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薬と薬草のお話vol.99 センブリと当薬

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局

vol.99 センブリと当薬

薬用基原植物
Swetria japonica Makino
(Gentianaceae)

 樹木が紅葉する季節です。秋から冬へと向かう冷たい風に触れると、山辺の散策で出会ったリンドウ(vol.5) のことを思い出します。今回の薬草はこのリンドウ科のもう一つの植物、民間薬としてよく知られたセンプリです。

 基原植物名センプリ(千振)は、日本各地の山野、雑木林などに自生するリンドウ科の二年草です。1年目の秋に出た芽が冬を越して、2年目に白色の花弁に紫色の線が入っている花をつけます。花の開花期に全草を採取し、よく乾燥させた後、風通しの良い場所に遮光して保存したものを薬用・当薬として使います。

 民間薬として成分を1000回振りだしても苦いということから「センブリ」といわれるそうですが、その苦味成分(苦味配糖体)はスウェルチアマリンやゲンチオピクロシドで、生薬竜胆(りゅうたん)(リンドウの根)にも見いだされる苦味成分です。

 日本薬局方第2版(1891年)では竜胆に代替しうるものとして、当薬が収載されていましたが、現在は例えば、トウヒ、サンショウとともにセンブリは苦味チンキとして健胃効果を期待する処方が残っています。

 1970年頃の話ですが、亡父に同行してハワイのチャイナタウンの一角にある薬局を訪れました。そのお店で蝶(ちょう)ネクタイ姿の背筋を伸ばした紳士が、丁寧な日本語で現地の日本の方が必要とされる家庭薬や胃腸薬を説明してくださいました。しかし私は、決してたくさん売れるとは思わない薬草の袋が正面奥に、天井からつり下げて陳列されていた様子が目に焼き付いてなぜか忘れられません。

 現在私の手元にも、薬草らしい乾燥したセンプリの細長い花や茎が少し残っています。コロナ禍後は特にそうなのですが、目まぐるしく現れる遺伝子組み換え製剤等の処方に取り組む後塑を見守るなかで、これを見るとなぜか原点に戻れるような自分に気がつくことがあります。


2025年11月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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