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薬と薬草のお話vol.95 威霊仙(いれいせん)とサキシマボタンヅル

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局

vol.95 威霊仙(いれいせん)とサキシマボタンヅル

薬用基原植物
Clematis mandshurica Ruprecht,
またはClematis chinensis Osbeck
またはClematis hexapetala Pallas
(Ranunculaceae)


 朝、窓を開けると、頬に触れる空気が心地よく感じる季節、春が始まりました。家の小さな庭でもアミガサユリ(生薬名・貝母〈ばいも〉)が背丈を競い合うように茎を伸ばしています。しかし今年はテッセンの細いつるがフェンスに見当たりません。

 威霊仙は、昔の日本ではテッセンなどの根が代用として使われたことがある生薬です。しかし現在の日本薬局方では、沖縄・先島諸島、台湾、中国南部、インドシナ東部に分布する同じキンポウゲ科、センニンソウ属(クレマチス属)のサキシマボタンヅルの根及び根茎を基原植物としています。

 花の姿とは異なり、生薬名・威霊仙の「威」は「性質が猛々(たけだけ)しい」、「霊仙」は「効果が速やかであること」を意味するそうです。薬用部の根には主要成分としてアネモニン、プロトアネモニンやサポニンが含まれています。

 威霊仙が含まれている代表的な漢方薬は、二朮湯(にじゅつとう)と疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。例えば疎経活血湯は威霊仙を含む17種類の薬草で構成される処方で、威霊仙は止痛(痛みを止める効果)を期待して配剤されていて、他の生薬とともに腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛に使われます。

 「薬と薬草のお話」では、今では薬局などで簡単に手にすることができるようになった漢方薬や成分を、できるだけわかりやすく残しておこうと90種類以上の生薬を取り上げましたが、お話ししていない生薬がまだまだあり、その一つが威霊仙だと、疎経活血湯を手にした時に気づきました。

 5月には清楚(せいそ)な白い花をつけるテッセンからは「忘れたのですか」、そしてサキシマボタンヅルからは「見落とさないで」と言われているようです。


2025年3月31日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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