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薬と薬草のお話vol.93 白芷(びゃくし)とヨロイグサ

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局

vol.93 白芷(びゃくし)とヨロイグサ

薬用基原植物
Angelica dahurica Bentham et Hooker filius ex Franchet et Savatier
(Umbelliferae)

 冬空をあおぎ、冷たい北風を受けながら職場に向かう日々が始まりました。頬を刺すような冷気はピリピリと痛く、身体に感じる痛みを止めたくなります。そんな時、脳裏に浮かぶ薬草が、漢字を覚えるときに「草冠に止める」と言いながら覚えた「白芷」です。

 生薬・白芷は中国・韓国・日本などに分布するセリ科の多年草、一般名ヨロイグサという植物の根で、草丈は1~2.5mにもなり6~8月に白い小花を咲かせます。その後、根を掘り出し、乾燥させたものを翌春に使用します。

 日本では平安時代から使われ、重なった葉の様子が鎧(よろい)にも見えるとのことでヨロイグサという和名があります。また江戸後期の漢方医、華岡青洲が使用した麻酔薬にも配合されています。日本での生産は少なく現在では韓国からの輸入がほとんどです。主要成分としてはクマリンのビャクアンゲリコールなどが知られています。

 現在日本で汎用(はんよう)されているエキス化された漢方処方では、疎経活血湯(そけいかっけつとう)、清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、五積散(ごしゃくさん)に配剤されています。

 例えば疎経活血湯は四物湯(しもつとう〈当帰《とうき》・芍薬《しゃくやく》・川芎《せんきゅう》・地黄《じおう》〉)という4種の構成生薬に、白芷など他の13種類の生薬を刺すような痛みを止めることを目的に加えた処方で、腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛などからくる疼痛(とうつう)に使用されることがあります。清上蠲痛湯の方は白芷を含む14種の生薬で構成されていて、慢性化した痛みの特に上部(頭部)の痛み、頭痛や顔面痛に効果を期待して使われます。

 冬の夜、頭を低く風を避け、コートの襟をギュッと閉じての家路です。寒さに耐えながら、うつむきがちに足元の地面を見ると少し膨らんだ土くれのなかに短い球根の芽を発見、ほっとしてうれしくなりました。


2025年1月31日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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