山口発オンラインフォーラム 「がんと生きる ~こころとからだ 私らしく~」
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山口発オンラインフォーラム 「がんと生きる ~こころとからだ 私らしく~」
患者や家族の苦しみ支え より良いがん医療へ
がんの最新情報を全国の会場から紹介するフォーラム「がんと生きる」。11月10日には山口県からオンライン配信され、600人以上の視聴者が参加しました。歌手の山本譲二さんが自身のがん体験を語ったほか、パネルディスカッションでは、注目される治療法や患者同士で支え合う取り組みなどをめぐり、医療者やがん当事者が語り合いました。
山本譲二さんががん体験を語る
思いやりが夫婦の絆深める
町永 5年前、69歳の時に大腸がんが見つかりました。
山本 宣告された時は目の前が真っ暗になって何も考えられなくなりました。経験した方でないとわからないと思います。それまで家族には、もしもの時には心配かけずにサッといくからと言っていましたが、孫ができたばかりで「自分がいなくなったら、やっぱりまずいよな」と思った瞬間、「もう少し生きさせてください」と病室の白い壁に向かって手を合わせている自分がいました。
町永 不安のあまり感情をぶちまけたこともあったとか。
山本 今は本当に申し訳なく思っていますが、手術の2日前のことです。少しおかしくなっていたんですね。医師から手術内容や術後にどういう症状があらわれるかの説明を受けている途中で「そういう話はいらない」と帰ろうとしたんです。妻に「ちゃんと聞かないと」と止められましたが。
町永 奥様は、その10年前に乳がんの経験をされていました。
山本 当時の妻は抗がん剤の副作用が相当つらそうでした。傍にいても僕は何もできませんでしたが、妻はがんになった僕のことを、明るい顔で余計なことを一切言わずに世話してくれました。しんどい時に言葉は無用だとわかっているんですね。結果的に僕の場合、術後の抗がん剤治療の必要はなく、そのことがわかった瞬間に妻は泣き崩れました。つらい経験を僕がしなくて済む安堵感からです。僕は弱い自分を妻にだけはさらけだすことができました。夫婦の絆が強くなりましたね。
町永 がんになった時、自分の暮らしや人生に向き合うことが助けになるのでしょうか。
山本 病室には病室の楽しみがあるはずです。娘と孫と今度いつ会えるかということも未来を照らす灯りになりました。元気な自分でいようと思いましたね。
町永 人生のお薬になるようなものを見つけられるとよいのでしょうか。
山本 そうだと思います。
パネルディスカッション第1部 注目される集学的治療
外科医と内科医が連携しやすい体制
町永 最新のがん医療にはどういうものがありますか。
井岡 これまでは手術、抗がん剤治療、放射線治療が3本柱でした。近年は分子標的薬や免疫療法といった新しい治療法も使われ、こうした治療を組み合わせて行う集学的治療の治療成績がよくなっています。山口大学病院では外科医と、薬物療法が専門の腫瘍内科医などが連携しやすい医療体制を敷き、この治療にあたっています。診療科をまたがずに素早い対応ができるのが強みです=VTR❶=。
町永 治療法が多いということは選択肢も多いということですね。
井岡 どういう治療の組み合わせが効果的か。治療方針の判断は常に難しいですが、患者がよくなってほしいという思いのもと、チームでとことん議論し、合意の上で治療を進めています。
【VTR❶】 素早い対応でがんを治癒
集学的治療を行っている井岡医師らのチーム。30代の大腸がん患者に対して、抗がん剤でがんを小さくしてから手術で患部をとりきる治療を計画していたが、肝機能が悪化したことから、患部をとりきれなくても手術を行い、残りを薬物療法でたたく治療に方針を転換。素早い対応が功を奏し、がんをほぼ消し去ることができた。
副作用の症状 和らげる漢方薬
町永 抗がん剤治療には副作用が伴います。
波多野 私の場合は最初に倦怠感、その後脱毛や帯状疱疹の症状も出ました。便秘や手足のしびれもありました。
町永 そうした副作用に対応するサポーティブケアは、今では診断と同時に始まるといいます。
井岡 痛みを抑えることで治療に前向きになれるという効果があります。痛みは我慢しなくていいんです。
町永 どういうケアがあるのでしょう。
井岡 吐き気に対しては制吐剤の開発が進み、非常に効果をあげています。食欲不振や倦怠感には漢方薬が処方されています。
町永 漢方薬は、先端医療の現場で使われているのですね。
井岡 近年はエビデンスの裏付けも出てきて、アメリカでも注目され始めています。
町永 がんになった医師の映像を見ました=VTR❷=。末吉医師は、つらい闘病生活の中で、これまで患者のつらさに寄り添えていたのかという思いを抱くようになります。
藤本 患者はわらをもつかむような言葉を口にすることがあります。医療者がその切実さを患者と同じように感じてもらえたらありがたいですね。
井岡 末吉医師は、この経験を経て、さらにすばらしい医療者になると思います。ただ、がんを体験していなくても、私たちは患者の思いを想像できる医療者にならないといけません。
【VTR❷】 患者を支えたい、思い新たに
末吉医師は3年前、42歳の時に自身の専門分野であるすい臓がんのステージ3と診断された。わかっているつもりだった患者の副作用のつらさを、本当にはわかってあげられていなかったことに気づかされ、患者に寄り添いたいという思いを強くしている。
パネルディスカッション第2部 「つながり」が闘病の力に
外見のケアが背中を押す
町永 藤本さんはがん体験をきっかけに、がんの当事者団体「ポポメリー」を立ちあげました=VTR❸=。
藤本 がん患者は家族を含めて、人に言えないつらさや苦痛を抱えていますが、同じ体験をした者には思いを話せる感覚があります。私自身、がんを経験する中で、そういう患者同士が支え合える場を作りたいと思いました。医療だけでは解決できない患者の悩みに寄り添うことができればという思いがあります。
町永 治療で生じた外見の変化の苦痛を軽減するアピアランスケアの取り組みも行っています。
藤本 アピアランスケアは社会に戻ろうとする患者の背中を押してくれます。
波多野 ウィッグの無償提供の活動をしています。ウィッグは患者を笑顔にするし、治療にも前向きにしてくれます。
【VTR❸】 当事者同士が支え合える場を
藤本さんは看護師でありながらがんになったことを恥じ、人を避けるように生きてきたが、がん患者が同じ立場の言葉を求めていることを感じて当事者団体を設立。治療の傷痕が残る患者が温泉を楽しんだり、外見の悩みを解消できたりするイベントを開催。患者の笑顔につながる活動をしている。
息子の死後 自身もがんに
町永 家族ががんになると家族もつらい思いをします。波多野さんは息子さんを25歳の若さで、がんで亡くされました=VTR❹=。
波多野 入院中は息子のつらさをわかってあげられずによくぶつかりました。「なんで俺を産んだのか」と言われたこともあります。悲しかったですが、今思えば、私しか感情の持っていき場がなかったんですね。ただ、緩和ケア病棟で痛みを和らげる治療を受け始めてから、息子は穏やかに自分らしく過ごせるようになりました。
町永 死後に息子さんのノートが見つかりました。
波多野 その時々の思いを綴ったもので、息子にとって生きる糧だったと思います。その後私は乳がんになり、手術と抗がん剤の副作用を経験しましたが、息子の言葉が生きる原動力になりました。
藤本 家族の絆や当事者同士の支え、医療者との関係など、「つながり」が患者にとって大きな力になります。1人で思い悩んでいる人にも支援の手を差し伸べたいと思います。
波多野 がんになると不安なことが多いですけど、日々を大切に生きてほしいですね。
井岡 医療者は常に患者の味方です。ただ、医療者だけで対応できないこともあります。当事者団体などと連携しながら、より良い医療を提供していければと思います。
【VTR❹】 亡くなった長男の言葉が力に
福祉理美容師の波多野さんは尿膜管がんになった長男を13年前に亡くした。死後に見つかったノートには、がんになっても生きようとする思いや、日々生きていることに感謝する言葉がつづられていた。その1年後、波多野さんは乳がんと診断されるが、長男の残した言葉のおかげで治療に前向きになれたと語る。
主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:厚生労働省 山口県
協力:NPO法人わたしのがんnet
協賛:株式会社ツムラ







