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薬と薬草のお話vol.94 茵蔯蒿(いんちんこう)とカワラヨモギ

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局

vol.94 茵蔯蒿(いんちんこう)とカワラヨモギ

薬用基原植物
Artemisia capillaris Thunberg(Compositae)


 詩人の言葉に「きっぱりと冬が来た」とあるように、今年は厳しい寒波がきました。暦の次のページ、草もち、よもぎもちの支度をする春彼岸が待ち遠しいです。薬草のヨモギは2種類、艾葉(がいよう〈vol.47〉)と今回の茵蔯蒿があり、どちらもキク科ですが、期待される薬効が異なります。

 茵蔯蒿の方は、日本の本州以南や中国、台湾などに分布、河原や海浜の砂地に自生している基原植物の多年草・カワラヨモギの頭花を使います。夏に総苞(そうほう)に包まれた小花をつけます。

 日本では、長野県や徳島県が以前は産地とされ、私も初めて目にしたものは徳島産のものでした。茵蔯蒿という名称は当初耳になじみませんでしたが、後で絹毛の根出葉(こんしゅつよう)が冬に枯れず、春先になるとそこから新しい葉や茎が伸びるので、古い(陳)苗がもと(因)になって新しいヨモギ(蒿)が出たという説があると知りました。

 現在日本でエキス化され、茵蔯蒿が配剤されている漢方には、茵蔯蒿湯(とう)、茵蔯五苓散(ごれいさん)、甘露飲の3処方があります。

 例えば甘露飲は、茵蔯蒿、地黄(じおう)、麦門冬(ばくもんどう)、天門冬(てんもんどう)、石斛(せっこく)、黄芩(おうごん)、枇杷葉(びわよう)、枳実(きじつ)、甘草(かんぞう)の9種の生薬を組成とし、体力が中程度以下の方の口内炎や舌の荒れや痛み、歯周病に効果を期待して使われます。また茵蔯五苓散は、のどが渇いて、尿が少ないときの二日酔いのむかつきや、むくみ、嘔吐(おうと)に使用されることがあります。

 現在日本では、漢方エキス剤の茵蔯蒿はほとんど中国産のものが使われているようですが、産地によって成分組成に違いが認められる場合もあるようです。私たちも処方薬としての品質を見極め、安定的に供給する努力がまだまだ必要な毎日です。

 春一番はもうすぐかな。


2025年2月28日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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