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間野 義之/早稲田大学スポーツ科学学術院教授  略歴はこちらから

日本のスポーツ、次の100年

間野 義之/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

 2011年は日本のスポーツ界にとって節目の年であった。「日本のスポーツ百年」の式典が盛大に執り行われ、新しい法律が制定された。クーベルタン男爵からの要請に応え、日本がオリンピックに出場するために嘉納治五郎が大日本体育協会を設立したのが1911年であったからである。それから50年後の1961年には、東京オリンピックに備えてスポーツ振興法が制定され、さらに50年後の2011年にスポーツ基本法が改正施行された。新しい法律では、国民のスポーツ権の保障とともに、国・地方自治体の責務を明確化し、障害者スポーツの推進も明文化され、次の百年に向けた一歩が踏み出された。

 あまり知られていないが、法治国家ではスポーツに関する法律が存在する。アメリカ「オリンピック・アマチュアスポーツ法」、フランス「スポーツ法典」、ロシア「身体活動・スポーツ法」、オーストラリア「スポーツコミッション法」、ブラジル「1998年3月24日の法律(通称ペレ法)」、南アフリカ「スポーツレクリエーション法」、イスラエル「スポーツ法」、そして東アジアでも、韓国「国民体育振興法」、中国「中華人民共和国体育法」が制定されている。いずれも基本法としての性格を有し、その実行に際してはマスタープランを作成している。

 わが国でも、スポーツ基本法にもとづくマスタープランである「スポーツ基本計画」が3月30日に策定された。この計画の特徴のひとつは、引退後のアスリートが地域で子どもたちを指導し、指導を受けた子どもたちがアスリートととなり、引退後に地域に戻ってくるといった「好循環」を示した点である。当たり前のようだが、これまではアスリートのセカンドキャリアは自己責任とされ、飲食業などの他の業種に転向し、スポーツ界に残れるのはごく一握りでしかなかったことを考えると、「好循環」は次の百年を考えるうえで斬新な企みといえる。

 実際、多くのアスリートがスポーツに恩返しをしたいと考えるなか、アスリートにとっても地域でスポーツ指導ができる「好循環」は好都合である。すでに一部のアスリートたちは社会貢献活動を組織的・継続的に行うために公益法人を立ち上げてきている。これらアスリートNPOが連帯・連携することで、「好循環」の促進をはじめ、スポーツによる被災地復興支援など日本の新しいスポーツが形つくられていくことになる。このため、アスリートNPOの中間支援組織として「一般社団法人日本アスリート会議」が昨年4月1日に設立された(表・図)。

 東日本大震災からの復興支援を行うため、この会議は昨年度、被災地である東北3県で、延べ5,000人を超える子どもたちにアスリートによるスポーツ教室を展開し、被災した総合型地域スポーツクラブの活動支援を行った。また、アスリートのセカンドキャリアやソーシャルビジネスについても研究し、多くのアスリートが引退後も輝き続け、社会に恩返しをできる環境を創り出すことを目指している。

 これまで、アスリートは競技団体と企業によって支えられてきたが、アスリートが地域や競技団体を支える時代が始まりつつある。次のスポーツ百年が大きく歩みだしている。

一般社団法人日本アスリート会議
議員 井村雅代(一般社団法人井村シンクロクラブ理事長/元シンクロナイズドスイミング日本代表ヘッドコーチ)
宇津木妙子(特定非営利法人ソフトボール・ドリーム理事長/元ソフトボール日本代表監督)
岡田武史(一般社団法人OIJ理事長/元サッカー日本代表チーム監督)
倉石平(NPO法人MIPスポーツ・プロジェクト理事長/元男子バスケットボール日本代表チーム監督)
平尾誠二(NPO法人SCIX理事長/元ラグビー日本代表チーム監督)
柳本晶一(アスリートネットワーク理事長/元全日本女子バレーボールチーム監督) 、
山下康裕(NPO法人柔道教育ソリダリティー理事長/元全日本柔道男子強化ヘッドコーチ)
顧問 王 貞治(財団法人世界少年野球推進財団理事長、元ワールドベースボールクラシック日本代表監督)
URL http://www.jathlete.jp/

図.日本アスリート会議の基本スキーム

間野 義之(まの・よしゆき)/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

1963年横浜市生まれ。1991年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。株式会社三菱総合研究所勤務の後、2002年早稲田大学人間科学部助教授、スポーツ科学部助教授を経て2009年よりスポーツ科学学術院教授。日本アスリート会議代表理事、Vリーグ機構理事、日本バスケットボールリーク機構理事など、スポーツ組織の役員・アドバイザーなどを多数務める。著書に『公共スポーツ施設のマネジメント』、共著に『スポーツの経済学』など。