることがわかる。


単位:百万円
1997年 2002年 2007年 2014年
総合スーパーの販売額 9,956,689 8,515,119 7,446,736 6,013,777
単位:百万円
1997年 2002年 2007年 2014年
一事業所当たり販売額 5,274 5,105 4,698 4,258

 なぜ総合スーパーは、このような凋落を迎えたのだろうか。

 業績不振の最大の理由は、総合化にあると筆者は考える。この業態はかつて、衣食住にわたる多様な商品ジャンルを扱う便利な存在であった。ところが、消費者が多様化、個性化の色合いを濃くしてくると、各商品ジャンル内の品ぞろえの希薄性が意識されるようになった。

 そして、1990年当たりを1つの画期として、カテゴリーキラー(例えば、アパレル小売のGAP、玩具小売のトイザらス等)と呼ばれる専門大店(商品カテゴリーを絞り込んだ大型店)が台頭・人気化することで、総合スーパーはレゾンデートル(存在意義)を喪失させていった。

 また、総合スーパーを取り巻く環境も大きく変化している。高度情報化の波にのり、インターネットを経由したオンラインショップが、われわれの商品の購買ルートとして重要性を帯びてきた。図表3に示すように、BtoC市場は成長の一途をたどり、直近(2015年)では、2011年に比べ約1.8倍の13兆8000億円にまで拡大している(経産省「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」)。これはまさに上記の総合スーパーの凋落とは好対照である。アマゾン・ドット・コムや楽天のようなバーチャル空間上に小売店舗を開設するところは無尽蔵ともいえる品ぞろえが可能で、かつ商圏の制約からも解放されている。商品の品揃えが相対的に少なく、アクセス面でも不便な総合スーパーが市場を侵食されるのは当然のことといえよう。

単位:億円
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
BtoC市場の推移 77,880 84,590 95,130 111,660 127,970 137,746

 さて、それでは今後、総合スーパーが生き残るには、どうすればよいのだろうか。

 まず、経営不振から脱却する方法として最も効果的なのが、経営成果の低い商品ジャンル(典型は、アパレル分野)を大胆に削減することである。この点に関して興味深く、成果の上がる取組みをしているのがユニーのアピタだ。ここでは、「五十貨店化」を標榜し、成長性の見込める分野(ホームファッション、化粧品等)に注力している。

 ただ、この取組みでできた店舗はもはや総合スーパーと呼べなくなるかもしれない。加えて、既存店で商品ジャンルのカットを行っただけでは、専門大店の品揃えには到底及ばない。

 しかし消費者視点に立てば、複数ジャンルにまたがる商品を一度に購入する際、いちいち距離の離れた専門大店に向かうよりも、一カ所で多ジャンルの商品が揃う総合スーパーの方が便利な場合もある。そのようなニーズを持つ人々から構成される場所を新たな出店地として模索する意義はあろう。事実、離島(沖縄)の総合スーパー、サンエーは、アパレル商品をこまめに刷新したり、有名フランチャイズの直営店を運営するなどして高成果を上げている。場所を選び、的確なマーチャンダイジングを行えば、相応の成果は上がると思われる。

 最後に強力なライバルとなりつつあるオンラインショップとの関係性について論じておきたい。バーチャル空間で小売業を営むオンラインショップの成長は、総合スーパーにかかわらず、リアルの小売店舗に少なからぬ脅威を与えている。具体的な脅威として例えば、ショールーミングがある。リアルの小売店舗は、商品を見たり、試したりするだけのショールームと化してしまい、購買場所にはならなくなるという現象だ。リアル店舗には深刻な事態だ。

 ところが昨今、これを逆手にとった動きがみられる。大手小売企業のイオンは総合スーパー内に、在庫を置かない陳列だけのスペースを作る。これは店舗をあえてショールーム化し、購入は専用の通販サイトで行ってもらおうとする取組みだ。来店者に実際の商品の良さを知ってもらうことを意図している。これが今後、イオンの経営成果にどう影響するかは不透明だが、少なくとも実店舗のメリットを生かしたものであり、「消費者に優しい」といった企業イメージの向上には寄与すると思われる。

 今一つ、オンラインショップをめぐって興味深い動きがみられる。それは、Webルーミングだ。これは、オンラインショップで商品を閲覧し、リアル店舗で買い物をするというショールーミングの真逆のパターンだ。この動向は、消費者の実見性や試用性、店員の応答性、入手の即時性、店舗空間の劇場性などのニーズに支えられていると思われる。

 総合スーパーがこれらの特性をいかんなく発揮できるよう脱皮できれば、オンラインショップの成長は必ずしも恐れることではないと考える。

野口 智雄(のぐち・ともお)/早稲田大学社会科学総合学術院教授

【略歴】
1956年、東京都に生まれる。84年、一橋大学大学院博士後期課程単位修得。その後、横浜市立大学助教授を経て、92年に早稲田大学助教授。93年から現職。2006年3月から2008年3月まで、客員研究員としてスタンフォード大学経済学部で小売業およびマーケティングの研究を行う。88年、『現代小売流通の諸側面』 で日本商業学会賞を受賞。

主な単著に、『I型流通革命』(講談社)、『流通 メガ・バトル』(日本経済新聞出版社)、『ウォルマートは日本の流通をこう変える』(ビジネス社)、『価格破壊時代のPB戦略』(日本経済新聞出版社)、『FREE経済が日本を変える』(KADOKAWA)、『新価格論』(時事通信社)、『ビジュアル マーケティングの基本(第三版)』(日本経済新聞出版社)、『ビジュアル マーケティング戦略』(日本経済新聞出版社)、『一冊でわかる! マーケティング』(PHP)、『水平思考で市場をつくるマトリックス・マーケティング』(日本経済新聞出版社)、『なぜ企業はマーケティング戦略を誤るのか』(PHP)などがある。出演・監修ビデオに『よくわかるマーケティング(日経ビデオ)』(日本経済新聞出版社)がある。