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大和田 秀二(おおわだ しゅうじ)/早稲田大学理工学術院教授 略歴はこちらから

東京2020オリンピック・パラリンピックのメダルをリサイクル原料で作ろう

大和田 秀二/早稲田大学理工学術院教授

 リオデジャネイロでのオリンピック・パラリンピック(以下、省略してオリンピックと呼ぶ)が終了し、日本勢の素晴らしい活躍が記憶に新しいところであるが、選手達の多くはやはり金銀銅のメダルを目指して日々努力を積み重ねている。ところで、このメダルの素材がどのようなものかをご存じだろうか?

 オリンピック憲章では、「メダルは、少なくとも直径60ミリ、厚さ3ミリでなければならない。1位及び2位のメダルは銀製で、少なくとも純度1000分の925であるものでなければならない。また、1位のメダルは少なくとも6グラムの純金で金張り(またはメッキ)が施されていなければならない。」とされている。

 リオデジャネイロでは、オリンピックで2488個の、パラリンピックで2642個のメダルが作られ、銀素材の30%はリサイクル原料から、金素材は水銀を使用しないで製造したものが使われたとされている。後者は、過去にブラジルアマゾン川流域で砂金を違法に水銀で回収した事例があるために記載されたものであり、日本ではこうした製法は実施されていない。

図1:廃小型家電品100%で作成した金メダルの原型

 さて、2020年の東京オリンピックのメダルはどのような素材で作るべきかを考えてみたい。現在の日本のリサイクル技術からすれば、金銀銅のすべてのメダル素材を100%リサイクル原料から作ることが可能である。これが実現すれば、オリンピック史上初のことであり、「エコリンピック」を標榜する前環境大臣・小池都知事の意向にも沿うもののように思われる。こうした運動は、現在、物質材料研究機構の原田幸明氏を中心に(実は私も支援者の一人)推進されており、現在、多くのネット上での賛同そしてマスコミによる報道によりに全国規模での運動に発展しつつある。早稲田大学でも私個人のみでなく、私が会長を務める大学公認サークル「環境ロドリゲス」がいち早く協力を申し出、各種の学内外でのイベントにおいて金含有率の高い小型家電品の収集活動を行う予定となっている。左の写真は、この運動推進のために前出・原田氏がある会社に委託し、小型家電品から製造した金メダル原型である。また、本文下のリンク(※)は、この運動が東京新聞一面トップに掲載された際の取材記事である。精力的に取り組む環境ロドリゲスのメンバーの写真もご覧いただける。

 私がこの運動を支援している理由は以下のようである。(1)東京オリンピックを選手・関係者のみものでなく、国民全員参加との機運を醸成させたい、(2)環境先進国(環境技術立国)と言われるの日本のリサイクル技術を世界に再認識させたい、(3)2013年に施工された小型家電リサイクル法における廃小型家電品の収集率を高めたい、(4)日本の素材産業を支える非鉄金属業界の力を世にアピールしたい。

 しかし、この構想実現には実はまだ多くの課題があることも指摘しなければならない。それは以下の2つの項目である。(i)収集された廃小型家電品等リサイクル原料を現状の経済活動を妨げることなくいかにメダル原料として確保するか、(ii)収集されたリサイクル原料からどのようなプロセスにより金銀銅メダルを製造するか、である。いずれの項目も、いざ実施となった際には非常に難しい問題を孕んでいる。

 まず(i):現在、廃小型家電品収集の認定業者49社が全国にわたって収集の許可を受けているが、既存ルートを壊すことなく各社が連携してメダル製造のための新ルートを構築できるか。そして(ii):現状の非鉄金属業界各社の金銀銅製造プロセスの多くは、天然鉱石の副原料として廃小型家電品等を炉に投入する方式をとっており、今回のテーマである100%リサイクル原料とのプロセスをいかに確保するか、である。また、いずれの項目においても、オリンピックという世界全体が注目するイベントにおいて、関連業界間および企業間の公正性をいかに保つかは最重要課題でもある。

 リサイクル原料100%からメダルを作るという大変有意義な(少なくとも私にはそう思える)構想を是非とも成功させたいとの強い思いを持つ一方で、今後、上記のような難しい課題を一つ一つクリアしてゆかねばならないことも事実である。素晴らしい構想が具体化に移行する際に一挙に崩壊する事例は、残念ながら過去にも枚挙に暇がない。「オリンピックメダルをリサイクル原料で作ろう」こうした構想の実現にあたって、メダル製造関係各業界・企業・個人・等々の特段の支援を賜りたいと強く希望するものである。

 最後に、この運動に賛同していただける方は、是非、以下のサイトにて「賛同」ボタンを押していただくとともに、「友達」にも「拡散」していただきたい。

オリンピックの金銀銅メダルを、みんなで回収したリサイクル原料でつくりましょう

(※)この一連の取り組みについて、9月5日付で東京新聞1面トップに掲載されました。

大和田 秀二(おおわだ・しゅうじ)/早稲田大学理工学術院教授

【略歴】
1956年生まれ。84年早稲田大学大学院理工学研究科資源及金属工学専攻博士後期課程修了(工学博士)。
その後、同大学助手・専任講師・助教授を経て95年より教授、現職。科学技術・学術審議会、産業構造審議会、日本学術会議連携会員、NEDO技術委員、環境資源工学会会長、資源・素材学会副会長、東京大学・東北大学・秋田大学客員教授などを務める。専門は、リサイクル工学・資源分離工学。資源・素材学会、環境資源工学会での論文賞、国際会議EARTHでのBest Paper Award、Lifetime achievement Awardなど受賞多数。著書は、『ゴミゼロ社会への挑戦(日経BP社)』、『リサイクル・廃棄物事典(産業調査会)』など多数。