早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

YOMIURI ONLINE

ホーム > 研究力 > WASEDA研究特区―プロジェクト研究最前線―

研究力

▼WASEDA研究特区―プロジェクト研究最前線―

先端科学・健康医療融合研究機構(ASMeW)
(2004年度 科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プログラム 採択)

医療・生命分野の開拓を通じて
「明日の早稲田」を建学する

先端科学・健康医療融合研究機構(ASMeW)事務局長を務める逢坂哲彌教授

 2004年6月、早稲田大学は、文部科学省の「科学技術振興調整費 戦略的研究拠点育成プログラム」に、私立大学として初めて採択された。同プログラムは、組織の長の優れた構想とリーダーシップにより、大学や研究開発機関の組織改革を進め、国際的に魅力のある卓越した人材創出・研究拠点の育成を図ることが目的とされている。文部科学省の研究助成プログラムの中でも最大規模のもので、別名「スーパーCOEプログラム」とも呼ばれる。

 大学を取り巻く環境はますます厳しさを増している。少子化が進み、18歳人口が大学定員数を下回る「大学全入時代」を迎えた。その一方で、科学技術立国や産学連携への大学の高い貢献が期待されている。文部科学省では、大学間競争によって選ばれた拠点に重点的に資金配分を行い、「卓越した教育研究拠点(COE=センター・オブ・エクセレンス)」を形成していく政策として、COEプログラムを推進してきている。その中でも、スーパーCOEプログラムは、2001年度からスタートし、大学の組織改革、経営改革を制度・資金の両面から強力にバックアップしていくことが目指されている。

ASMeW第5回公開シンポジウム「先端科学の社会性」では、大隈記念講堂が満員に。(2008年11月。写真は講演者の1人、作家の渡辺淳一氏)

 早稲田大学は、こうした大学間競争において、東大・京大といったトップレベルの国立大学に伍して世界的な教育研究力を発揮する大学となるべく大学改革を進めており、すでに21世紀COEプログラム、グローバルCOEプログラムの採択を多数成し遂げている。その中でも、スーパーCOEプログラムへの採択は、早稲田大学が描いてきた将来の大学像への組織改革を進めるうえで、またとない機会であった。

 2008年度で5年間の事業の最終年度を迎えるスーパーCOEだが、その事業の経緯と取り組みについて、採択拠点である「先端科学・健康医療融合研究機構」(ASMeW:アスミュウ)の事務局長を務める、逢坂哲彌・理工学術院教授に話を聞いた。

健康と医療――相反する言葉を結合

 一連のCOEプログラムのなかでも、全国から年間2~3拠点しか採択されないスーパーCOEプログラムの予算規模は、格段に大きい。このまたとない大型助成の機会を活用し、長年の課題である医療系分野での教育研究拠点の確立を推進していくことは、白井総長をトップとする準備委員会の大筋の合意としてあったが、その核となるコンセプトについては、最後まで激論が交わされた。

ASMeWのミッション:早稲田大学が“強い”研究領域と医学を横断的に融合し、医療・健康分野の最先端拠点の形成を先導する

 「事業申請書の提出前日まで、白熱した議論が続きました。最後にたどりついた結論は、やはり本学らしさを出すには、先端科学と医療に“健康”というコンセプトを融合していくべきだろう、理学・工学だけではなく、人文・社会科学まで含めた、総合的な学際研究の拠点というところを打ち出していこうということになりました。

 これからの医療は、QOL(クォリティ・オブ・ライフ=生活の質)を抜きにしては語れません。いかに健康に生きるかのために、医療が考えられる時代です。予防医療という言葉はすでにありますが、健康医療という言葉はわれわれの造語です。2つの相反する単語をあえて結びつけて、拠点名に据えることにしたのです」(逢坂教授)

 こうして、「先端科学・健康医療融合研究機構」(ASMeW;Consolidated Research Institute for Advanced Science and Medical Care, Waseda Universityの略)の構想が立てられた。略称のASMeW(アスミュウ)は、早稲田大学の将来像への夢を重ねて、「明日見ゆ」と意味が掛けられている。

海外から施設を見学に訪れる研究者も数多い

 2004年度に入り採択が決まるや、すぐさま準備に取り掛かられた。「なにしろスーパーCOEの事業規模は、まるごと1つ新しい学部を新設するのと同じくらいのものですから、場所や設備を準備するのも一苦労でした」(逢坂教授)。

 事業拠点は早稲田キャンパスに設置するべきだろうということになり、以前は体育会などのサークル活動に使われていたアリーナ(体育館)が突貫工事で改築され、クリーンルーム、生化学実験室、インキュベーションルームなどを備えた「スーパー・オープン・ラボ(SLO)」が設置された。

学部を超えて150名の教員が結集

 まず、学内・学外から、関連分野の人員が結集された。現在数では、若手ポスドクの任期付き研究員が40名余り、理工系、スポーツ科学、人間科学を中心に、全学から学部を超えて集結した教授陣が約70名、外部から非常勤の客員教員40名ほどが参加し、総勢150名を超える研究者を抱える大所帯の組織が形成されている。

 研究領域としては、〈ナノIT〉〈医療ロボティクス〉〈医療計測〉〈分子医療〉〈機能再生医療〉〈健康医療〉〈バイオインフォマティクス〉〈臨床医療〉の8つの研究ドメインが据えられた。現在はこれに〈生命倫理科学〉が教育ドメインとして加わり、9つのドメインとなっている。  さらに、研究ドメインとは別の実用化出口指向の軸として、〈治療支援技術の高度化〉〈創薬のための技術開発〉〈診断・モニタ用センサ開発〉〈運動機能の抗加齢および再生〉〈健康増進と生活習慣病予防〉の5つの重点研究領域が設定された。

 2006年度からは、拠点参加者を対象として、独自の研究助成プロジェクト制度をスタートさせた。「一番の目的は、メンバーの参加意識を高めてもらうことです。大学教員というのは、それぞれ自分で外部の研究資金を取ってきて研究活動を進めているので、組織全体の目標に関心を持ってもらうのはなかなか難しいところがあります。そこで独自の研究助成制度を創って、ASMeWの研究プロジェクトを主体的に立ち上げてもらおうと考えたわけです」(逢坂教授)

 狙いはずばり的中、意欲的に研究テーマが提案され、2006年度は35件、2007年度は37件のプロジェクトが立ち上がっている。

ASMeW融合研究マトリックス
横軸に研究ドメイン、縦軸に実用化出口指向の重点研究領域が据えられている

 こうした制度設計のもとで、通常の学部・大学院とは異なる、プロジェクト型の教育研究拠点としての結集性とアクティビティが徐々に高まるとともに、学内への波及効果もかたちになって表れていった。並行して進められてきた理工系の学部・大学院の改革の中で、2007年4月、理工学術院先進理工学研究科の中に、ASMeWの教員の主導による新たな専攻、「生命医科学専攻」が新設された。

 さらには、2008年3月、東京女子医科大学との連携による教育研究施設、「TWIns(ツインズ)」がオープンし、ASMeWの事務局次長を務める梅津光生教授が、早稲田側の研究拠点である先端生命医科学センターのセンター長に着任した。同じ建屋の中に、東京女子医大と早稲田大学のラボが共生するという刺激的な研究環境の中で、医・理・工の融合を目指すというダイナミックな試みである*。 (*WASEDA研究特区 第4回「TWInsが医理工の融合を変える」の記事で紹介)

「医療・生命分野での専攻の新設、統合的な研究拠点の形成という、ASMeWが掲げてきたミッションが次々と実現しています。変革を加速させるという、狙いどおりの役目を果たしてきたと感じています」(逢坂教授)

次代を担うスーパーリーダーを育成

STO認定式の記念撮影(白井総長を囲んで)

 ASMeWのもう1つの柱が、次代の研究リーダーとなる人材の育成である。当初からその目玉として打ち出されてきたのが、「STO=スーパー・テクノロジー・オフィサー」という、若手研究者育成プログラムだ。理工系キャリアパスの一つの頂点の姿を示すものとして、専門的学識、経験に加えて、技術経営の素養を併せ持ち、産学連携や国際研究の大型プロジェクトを構想し牽引していける人材を創出しようとする、早稲田大学独自のプログラムである。

 具体的には、STO育成プログラムに認定された候補者が、早稲田大学アジア太平洋研究科の経営大学院でMBA取得を目指すとともに、海外との研究ネットワーク形成でリーダーシップを発揮する経験の中で、国際的な研究リーダーとしての素養を積む中で、一人ひとりの達成成果を踏まえて、ASMeWがSTOとして資格認定する。2008年12月までに、11名のSTOが誕生している。

 「すでに他の分野で博士学位を取っているからといって、決して優遇はされません。ASMeWで研究に取り組みながらのMBA学位取得は、一筋縄ではいかない厳しいものですが、みんな本当によく頑張っていますよ」(逢坂教授)。

 こうした若手研究者の活躍もあって、国際的研究拠点としての地位も確立しつつある。ハーバード大学、上海交通大学、ボン大学、ローマ大学、上海交通大学など、世界各国の大学・研究機関と連携パートナーシップを形成するとともに、世界の名だたる研究者を招聘するなど、世界最先端レベルを目指した国際拠点化が進んでいる。

 前述した東京女子医大との連携施設TWInsの一画には、ASMeWが保有する約700平米のスペースもあり、将来的にはバイオベンチャーの展開、国際的融合研究の展開など、健康医療分野の戦略拠点の1つとして活用していく計画である。

海外の大学との研究連携を積極的に推進(ドイツ・ボン大学とのディスカッション風景)

 他大学との連携大学院の構想も進んでいる。東京農工大学、山梨大学とは、具体的な連携プログラムの実現へ向けてすでに動き始めている。「将来的には、先端科学・健康医療融合大学院(仮称)と呼ぶべき総合大学院を形成していくことが、最終目標です」(逢坂教授)

 スーパーCOEとしての5年間の事業期間はまもなく終了するが、ASMeWという名前に託された「早稲田大学の明日を見る」というミッションには、永遠に終わりはない――。

先端科学・健康医療融合研究機構は、文部科学技術省科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成プログラム(スーパーCOE)拠点の採択を受けています。

早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構
http://www.waseda.jp/scoe/index.html

理工学術院
http://www.sci.waseda.ac.jp/global/faculty/index.html

人間科学学術院
http://www.waseda.jp/human/graduate/

スポーツ科学学術院
http://www.waseda.jp/sports/supoken/index.html

TWIns(先端生命医科学センター)
http://www.waseda.jp/advmed/

グローバルロボットアカデミア(グローバルCOE)
http://www.rt-gcoe.waseda.ac.jp/japanese/index.html

実践的化学知(グローバルCOE)
http://www.waseda.jp/prj-GCOE-PracChem/index_j.html